ユーラシア大陸横断ルートと京義線

再建の意義と展望

高成鳳


 歴史的な京義線再建が、にわかに注目を集めている。現代版「鉄のシルクロード」が実現するとの期待が高まっているが、今後問題となる実際のルート選定と、京義線全通後の展望について簡単にまとめてみた。

経済交流活性化に寄与

 京義線再建の効果としては、まず第1に南北間で大量陸上輸送が可能となり、船舶輸送に対し輸送時間・コストともに低減される見込みで、南北経済交流の活発化に寄与すると考えられる。

 次いで、現在は海上・航空輸送に頼っている、南と中国・ロシア極東・中央アジア方面間の輸送の多くが鉄道経由にシフトすると考えられ、輸送コストが削減できれば、輸出競争力向上にもつながろう。

 さらには朝鮮半島の鉄道網が、中国やロシアの鉄道とつながることで、ユーラシア大陸横断鉄道の最東端部を担うことになり、これによる様々な可能性が考えられる。

 現在、船舶で2ヵ月近くかかっている北東アジアとヨーロッパ間の輸送日数がほぼ半分となり、運賃設定次第では海運から鉄道への相当なシフトが期待できる。

シベリア鉄道と合流

 実際に朝鮮半島からヨーロッパ方面へ至る鉄道ルートには、以下のような経路が存在する。

 新義州―瀋陽―ハルビン―満洲里―シベリア鉄道へ(中国東北経由、TMR)。

 新義州―北京―ウランバートル―ウラン・ウデ―シベリア鉄道へ(モンゴル経由、TMGR)。

 清津―豆満江―ハサン―バラノフスキー(ウラジオストック北方)―シベリア鉄道へ(シベリア鉄道直行、TSR)。

 新義州―西安―ウルムチ―アルマトゥイ―シベリア鉄道へ(中国西部・中央アジア経由、TCR)。

  TCRはアルマトゥイから先、タシケントを経て将来的にはイラン・トルコ方面への接続が考えられている。

 現状では各ルートとも、ヨーロッパ方面へは最終的にシベリア鉄道と合流する。なおシベリア鉄道や中央アジア旧ソ連諸国の鉄道は、線路幅が1520ミリのロシア広軌で、1435ミリ国際標準軌の中国や南北朝鮮の車両は、国境での台車交換か積み替えが必要となる。

 TMR、TMGRは、朝鮮半島西回りでシベリア鉄道に接続しやすい。中国の協力をどこまで得られるかがポイントとなる。TCRは、起終点と経由地の違いにより一様でないが、一応ヨーロッパまでの距離が最も短く、中央アジアへのアクセスに便利だ。しかし関係国が多い分調整が難しく、全般的に鉄道の状態も悪い。現状では西側ルートが未確定といった問題もある。

 TSRは、朝鮮半島東回りでシベリア鉄道に直結でき、関係国が南北とロシアのみで調整は容易だ。問題は朝鮮半島横断線(平元線・青年伊川線)の単線急勾配と、東海岸を北上する咸鏡(平羅)線の輸送力で、本格活用には京元線復旧が急務だ。

北東アジア物流の一大拠点

 京義線の大陸への延長ルート選定で問題となるのが、中ロの思惑の違いである。中国にとってはシベリア鉄道への対抗上、京義線直通列車の自国内通過距離は長いほど好ましいだろう。一方で国内における西部大開発の柱にと意気込む、TCRを本格活用した連雲港発欧亜大陸橋(チャイナランドブリッジ)計画と、釜山からヨーロッパまでの直結計画が競合する一面もあり、本音としては京義線との連絡輸送に全面協力しにくい事情もあろう。

 対するロシアは、シベリア鉄道の国際貨物輸送が減少している中、京義線連絡貨物を吸収することで、北東アジアとヨーロッパ間輸送でのシベリア鉄道利用を促進する呼び水効果を期待しているようだ。このため朝鮮半島東海岸回りのルートで、シベリア鉄道と接続するのが最善と捉え、そのためにも京元線の早期復旧を望んでいる模様だ。

 もし鉄道による北東アジアとヨーロッパ間の輸送が軌道に乗れば、海上輸送からの大幅なシフトが期待され、朝鮮半島が将来的に北東アジアにおける物流の一大拠点となることも考えられる。中長期的には日本発着貨物を、鉄道ルートにどれだけ吸収出来るかが、海運から鉄道輸送への転換の成否を大きく左右することになるだろう。

 京義線からヨーロッパ方面への連絡輸送が実際にどこまで定着するかは未知数だが、TCRルートは向こう4、5年の間に大きな改善が見込まれる。朝鮮半島が北東アジアにおける海陸輸送連絡の玄関口として認知されるには、それまでに中央アジア方面へはTCR経由で、ヨーロッパ方面へはTSRとTMR経由でまとまった輸送実績を積み重ねておくことが、今後の発展のためにも急務だといえよう。(コ・ソンボン、立教大学非常勤講師)

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