シドニー五輪閉幕
統一への思い、世界にアピール
交流深めた南北選手ら
【シドニー発=本社千貴裕記者】南北朝鮮選手団が開会式で共同入場行進を行い、全世界に「ワンコリア」をアピールしたシドニー五輪が17日間の全日程の幕を閉じた。1日、オリンピックスタジアムで行われた閉会式でも南北選手団は統一旗を掲げ共に登場した。歴史的な6・15南北共同宣言の直後に開かれた今回の五輪は、共同入場行進はもちろん、競技場、選手村、観客席などいたるところで南北選手、関係者、応援団の交流シーンが見られるという、かつてない和解ムードの中で行われた。最終的な獲得メダル数は北が銀1、銅3の計4つ、南が金8、銀9、銅11の計28で、北側としては若干不本意とも言える結果となったが、実りある大会だったことには間違いない。開・閉会式両方で統一旗の旗手を務めた南の女子バスケットボールチームのキャプテン、チョン・ウンスンさん(29)が「南北が一緒にスポーツをすれば世界最強になれるはず」と語るように、今後に期待をつなげたい。 私たちは一つ、アテネは統一チームで 話してみると兄弟のよう 大会期間中、南北の選手たちは選手村や練習場、競技場などで交流し、親ぼくを深めた。競技場でたたかった選手らも試合後は互いに激励し合い、競技が終了した選手らは南北の選手に分け隔てなく熱い声援を送った。また南北選手が出場する各競技場では、在日同胞や在豪コリアン、南からの応援団が統一旗を手に共同で応援を繰り広げた。 選手村のレストランでは、南北の選手、関係者らが同じテーブルにつき、談笑する姿が多く見られた。関係者らは、以前は「想像できなかった光景」だと口をそろえる。 南の柔道女子チーム、キム・ドジュンコーチ(43)は「金大中大統領と金正日国防委員長が手を固く結び、仲良くしようというのに、私たちが仲良くできない理由がない」と笑う。 北の体操のベテラン、ペ・ギルス選手(29)も「これまでも選手同士の交流はあったが、南北共同宣言発表後に開かれたことで、今大会では交流の雰囲気がこれまでになく高まった。統一が早く実現してくれたらと心から願う」と話す。 これまでは国際大会で会っても、あいさつを交わすのがやっとだった。しかし、今回はまったく違った。南北選手が席を共にする場には、和気あいあいとした空気が流れた。選手、指導者、関係者らはいざ試合に臨むとライバルとなったが、それ以外の場では親しい仲間だった。同じ民族同士、励ましあい、健闘を称えあった。 大会期間中、各所で北の選手と交流を深めたという南の柔道女子、チャン・ジェシム選手は「互いに理解が深まったと思う。近いうちに統一チームも実現するでしょう」と語る。 南側選手団のカン・ゴヌク主将(男子ホッケー、29)は「北側の選手と話してみると、やっぱり同じ民族だということで親近感が沸き、まるで血を分けた兄弟のような感じを受けた。解決すべき問題は多いだろうが、統一チーム結成は可能だと思う。2004年のアテネ五輪には統一チームで出場しなくてはならない。われわれはもともと一つの民族なのだから」と強調した。 ウエイトリフティング女子58キロ級の銀メダリスト、北のリ・ソンヒ選手も「今後、統一チームとして一つの旗のもとに国際大会に出場できたら本当に嬉しい。近いうちにそうなると信じています」と期待を寄せる。 20世紀最後の五輪。選手村で花咲いた南北選手の交流、選手たちを共に応援する同胞らの姿は、思想と政見、信仰が違っても南北は1つの民族であり、今、統一へ向けて共に歩んでいるのだということを再確認させた。
北は銀1、銅3 9月26日、レスリング・グレコローマン54キロ級でカン・ヨンギュンが、また同28日、ボクシング48キロ級でキム・ウンチョルが、それぞれ銅メダルを獲得。朝鮮のメダル獲得数はウエイトリフティング女子58キロ級のリ・ソンヒの銀、柔道女子52キロ級のケ・スニの銅と合わせて銀1、銅3となった。 24日の予選を二勝一敗で勝ち抜き25日の準決勝に臨んだカンは、アトランタ五輪金メダリスト、南のシム・クォノとの「南北対戦」で敗れたが、26日の3位決定戦でアトランタ五輪銅メダリストのウクライナ選手に7―0のポイントで圧勝し、銅メダルを獲得した。金は南のシムで、今大会初めて南北選手が共に表彰台に上り、大歓声を浴びた。 ボクシング48キロ級のキムは28日、準決勝でスペインの選手に10―15のポイントで惜敗し、3位となった。 9月19日に行われたアーチェリー女子個人決勝ではチェ・オクシルが四位に入賞した。国際大会出場が2回目という新人のチェだが、3回戦でウクライナ選手、準々決勝で強豪のイタリア選手を破り、4強に残った。 4強のあと3人はアーチェリーを「御家芸」とする南の3選手で、準決勝は今大会初の「南北対決」として注目された。結局、チェは南のキム・ナムスンに敗れ、3位決定戦でもキム・スニョンに屈し、4位入賞となった。優勝は南のユン・ミジンで、メダルを南が独占する形になった。 同日のウエイトリフティング女子63キロ級でキム・ヨンオクが5位、柔道男子81キロ級でクァク・オクチョルが7位に入賞した。 24日、体操男子種目別あん馬決勝に出場した1992年バルセロナ五輪同種目金メダリストのベテラン、ペ・ギルスは健闘したものの5位入賞で終わった。4位には南のリ・ジャンヒョンが入っている。 また同日の女子マラソンで朝鮮のハム・ボンシルが8位に入賞した。 |