そこが知りたいQ&A/「南北経済共同体」構成案とは
実現性に乏しく選挙対策用
根本問題に触れぬと北は一蹴
Q 金大中「大統領」が、3日に行った「新年の辞」で、「南北経済共同体」構成のための「国策研究機関間の協議」を提案した。「南北経済共同体」の内容とは。
A 統一部は、「現在、南北朝鮮は経済分野で交流と協力の必要性を認めており、現実的に様々な分野で交流協力が拡大されているので、これをさらに発展させることで信頼構築と共同利益の範囲を広げることを南北経済共同体形成と定義付けることができる」と発表している。一言で、南北経済交流をさらに発展させるということだ。
そして「南北経済共同体」は、(1)民族経済の統一的で均衡的な発展と民族全体の福利向上をはかる共同の経済生活圏を形成し、(2)南北、海外同胞が参与して資本と技術、土地と労働力を結合しうる経済交流協力を持続的に拡大し、(3)南北の経済格差を縮小しながら北の経済回復と住民の生活向上を助けて、究極的には統一国家を作る実質的基盤となりえ、これらの問題を協議するために「国策研究機関間の協議」を行うとしている。
またこれと関連して南朝鮮当局は、3兆ウォン(約3000億円)規模の基金を保有する半官半民的な経済協力機構を設置することを検討しているという。
Q これに対する北の反応は。
A 9日付の労働新聞が、「重要なのは根本問題の解決」と題する論評で、この問題に言及している。
「民族の死活にかかわる祖国統一問題に背を向け、北南関係を『経済協力』にのみ極限させて『南北経済共同体』問題を持ち出したことは、民族に対するきわめて無責任な態度」だというのが、労働新聞の評価だ。労働新聞は、朝鮮労働党の機関紙なので、党の見解と見なせる。
また「南北経済共同体」というものは決して目新しいものではないとして労働新聞は、すでに北と南は、合意書を通じて経済協力に必要な機構を設けて久しく、協力全般についての具体的内容も確定した。いまさら北南間の経済協力問題を実権をもたない研究機関の間で協議させるというのは、すでになされた双方間の合意を遠くに押しやることになると指摘している。
Q 合意書を通じて経済協力に必要な機構を設けたというのは、どういうことか。
A 合意書というのは、91年12月に双方の総理が署名した南北合意書(南北間の和解と不可侵および協力、交流に関する合意書)と、その付属合意書を指し、これらの合意書に基づいて南北は、92年5月に南北経済協力、交流共同委員会を構成した。この共同委員会で南北の経済協力、交流問題も話し合うことになっていた。
Q 金「大統領」が提案した「国策研究機関間の協議」は、92年の南北経済協力、交流共同委員会での協議とは内容が異なるのか。
A これまで明らかにされた限りでは、同じ。共同委員会は、南北協力、交流の履行と順守のための付属合意書を履行するために設けられたもので、その付属合意書には、南の提案内容が含まれているし、逆に共同委員会の方が、範囲が広い。
Q その南北共同委員会は92年に南北高位級会談が決裂して以来、一度も開かれていない。金剛山観光も軌道に乗ったし、この辺で南北の経済協力問題を話し合う機構が設置されても良いのではないか。
A 南北高位級会談が決裂した直接の原因は、南側が米国との合同軍事演習チーム・スピリットの再開を決定したからだが、本質的には対北対決姿勢を解消しなかったことにあり、その構図はいまも変わっていない。
南北合意書が採択されたとき、当時のブッシュ米大統領は、露骨に不快感を表した。米国抜きの南北和解は、まかりならんと。そして南北対話に介入し、軍事施設の査察など北がとうてい受け入れられないような内容を南朝鮮当局を通して要求した。
それから経済協力、交流共同委員会でも南側は、経済協力事業に参画する個人、企業に対する「当局の承認」に固執し、自由で制限のない協力、交流を主張する北側と対立したという経緯がある。
金大中「政権」発足後も南朝鮮当局は、米国との軍事演習を行い、依然として「国家保安法」で北を「敵」と規定し、経済協力事業でも「当局の承認」を得たものだけに許可を与えている。
「南北経済共同体」提案の背景として南朝鮮当局は、金剛山観光と「西海工業団地造成」(朝鮮アジア太平洋平和委員会と現代グループが朝鮮西海の臨海都市に大規模な工業団地を造成することで合意したもの)などを挙げているが、その南側当事者は現代グループだけで、三星グループが発表した10億ドル規模の電子複合団地造成には、圧力を加えているのだ。
北側が南北当局会談の先決実践事項として外勢との共助中止、「国家保安法」の廃止などを求めているのは、まさにこうした歴史的経緯から出発していると言える。
Q 金「大統領」の「南北共同体」提案の目的はなにか。
A おそらく4月に投票が行われる総選挙対策だ。
前述の根本問題以外にも南朝鮮当局は、「南北共同体」構成案を発表した後、486級以上コンピュータの北への搬出を禁止(7日)し、対北支払い金の50%以上を現物(肥料、生活必需品など)で支給するという方針を決めた。
486級コンピュータというのは、CPU(中央演算装置)がペンティアムVよりも3世代古い(DX4)もので、現在、主流となっているウィンドゥズ95および98を使えない代物だ。南朝鮮当局が南北経済交流を拡大する考えならば、こうした措置はとらないだろう。
となると、南朝鮮当局の目的は絞られてくる。朝鮮民族にとって祖国の統一は、悲願である。しかし金大中「政権」には、南北対話でこれといった成果がない。そこで「南北経済共同体」構成案を発表して金泳三「政権」との違いを誇示し、票を集めようとしているのではないか。