えこのナビ/CATVなぜ関心


通信網の実力に価値

 このところ、ケーブルテレビ(CATV)業界の動きがあわただしい。外資・異業種の参入や業界内での合従連衡などが相次いでいる。CS、BS、地上波、そしてCATVと、日本の放送業界はデジタル化の波を迎えようとしているが、中でもCATVは、デジタル・ネットワークの拠点として注目度が高まっていることが背景にある。その特徴や今後の方向性などを見る。

普通のテレビとどう違う/
多様な番組、定額ネットも

 日本におけるCATVは、テレビ放送開始から2年後の1955年、群馬県伊香保町で、地形上の難視聴解消を目的とした共同受信施設として誕生。その後しばらくは、辺地や高層建物による地上波放送の難視聴を解消する、再送信メディアとしての役割が主だった。

 それが60年代からは、地方都市を中心に地域情報などを自主放送するケースが増加。80年代には多チャンネル化も進んだ。

 自主制作番組として夏の高校野球の県予選を全試合中継したり、BSやCSの衛星放送番組を再送信するなど、視聴者のニーズの多様化に応える努力が奏効して、加入者は年々増加している。90年度末には102万世帯だったのが、98年度末には794万世帯に達した。事業者も、同じ時期に326から738へと倍増している。

 そして、最近とくに評価が高まっているのがインターネット接続などの通信サービスだ。

 日本では電話回線の通信速度が遅く、料金が欧米に比べて高いことなどが、インターネットの利用頻度を高めるうえでネックになっている。

 しかし、普通の電話回線で24時間接続すると4万円近くするのが、CATVのケーブルを使ったインターネットは、つなぎっ放しでも月額6000円前後(事業者によって異なる)の定額制だ。通信速度もケーブルの方が各段に早い。

 電話サービスでも、通常の事業者より料金を安く設定しているところもある。

新サービスの内容は/
ソフト配信、「相談」「学習」など

 昨年、日本のCATVに通信インフラとしての価値を見出して、大きく動いたのが米国のマイクロソフト社だ。

 同社には、CATV網を利用した映像、ゲームソフトの配信や、自社ソフトのオンライン販売を行う考えがあると言われる。その日本での拠点を築こうと、CATV統括運営会社大手のタイタス・コミュニケーションズ(本社・東京)の買収に動き出したのだ。

 ゲームやカラオケの配信は既存のCATV局にもすでに手がけているところがあるが、今のところは付加的な位置付けのようだ。

 しかしマイクロソフトなどの戦略は、「放送業」の枠に納まるものではない。

 日本の企業でも、NTTデータ、凸版印刷、DDI、トーメンなどが組み、8月から系列のCATVを使って、一般家庭にオンラインショッピングや地域関連の情報などを配信する。

 具体的には、地域の人気ショップや安売りの情報から、高齢者を抱える地域の介護拠点を結ぶ相談システム、家庭で英会話学校の授業を受けられる遠隔学習などのサービスが盛り込まれるという。

デジタル化メリットは/
内容に広がり、料金にも注目

 CATVにおけるサービスの多様化は、放送のデジタル化を受けていっそう進むことになりそうだ。

 まず、デジタル技術の導入により、現行の1チャンネル分の周波数帯で4〜8チャンネルを高画質で設定できるようになる。これだと、BSやCSのアンテナを立てなくても、CATVを通して画質を落とさずにそれらの番組を楽しめる。

 また、視聴者がデジタルビデオカメラで撮影した作品を利用した番組や、視聴者が家庭にいながら参加できる番組も制作できる。

 インターネットと連動した双方向通信サービスも可能になり、例えばテレビで音楽番組を見ながら気に入った楽曲を配信販売で購入できるようになる。

 大手の中には来春からデジタル放送を予定している局もあり、こうしたサービスを受けられる時代は近い。

 内容的には広がりが予想されるCATVだが、利用し易さはどうだろうか。

 現在、都市型大手局を見渡すと、工事費を含めた加入費は数万円から10万円程度が普通で、決して安くはない。基本料金も月額で2000〜3000円かかる。

 とくに都市型CATVは送信施設などの設備投資がかさむため、こうした値段になっているようだ。今後、デジタル化に対応するためにはさらなる投資が必要で、事業者の台所は苦しい状態が続く。

 しかし、2010年には日本のすべての放送がデジタル化されることになり、衛星、地上波、CATVと業態を超えた顧客獲得競争や、料金の引き下げ合戦も予想される。視聴者としては、多様なサービスの中から、自らのニーズと料金のバランスがとれたものを選びたいところだ。                                                      (金賢記者)