強盛大国 金正日プラン−2−
政策の柱
先軍政治と科学技術重視
「実利を徹底的に保障」
青年英雄道路(平壌―南浦高速道路)建設
に向かう朝鮮人民軍兵士(労働新聞から)
「思想と銃、科学技術は強盛大国建設の3大柱」(今年元旦の労働新聞、朝鮮人民軍、青年前衛3紙共同社説)
強盛大国とは、思想と政治、軍事と経済などすべての面で最高の力を持った国を指す。このような国を建設するうえで、思想と銃(軍事)、科学技術が中核になるということだ。 なかでも今日、先軍政治と科学技術重視が金正日総書記の政策の中心をなす。 先軍政治とは、政治を行う上ですべての面で軍事を優先させ、軍隊を中心に社会主義建設を推し進める方式だ。国家の防衛はもちろん、経済建設をはじめとする社会主義建設の全般において軍が中心的役割を果たすという意味だ。 98年9月の最高人民会議第10期第1回会議で、国防委員会委員長職が「国家の最高職責」となり、国防委員会が武力に対する指揮統率権だけでなく国防事業全般に対する指揮権を持ったことから、その性格がより鮮明になった。 朝鮮では、主席逝去の前後から99年までの6年間を、「最悪の試練」、「完全な戦争状態」(労働新聞10月3日付)であったと振り返った。相次ぐ自然災害などによる食糧不足の深刻化や経済状況の悪化、「核疑惑」を口実にした米国などによる空爆、戦争の危機…。社会主義体制崩壊の危機を救うためには確固たる軍事的基盤が必要だ。 「私が経済だけに力を入れたならば、われわれはとっくに滅びていたでしょう。…先軍政治を行いながら軍隊を掌握して社会主義を建設し、祖国も防衛したため、厳しい試練と苦難を克服して社会主義を守ることができました」(労働新聞七月二十七日付)。 南北、朝米関係などを劇的に展開させている背景には、こうした自信が存在する。 一方、「憲法で国防委員会の地位と権能を高めたのは、国防を最優先せざるを得ないわが国の現実的条件から出発したもの」(朝鮮人権研究協会のシン・ヒョンイル委員長)であることから、朝鮮では当面して先軍政治を進めていくことになる。 南北首脳会談の興奮覚めやらぬ7月4日付の労働新聞に、党政治理論誌「勤労者」との共同論説が掲載された。強盛大国を建設するためには、科学技術を世界的水準に上げる必要があるという内容だ。 発表された時期が時期だけに、南北経済協力の行方ともからめて注目された。その後の7月26〜30日に訪北した三星グループの尹鍾竜副会長一行が呉秀容電子工業相と会談したのは示唆的だ。 北側は、総合的な電子工業基地を整備するための技術開発と人材育成のために、三星グループとの協力事業を進めようとしている。今年3月には、「朝鮮コンピュータ・三星ソフトウエア共同協力開発センター」の発足式が北京で行われている。今年中に南北単一ワードプロセッサーを開発するほか、いくつかのソフト開発に着手する予定だ。 「北のコンピュータ技術水準は相当なもの」(大韓毎日6月16日付)と評価されており、とくに総書記自身、コンピュータの知識に相当明るいと言われる。 先の共同論説では、「革命精神だけで革命と建設を進めていた時代は過ぎ去った。高い革命精神プラス科学技術、これが社会主義を成功へと導く道だ」と指摘した。「すべての部門で実利を徹底的に保障する」党の経済政策の一端が垣間見える。 (文聖姫記者) |