そこが知りたいQ&A

朝鮮の今年の農業は?

旱ばつ・台風で140万トン損失見込み


南・日が大規模支援/国連機関が調査団派遣へ

 Q そろそろ収穫シーズンです。近年、食糧不足に苦しんでいる朝鮮ですが、今年の農業はどうだったのでしょうか?

 A ひとことで言うと、非常に厳しい模様です。昨年は天候にも恵まれ農作物の出来が比較的良好だったうえ、数年来の地道な努力が功を奏し始めるなど食糧事情が徐々に回復の兆しを見せていたのに残念です。その原因はこの夏、朝鮮を襲った自然災害です。

 今年5月半ばから8月にかけ、朝鮮各地は例年にない旱ばつ・高温の被害に見舞われました。水稲とトウモロコシの種蒔きの時期、全般的な地域で降水量が例年の5割にも満たず、一部の地方では40〜50日もの間、まったく雨が降りませんでした。そのため、主要穀倉地帯の黄海南・北道、江原道、咸鏡南道の田畑にほとんど農業用水が供給できなかったといいます。旱ばつ・高温はその後も続き、かろうじて田植えのできた水田も乾いたり、成育期のトウモロコシが枯れてしまい、多くの水田とトウモロコシ畑でまったく収穫の期待できない状態になってしまいました。

 さらには夏から秋にかけて豪雨を伴う大型の台風が2回も朝鮮各地を襲いました。14万ヘクタールの農耕地が流出したり、土砂に埋没、もしくは浸水する被害にあいました。

 旱ばつ・高温、そして2度にわたる台風の襲来は、朝鮮の農業に大きな被害をもたらしました。朝鮮農業省農産局長が9月25日に発表した談話によると、今夏、朝鮮を襲った自然災害による穀物損失量は合計約140万トンに達すると推定されています。このうち、旱ばつ・高温によって約100余万トン、台風によって45万5000余トンがそれぞれ減少するという見込みです。

 Q 国連機関をはじめ、国際社会の反応はどうですか?

 A こうした被害については、ここ数年、朝鮮各地に駐在して支援活動を行っている国連機関、NGOなども把握しているようです。

 国連・食糧農業機関(FAO)のジャック・ティウプ事務総長は、8月28〜9月2日に横浜で開かれたFAOのアジア太平洋地域総会で、朝鮮の旱ばつ被害は深刻で、50万トンの食糧支援が必要だと述べています。当時、同事務総長が語ったところによると、朝鮮の年間穀物必要量470万トンのうち、調達可能なのは自力で生産できる340万トンと国際援助の80万トンで、不足分50万トンの追加援助が必要だということでした。

 また国連・世界食糧計画(WFP)のキャサリン・バーティーニ事務局長は9月29日、イタリアを訪問した朝鮮の白南淳外相との昼食会の後、「今年の収穫が事前に予測していたよりも少なくなる兆候が強まっている。WFPとFAOは損害を査定するため朝鮮へ調査団を送る予定であり、2001年に同国は、今年受け取ったよりずっと多くの食糧援助量を必要とするかもしれないという見込みについて目下調査中だ」と語りました。

 一方、南朝鮮の政府系機関である農村経済研究院は、朝鮮の今年の穀物生産高を200万〜250万トンと推定しています。

 Q 実際に支援への動きはあるのですか?

 A 5年前の大水害以来、朝鮮への支援の窓口的存在となっているWFPではすでに9月15日、国際社会への対朝鮮食糧支援要請を合計87万6933トンに拡大しました。これは昨年7月から今年12月までの支援分で、この夏の旱ばつ・台風の被害による新たな追加分は19万4000トンです。

 こうした動きに合わせて南朝鮮は9月28日、借款形式で50万トン、WFPを通じた無償提供10万トン、計60万トンの食糧支援を決め、今月5日に第1便が到着しました。また6日には、日本政府がWFPを通じたコメ50万トンの無償支援を決めました。

 これだけ合わせても110万トンなので、朝鮮農業省農産局長が明らかにした自然災害による穀物損失量、約140万トンを相当カバーできる計算となります。しかし、秋の収穫はまだ終わっておらず、終わったとしても朝鮮ではここ10年来、総生産量を公表しないのが通例となっています。近く派遣されるというWFPとFAO共同の調査団の調査が待たれるところです。

 もちろん、南、日本ほど大口ではないものの、各国や国際的なNGOによる地道な支援活動は続けられています。

 Q 朝鮮はただ支援を受けているばかりなのでしょうか?

 A 自然災害は不運としか言いようがありませんが、朝鮮人民もじっと手をこまねいているわけではありません。困難をしのぐための各方面の支援に感謝しながら、当面は被害の復旧、農業の回復に全力を注ぐ一方、長期的にはここ数年来続けている全般的な農業構造の改善と食糧増産に向けて努力を傾けています。

 適地適作、適期適作の原則による生産構造の改善とジャガイモの増産、二毛作の推進と品種改良、土地整理事業の大々的な推進と農業の総合的機械化の完成、草食の家畜を大々的に育てることなど、国連機関をはじめ、国際的な協力を得ながらここ数年来、積み重ねてきたノウハウは今も生かされています。一方、複合微生物利用による自然農法も徐々に成果をあげており、9月20〜21日には平壌に世界中の専門家らが集まり国際シンポジウムも開かれています。

 自然災害による痛手について明らかにした農業省農産局長の談話は、来年も食糧不足が続く見込みだとしながらも、「朝鮮政府は、農業重視政策を一貫して掲げ、当面しては自然災害から復旧し、被災地住民の生活を落ち着かせるための実質的な措置を取っている。朝鮮人民は、今後も立ちはだかる難関を乗り越えながら、農業生産を1日も早く正常化し、持続的な食糧の安定供給を実現するためにあらゆる努力を傾けるだろう」と強調しています。

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