ウリ民族フォーラム2000in愛知
ーパネルディスカッションからー
「統一朝鮮とコリアンネットワークの潜在力」
31の都道府県と81の地域に支部を持つ在日本朝鮮青年商工会(青商会)のフォーラムは、全国の会員が年に1度集う、唯一の全国的な行事としてこれまで継続されてきた。青商会結成五周年を迎えて、今回5回目となる、「ウリ民族フォーラムin愛知」(5日)では、劇的に転換した朝鮮半島情勢を踏まえて、在日同胞社会の今後をどう描くかといった「統一朝鮮とコリアンネットワークの潜在力」をテーマに、活発な議論が繰り広げられた。各パネラーの発言要旨を紹介する。 初の北南ベンチャー「成功させたい」 朝鮮語入力ソフトを開発、販売する同胞企業「CGS」の社長、十月に在日同胞企業と南朝鮮企業による合弁会社「ユニコテック」を設立した梁泳富社長 ――最初からジョイントを考えていたわけではない。だから1つのかけでもあった。今回ベンチャーを始めようと思ったのは、何よりも『物』にではなく『人』にひかれたことが大きい。ジョイントすることになった相手を見て、チャレンジ精神と懐の広さ、世界を相手にしているという緊張感が伝わってきた。 1世も日本に来た時は、皆ベンチャーだったことを考えれば、前例があるだけ心強い。 さらに、1つの朝鮮を念頭に起きながら何ができるかを考えた時、まず、ウリナラの技術力をバックに東京からアジアの壁を打ち破りたいと思った。 平壌のコンピュータセンターの技術は発達しているし、技術提携も可能だ。それでも日本では水面下での接触はあるものの「北の物」というだけで抵抗があるなど、様々な問題はある。しかし、初の北南とのベンチャーを成功させ、IT(情報技術)を駆使し、東アジアのデジタルネッ 相手はグローバル社会 米国経済論、国際金融問題、通貨メカニズムを研究している朝鮮大学校経営学部の呉民学専任講師 ――法務省発表による永住権を持った在日コリアンは、54万6000人。そこに、ニューカマーなど最近南から来た人たちを含めると64万5000人くらいになる。日本は、21世紀に入ると人口が減り続け、とくに出生率からして経済規模は間違いなく縮小される。一方、統一朝鮮は、1つの経済圏となり、今後世界人口の1%をキープしていくことになる。 こうした人口の変化と同時に変わるのが、膨大な金融資産だ。お金もグローバル化し、国を越えて移動していく。だからこそ、朝鮮半島情勢の変化と、グローバリゼーション、さらにITなどの状況に相応して発想を転換させるべきだろう。 青商会世代はこうした環境、横断型のジョイントベンチャーが可能性になった状況に希望と未来を持つべきだ。 北南朝鮮の和解や朝・日国交正常化の動きは現実的な方向へ動いている。今の情勢を積極的に受け入れ、各自がそれに相応しい努力と準備をしていく必要がある。 テクノロジーは富の配分によって格差が生じることを肝に命じるべきだ。在日同胞は、日本という先進資本主義経済圏の中で暮らしている。同胞商工人の中には、『焼肉屋にITは関係ない』などと言う人もいるが、これこそ発想を転換させるべきだ。 1世は、差別の中で企業を起こし築いてきた。これからは外に出て民族を自慢できる2、3世でいたい。 今後を考える人が勝者に 大阪から単身で渡米し、現在、マサチューセッツ工科大学機械工学科で助教授を努める梁富好工学博士
私は、日本生まれのコリアンとして、3ヵ国語を話し、自国の文化、歴史を知っていることで、米国社会で信頼を得ることができた。民族教育はそうした自分の土台となった。自分の体験からも日本への同化を防ぐための民族教育ではなく、国際人を育てることに、より重点を置いたウリハッキョであるべきだと思う。 それと同時にいつまでも日本という枠にある在日朝鮮人という観点から抜けだし、外に向けてものを発信していくべきだ。そのためには、民族心をベースにした確固としたアイデンティティーの育成が大事だ。 自信持って発信する物を 警備業会社(株)東海セキュリティを設立し、「安心と感動の創造」をモットーに事業を拡大。青商会を代表して開催地、愛知青商会の黄元圭会長 ――色々な産業が発達し、現在は様々な情報が発信されている。だが、バーチャルではできないもの、感情、情感を分かち合うことが大切だ。例えば在日だけでなく、世界のコリアンと同じ金氏というつながり方や、文化や言語、キムチなどの食によってつながる。そうしたつながりが、ひいては大きなビジネスチャンスになりうるという発想を持ちたい。同時に組織にある無数の資源を生かし、こちらから自信を持って発信できるものを持つべきだ。 京義線の連結などにみる北南のつながり、さらにそれはヨーロッパにもつながる。日本の中に閉じこもるのではなく、こうしたチャンスをわれわれがどのように生かしていくかが大事だ。 地域のコミュニティー集団として組織の持つ潜在力は膨大だ。そうした財産を十分に活用し、アピール出来た時、世界は必ず向こうからやってくる。 組織を硬直化させないために青商会が役割を果たせるなら、青商会の存在意義を持つことができる。 |