春夏秋冬
先日、とある告別式で3回焼香しようしたところ、僧侶に「焼香は1度だけするものです」とたしなめられて、思わず硬直してしまった
▼「葬式は昔、寺で行っていた。だから寺のご本尊様に1回、寺にいる霊魂に1回、故人に1回と、3回焼香していたが、告別会場などではご本尊様がいないので1回でよい」というのが、その僧侶の説明だった
▼正直に白状すると、前の人が3回焼香したので、それにならって3回香をたこうとしたのだが、生前お世話になった故人に対して不そんな振る舞いをしたようで何やらばつが悪かった
▼そこで普段から懇意にしてもらっている別の僧侶に、相談した。30代の在日朝鮮人2世であるその僧侶は、故人、仏様に対する追慕の気持ちは、おおよそ7つのもので表されると、こんこんと話してくれた
▼順序に関係なく言うと (1)花 (2)果実 (3)ご飯などの食べ物 (4)明かり (5)飲み物 (6)声 (7)香りで、たとえば明かりは、故人の歩んできた道、これから歩む道を明るく照らすためなど、それぞれ意味がある
▼中でも重要なのが声で追悼の気持ちを表すこと。念仏を唱えたり、追悼の辞や故人の業績をたたえる歌をうたったりすることが故人に対するなによりの供養になるとか
▼焼香の回数については、宗派や地域による違いを指摘しつつも「故人を思う気持ちがあれば、100回でも1000回でもかまわない」とのことだった。ちなみに仏教では3という数字をもっとも重要な数字としていることも教えてくれた
▼要は故人の冥福を祈る気持ちが大事なのだ。しきたりにこだわるのも良いが、中身を忘れないように、と自分を戒めた。 (元)