焼肉業界にも「ITの風」?
個性を発信、ネットで集客
新興チェーン、空席対策
「焼肉天国.com」を運営する「B2Y」の朴亨柱さん(右)と高宏明さん。本拠になって
いる朴さんのアパート(写真)には、経営コンサルタントの友人らもアドバイスに訪れる
消費低迷どこ吹く風とばかりに、怒とうの出店を続ける新興焼肉チェーン。既存の同胞店は味と個性でこれを迎え撃つ構えだが、増殖するチェーンの波間に埋もれないようにするのも一苦労のはずだ。そこへ、こうした飲食店にIT(情報技術)を武器にした新たな宣伝戦略を提案する一群が現れた。果たして、焼肉業界にも「ITの風」が吹くのだろうか。 下町の店まで 今年5月、インターネット上に「焼肉天国.com」なるサイトが立ち上がった。目下、主に首都圏にある同胞経営の焼肉店数十店舗が紹介されており、地域・予算別で検索できる。各店のメニュー全品リストや、サイトを見た人だけに提供される「裏メニュー」が人気で、FM放送でも紹介された。 同サイトを運営するのは、朝青と民団の同胞、そして日本人青年の混成チーム「B2Y」だ。代表の朴亨柱さん(26)は、立ち上げの動機についてこう語る。 「焼肉ブームの中でも、下地を築いた同胞店の良さはあまり知られていないと思い、そういうお店をPRしたいと思ったんです」 同サイトは下町の小規模店まで網羅しているが、朴さんは「小規模店こそネット宣伝に力を入れるべき」と話す。従来の、新聞の折り込みチラシやダイレクトメールでの集客は、印刷や発送コストがかさむため資金に余裕のある大手の方が有利。ネットなら、小さな店でも上手に活用すれば、低コストで効果的な宣伝を行えるからだ。 しかし、商品のオンライン通販もできる小売りならいざ知らず、ネットが飲食業の売り上げにどれほど貢献できるのだろうか――。 そこは、米国の調査会社が今年5月に発表したデータに、面白いものがある。 「オンラインで商品を検索した後@実店舗に行って購入=68%A電話で購入=47%」 この数字からは、人々がショッピングに出る前の情報収集にネットを活用しており、店舗が顧客を呼び込むうえでも、ネットに実効性があることが分かる。 ネットのこうした特性を生かし、店舗の集客を支援するのが「検索サイト」だ。地域、料理の種類、予算など、利用者が自分の目的・条件にかなった店を、登録店舗の中から簡単に探せる。店側の負担も、初期費用、月間の維持管理費ともに数千〜一万円程度だ。 日本にも、「ぐるなび」「グルメぴあ」など、膨大な登録店舗を抱える飲食店検索サイトがすでに存在する。ただ店舗側からすれば、同じサイトの登録店が増えれば、宣伝での競合も強まる。他店との差別化をねらって値引き特典を強化すれば、結局、大手が有利な体力勝負に陥りかねない。 こうした現状にあって、検索機能の充実や、店舗側の事情に応じた宣伝を技術的にサポートして、より強力な検索サイトを築こうとする企業もある。 ソフトバンク・グループの資本注入を受け、ナスダック・ジャパン上場を目指す株式会社アバネット(渋谷区)もその1つだ。同社が今月末に完成予定の検索エンジンには、店舗側が任意のタイミングで、サービス内容を更新できる機能が加わる。これなら値引きだけでなく、臨機応変のサービスで個性をPRする工夫の余地が出る。 ヒロコ・ケベドー会長は、「ネット利用者の細かいニーズと、店舗の個性のマッチングを可能にして、サイトの集客力を高めたい」と力説する。 こう話すのは、「焼肉天国.com」に登録する東京の焼肉店「絵のある街」の李創建さんだ。 「競合店が増え続ける中で、他店とどう違うのかを一生懸命PRしなくては、お客さんの心はつかめません。その点、ネットでの宣伝はコストも安く広告より広いスペースを取れるので、こちらのメッセージを精一杯発信できます」 ITを利用した宣伝の強みは、まさに「個性の発信」にある。 「焼肉天国.com」は最近、登録店のサービス情報をメール配信する取り組みを始めた。店舗が暇な時間帯、曜日の空席を埋めるためには、リアルタイムの広告が必要との考えからだ。 朴さんは、「当面は首都圏を中心に、100店舗の登録が目標。その後は他の地方へも展開し、ネット上に強力な焼肉コリアタウンを築きたい」と意気盛んだ。(金賢記者) |