取材ノート

「統一」生かす人材は


 南北統一ムードの高まりもあり、このところ、南の経済人らと会うことがしばしばある。と言っても、記者が会っているのは「現代」「三星」など、南北経済協力の主役たる財閥系企業の関係者ではなく、主として情報通信分野のベンチャービジネスマンたちだ。

 先ごろ、平壌にコンピュータソフトの開発拠点を置く在日と南のジョイントベンチャーが東京に設立されたが、ほかにも、北や在日に関心を持つ企業はある。実際に、南北と世界中の海外同胞をつなぐ「汎民族デジタルネットワーク」の構築を目指す2つの企業、グループと接触したが、それぞれ、本国の大手メディアや政治家の後ろ盾を得ており、意気込み、態勢とも本格的なものを感じた。

 統一の進展は、朝鮮民族の前に様々な新しい機会を広げる。

 例えば、復旧される南北鉄道「京義線」がシベリア鉄道と連結されれば、朝鮮半島はユーラシア大陸を貫く輸送大動脈の始発点となる。大陸をまたにかけたダイナミックなビジネスの入り口が、在日同胞の前にも示されるわけだ。展望は明らかではないにせよ、汎民族ネットの構築というのも、「統一時代」ならではの機会だろう。

 気になるのは、そういった機会を生かす人材像だ。記者が会った、汎民族ネットを目指す南のベンチャー経営者は米国でMBA(経営学修士)を取得した秀才だが、「学生時代は運動圏に属し、徴兵で海兵隊にも行った。今日、このようなビジネスを手がけられるのは万感の思い」と話していた。

 「統一時代」はやはり、分断を乗り越えた所にある。分断のしがらみにとらわれて、必ずしも自由に活躍できなかった在日の商工人らも、積年の思いを爆発させ、勇躍はばたいていくのだろうか。(金賢記者)

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