介護保険と在日同胞
医協・全国アンケート調査結果

約半数が「わからない」

無年金の高齢者など「保険料が負担」


 4月から施行された介護保険制度。在日同胞も対象者(被保険者)だが、果たしてどのように受け止められているのか。在日本朝鮮人医学協会(医協)では9月の1ヵ月間、北海道から九州まで全国各地の在日同胞を対象にアンケート調査した。そこから見えてきたのは、介護保険制度に関する情報や知識はある程度浸透してきているが、まだ半数近くが制度の仕組みなどを理解していないという点だ。制度をよりよく活用し快適な老後を送るために、総聯をはじめウリ組織に対する期待が大きいことも浮き彫りになった。この結果は、26日に名古屋で行われる医協学術報告会で発表される。(アンケート詳報

関心高い40歳以上、39歳以下は逆現象
専門員育成、施設の設置/総聯組織への期待大

 アンケートの回答者総数は1445人。調査は、今年新たに開設された各地の「同胞生活相談綜合センター」と医協を通じて行われた。

 まず介護保険についての理解度を見ると、「十分に分かる」と答えた人は全体の5・2%、「不十分ながらわかる」とした人を足すと48・6%で、およそ半分の人が介護保険について理解している。逆に、「わからない」人も45・4%で約半分。

 年齢層別に見ると、介護保険の対象者である40歳以上の人の関心の高さがうかがえる。40〜64歳では55・4%、65歳以上では52・1%が理解している。半年がすぎ、同胞の間でもようやく浸透してきたと言える。

 これが、保険対象外の39歳以下になると、わからない人(47・1%)がわかる人(42・3%)を上回る。「別に関心がない」と答えた人も10・6%で、3階層中もっとも多い。

 全体的にはまだまだ情報が不足し知識が得られていないことがわかる。そのためか、ウリ組織に望む点として「制度について積極的に知らせてほしい」が37・6%と以外に多かった。

 期待度では、「期待しない」人(48・2%)が「期待する」人(47・6%)をわずかながら上回っている。

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 「介護保険制度で困っていること」の質問に対しては、「保険料が負担」という答えがもっとも多く44・3%を占めた。「利用者負担が重荷」(26・6%)を含めると、経済的負担を感じている人が70・9%に達する。

 現在、40〜64歳の人の負担額は平均月1500円程度。10月から徴収が始まった65歳以上の場合も月1500円程度だが、来年10月からは3000円程度に引き上げられることが決まっている。

 65歳以上の第1号被保険者の保険料は、原則として老齢年金から天引きされる。だが、今年4月現在で74歳以上の外国人高齢者らは無年金状態に置かれており、彼らは直接、市区町村に保険料を支払わなければならない。年金も支給されないうえに保険料を払うという2重負担を強いられているわけだ。

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 老後の暮らし方としては、半数以上の61・3%が「夫婦2人で暮らしているだろう」と答えた。一方で、老後の生活で最も不安に感じていることは、「生活費などの経済的不安」(38・2%)。ついで「介護など周りの人に負担をかける」(18・0%)。

 このように老後に不安を抱く同胞たちにとって、総聯をはじめウリ組織に対する期待は小さくない。

 「ウリ組織に望むことは」という設問では、「介護福祉に関する同胞専門員を多く育ててほしい」が52・1%、「同胞のための各種介護サービス施設を設けてほしい」が48・3%だった。

 高齢に達した場合、やはり自国の言葉や風習などが分かる同胞のヘルパーに見てもらいたいと思うのが人情。家族の誰かに介護が必要になった場合、「自宅にいさせて同胞ヘルパーを頼みたい」と答えた人が最も多かった(37・6%)。

 ウリ組織に対して望む点の中には、「区や市町村など行政への申請や交渉などを手助けしてほしい」という答えが42・8%あった。介護保険制度適用にあたって、同胞が差別的な扱いを受けないよう、行政への働きかけを強めていくこともいっそう求められている。(文聖姫記者)

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