みんなの健康Q&A
小児科/小児成人病
(みやた小児科 金年和副院長)
生活環境による肥満が要因
味覚形成期の食習慣に注意
Q 今日は子供の健康という観点から、生活習慣病とも言われる、小児成人病についておうかがいします。まずは、小児成人病とはどういうものなのでしょうか。
A 現代は豊かさの一方で、その豊かさゆえに、栄養の偏りや運動不足、生活リズムの乱れやストレスの増加といった様々な弊害がもたらされ、子供たちはその危険の渦の中で、日々を過ごしているといっても過言ではありません。これらの子供たちを取り巻く生活環境の変化は、動脈硬化の促進因子としての肥満を引き起こします。小児成人病とは、この肥満を軸にした、後に成人病―高血圧、高脂血症、糖尿病へと移行する危険性のある因子を抱えている状態と言えます。表現を変えれば、ライフスタイルの改善などによって十分に予防することができる、小児期の成人病とも言えます。 Q お話からすると、諸悪の根源は肥満のようですが、子供の肥満というのはどのように定義されるのでしょうか。 A ひと言で肥満といっても、子供の場合は成長の過程にあるので、1つの公式に当てはめることはできません。成長の過程に合わせて、それぞれ異なる指標があります。乳児期、幼児期にはカウプ指数といわれるものがあり、学童期、思春期には肥満度がその指標となります。カウプ指数は、18以上は経過観察、20以上で要注意、22以上で治療が必要といわれます。肥満度では20%以上で要注意、22%以上で要医療となっています。 Q ところで、先ほどのカウプ指数や肥満度といった数値は、私たちにも計算できるものなのでしょうか。 A カウプ指数は、体重(g)/身長(p)の二乗×10で表します。肥満度は、現体重−標準体重/標準体重×100です。ここで問題となるのは標準体重ですが、これは、成人の場合用いるような数式は当てはめられません。簡単に出せるものがあればいいのですが、子供は成長の過程にあるので、それぞれ年齢によって異なってきます。日本では男女別、年齢別に身長からみた標準体重の表があり、それを基準にしています。 Q 肥満の一応の基準がわかったところで、具体的に日常の生活において大切なことは何でしょうか。 A まずは、栄養、つまり食生活です。先ほども少し触れましたが、私たちは日本という、世界の中でも、とても豊かな食環境で生活をしています。しかし、このことがかえって、過食や栄養の偏りを生じさせています。ファストフードと呼ばれる一連の食品による弊害は、子供たちの味覚や嗜(し)好に大きな影響を及ぼしています。乳児期、幼児期、という味覚が形成される大切な時期に、何を食べるかということが食習慣を左右するもっとも大きな要素と言えます。脂肪や糖質のとりすぎに注意することはもちろんのこと、味付けにも気を配りたいものです。いったん濃い味に慣れてしまうと、赤ちゃんといえども薄味に戻すのはとても大変です。 Q 成人の場合は、「1日何カロリー」ということが目安としてよく用いられますが、子供の場合はどのように考えるのでしょうか。 A 子供は日1日と成長し続けているので、もっとも大切なのは、総カロリーだけではなく、栄養のバランスです。たん白質をしっかり維持することを主体に、炭水化物と脂質をバランスよく摂取する必要があります。炭水化物:たん白質:脂質=50:20:30が基本です。 Q 食事の基本はバランスということで、肥満対策としては次に、何が大切でしょうか。 A 常識的なことと思われますが、運動不足を解消することです。ここでいう運動とは、毎日体を動かすということで、例えばサッカーなどという特別なものではありません。歩くことが基本です。 Q 最後に小児成人病を考えるうえで大人が果たすべき役割についておうかがいします。 A 豊かではあるけれど、様々な危険にさらされているという子供たちの現状を、しっかり認識することが重要なことと思われます。この認識のうえで、将来、成人病へと移行する危険因子を取り除く努力が、社会や大人たちに求められているのではないでしょうか。 |