5周年を迎えた兵庫県外国人学校協議会

地位向上で共同行動

大震災で確認された共通の目標


 阪神・淡路大震災の被害による復興活動で協力し合ったのをきっかけに結成された兵庫県外国人学校協議会(会長=林同春・神戸華僑総会会長)が、今年創立5周年を迎えた。10月17日には、貝原俊民・県知事、各領事館関係者なども招いて盛大な5周年記念祝賀会が行われた。また、5年間の活動を収めた「結成5周年記念誌 国境を越えて共に歩こう」(A4版、3000部)も発行。震災で大きな被害を被った外国人学校が、その後の復興のなかで、地位向上に向けてどう取り組んできたかを取材した。

震災契機に発足

 外国人学校協議会が結成されたのは、1995年7月26日。同年1月17日に起きた阪神・淡路大震災の被害に対する復興支援施策を話し合うため、兵庫県の主催で外国人県民復興会議が行われた。同会議で外国人学校関係者が一堂に会したのを契機に「ともに手を取り合って復興しよう」ということで一致し、協議会発足の準備が進められた。

 大震災によって、神戸市中央区脇浜にある神戸朝鮮初中級学校、同須磨区にあるマリスト国際学校は全壊し、伊丹市の伊丹朝鮮初級学校など13校が少なからぬ被害を受けた。

 それでも震災当時、長田区の西神戸朝鮮初中級学校、中央区山手通りにある神戸中華同文学校はもちろん、全壊した神戸初中級、マリストにも緊急避難所が設けられ、地域の同胞だけでなく、多くの日本市民の避難場所として重要な役割を担った。

 とくに朝鮮学校では震災直後、交通網が寸断され、行政も状況把握に四苦八苦していたなかで、総聯の各本部、支部から集められた救援物資で、翌日には被災者におにぎりと、暖かい味噌汁が振る舞われた。

 だが混乱が一段落して、復旧作業が始まるにつれ、日本学校と同じように被災し、避難所としても大きな役割を担った朝鮮学校などに対して日本の行政は、再建補助を費用の半分に抑えたのである。

 元々、日本の学校に比べ公的助成の額が低い外国人学校の再建は、一行に目途が立たなかった。

 外国人学校関係者は、こういう状況のなかで、外国人学校に対する教育振興の補助を一致して訴えていくことが必要だということを確認したのだ。

補助金は3倍に

 同協議会には、県内7つの法人、計19校の外国人学校すべてが加盟しており、50数ヵ国、4000人の学生が網羅されている。そのなかで、神戸朝鮮高級学校など13校、2000人の学生のいる兵庫朝鮮学園は大きな位置を占めている。

 これまで県内の朝鮮学校は、在日朝鮮人県教育会を通して助成金問題や処遇改善を求める運動を行ってきた。それが、外国人学校の1つの協議会として訴えることによって、行政に対するインパクトは確実に変わり、外国人学校教育振興補助金は、協議会の結成当初に比べ、兵庫県で3倍、神戸市で27%増額した。

 同協議会の朴成必事務局長は「これらの成果は、これまで朝鮮学校が一貫して行ってきた処遇改善運動が、正当性を持ち、また他の外国人学校と共同行動を取れる主張だったということを証明するものでもある。国際都市神戸を持つ県や市にとって、外国人学校は1つの国際交流の拠点にもなり得る。そうした意味でも震災当時の行政の対応は、逆に矛盾を噴出させた。日本で今、言われている国際化という視点からも、県や市は、もっと積極的に公的助成面で理解を示すべきだろう」と語る。

全公立大受験を認可

 同協議会はこれまで5年間、定例会議を年に4、5回開き、互いの情報交換はもちろん、県知事、市長に対する表敬訪問、行政担当者、県の議会私学振興議員連盟との懇談会などを定期的に行ってきた。

 さらに、国内における活動はもとより、国際世論にも訴えていく方法として98年8月には、国連人権委員会に林会長、黄成吉兵庫朝鮮学園専務理事ら四人の代表を送り、外国人学校の差別的現状を訴えた。

 こうした活動によって、昨年、神戸商科大学、姫路工業大学、県立看護大学をはじめ県下すべての公立大学の受験資格が認められることになった。

 また同協議会では、国際的な視野を養うために、日本学校を含む外国人学校の学生同士の独自の交流イベントも開催してきた。

 交流会に参加した中華同文学校に通う5年生の王理沙さんは「神戸に、私たち以外にこんなに外国人学校があるとは知らなかった。皆自分たちの民族の言葉を話しているなんてすばらしい」と、感想を寄せた。

 日弁連は、98年2月20日に日本政府に提出した勧告書で、外国人学校に対する制度的差別の是正はもちろんのこと、日本に在住する外国人の自国および自己の民族文化を保持することを妨げる問題について警鐘をならしている。

 協議会は、こうした勧告書にてらしながら、今後も民族性を守りつつ差別是正をアピールし、兵庫県から国立大学の受験資格の問題、公的助成を日本学校並の水準に引き上げることなどの突破口を開いていきたいとしている。(金美嶺記者)

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