そこが知りたいQ&A

朝・日政府間第11回会談、何が話し合われたの?

過去の清算問題を実質討議
原則論から接点探る段階へ


 Q 第11回朝・日政府間本会談が10月30、31の両日、中国・北京で開かれました。朝鮮側は今回の会談について「深みのある協議が行われた」(朝鮮中央通信)と評価していますが、どのような討議が行われたのでしょうか。

  日本側も今会談を「より深みのある議論を行い、前進はあった」(1日、福田官房長官)と評価しています。しかし、このたびの会談では、10回会談のように共同報道文も発表されず、討議内容についても双方の代表団が堅く口を閉ざしているため、内容を推測するしかありません。朝鮮側の報道や日本高官の発言から、会談は「原則論」を述べる段階から、実質的な協議の段階に入ったと思われます。

 今会談は、「実質的な討議をする」(朝鮮側)、「双方の立場の接点を探る作業を行う」(日本側)との第10回会談の評価を踏まえて開催された点に重要なポイントがあります。

 朝・日会談は今年の4月、平壌で8年ぶりに再開されました。過去の8回におよぶ会談は、日本側の自主性の欠如から、過去の清算などの基本問題と「ら致問題」などの枝葉の問題がごちゃまぜにされ、何の成果も得られませでした。しかし、今年から再開された会談は、南北朝鮮・朝米関係の進展など朝鮮半島をめぐる様々な情勢の変化を背景にスタートしました。そして朝・日両国は史上初の外相会談(7月)を通じて、対話を継続する意思を確認しました。

 つまり、今会談から、会談の根本問題である「過去の清算」問題を討議する土壌が、やっと作られたのです。それが朝鮮側の「深みのある協議」という表現に凝縮されたと考えられます。

 Q 朝鮮側が主張してきた過去の植民地支配に対する謝罪、補償については進展はあったのでしょうか?

  報道によると、日本側は植民地支配の謝罪ついては1995年の村山富市首相(当時)談話の線で、補償については請求権問題として処理すべきだと主張しながら、「(日韓条約時の)経済協力方式」による解決案を示したと言われています。

 この「解決案」について朝鮮側は、すでに前回会談で受け入れられないとの立場を表明しています。

 村山談話の「謝罪」の最大の問題点は、日本の植民地支配が合法との前提に立っていることです。

 また、戦後50年に際して発表されたこの談話は、日本が過去に侵略、占領したアジアの国全般を対象にしたものです。日本は朝鮮を除いたアジア諸国との間では国交を結び、何らかの形で「過去」に区切りをつけました(統一問題が残る台湾を除く)。

 そうした国々と、過去の清算の済んでいない朝鮮とを同列に置くことは出来ません。談話をベースにして、朝鮮に限った謝罪を新たに検討したいという、発想の出発そのものが間違っていると言わざるをえません。日本は朝鮮を植民地にし、600万人の強制連行、20万人の元「従軍慰安婦」、「創氏改名」など莫大な人的、物的被害を加えました。

 だからこそ、「村山談話に含まれている おわび という言葉、すなわち、過ちや不注意で他人に負傷を加えた際に使う表現としての 謝罪 は受け入れられない」(鄭大使)のです。朝鮮側は、村山談話が発表された当初から「謝罪と補償をするべきだ」(労働新聞95年8月25日付)と批判しています。

 経済協力による補償問題の解決も、朝鮮側は受け入れられません。65年に締結された「韓日条約」で日本側は、南朝鮮政府に対して無償3億ドル、有償2億ドルの計5億ドルを支払いました。しかし、この金額の名目は過去の植民地支配に対する補償ではなく(謝罪は一言も明記されていない)、「大韓民国の独立祝賀金」で、経済支援として支払われたのです。

 朝・日関係は、かつての不幸と苦痛を強いた犯罪者と莫大な人的、物的損失を被った被害者との特殊な関係だけに、謝罪と補償は必ず行われれるべきです。

 Q 次回会談の日程も決まりませんでしたが、今後の展望は?

  朝鮮中央通信は、次回の日程について、「日本側の準備が整うに従い、開くことにした」とだけ報じました。ボールは日本側にあると言えるでしょう。

 朝鮮側が「過去の清算は朝・日関係改善の扉を開ける鍵」(労働新聞10月24日付)と指摘しているように、日本側が朝鮮の主張する過去の清算(謝罪、補償、文化財の返還、在日朝鮮人の特別地位問題)問題に歩み寄ることが、会談の進展につながるでしょう。

(張慧純記者)

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