朝鮮料理に秘められた効用(3)
食材(2) 朝鮮人参&ゴマ、ヤンニョム


韓啓司・恵クリニック院長
世界の3大健康食品
仙人食、不老長寿の代表

滋養強壮の民間薬

 朝鮮人参とゴマ、そして前回述べたニンニクは世界3大健康食品である。

 朝鮮人参が健康に有効だということは、すでに医学的にも証明されている。

 主成分はサポニンで、薬効は (1)ストレスの解消 (2)スタミナ増強 (3)血圧異常の改善 (4)動脈硬化の予防 (5)赤血球変形能の改善による脳血栓、ボケの予防効果 (6)ガンの抑制作用、などが証明されている。つまり病気を治したり、病気にならないようにしたり、自然治癒力や抵抗力、免疫力を活性化するという意味で朝鮮人参はとても重要で、非常に有効な健康食品である。

 朝鮮では滋養強壮の民間薬として、煎じたり、粉末、蜂蜜漬けなどにして多くの人に愛食されている。代表的な薬膳料理の一つとして、サムゲタン(参鶏湯)があるが、これは鶏の内臓を取った中に、もち米と朝鮮人参を入れて閉じ、何時間もゆっくり煮て、そのスープと鶏肉、もち米を食べる。最高の滋養強壮食だ。

貴重な料理の素材

 朝鮮料理では、ゴマもゴマ油もヤンニョム(薬念)に豊富に使われ、ゴマ油をレバ刺しのタレに使ったり、餅や海苔に塗って食べる。あえ物、煮物、焼き物、揚げ物など、たいていの調理法にゴマ油が使用される。

 世の中には牛や豚などの動物性油や、コーン油、菜種油などいろんな油がある。しかしゴマとゴマ油を料理の素材として、これほど使う民族料理は他にないのではと思う。

 ゴマは昔から仙人食と言われ、不老長寿の食品の代表と言われてきた。

 油は酸素によって酸化すると過酸化脂質という毒の脂肪になる。動脈硬化の原因になるのは中性脂肪やコレステロールだ。しかしゴマには、必須脂肪酸であるリノール酸が豊富で、これにはコレステロール低下作用があり、セサモールという酸化を防ぐ抗酸化物質やビタミンEが含まれ、動脈硬化の予防効果がある。

 そういう意味で、体に良い油としてイタリアのスパゲティに使われるオリーブ油があげられる。イタリアが朝鮮と良く似ている国と言われるのは、地形上のことだけでなく、ゴマ油とオリーブ油の関連からかもしれないと思ってしまう。

調味料と薬味

 ヤンニョム(薬念)とは、日本の調味料と薬味が合わさったようなもの。塩、味噌、唐辛子、醤油、酢、ゴマ油、すりゴマ、ねぎ、ニンニク、しょうが、砂糖、胡椒、粉唐辛子などが使われる。コチュジャンに代表されるように朝鮮独特のものだ。

 日本料理をはじめ世界の料理で調味料と薬味を一緒に使うという方法はないのではなかろうか。

 漢方医学では、食物をその機能により食性(温寒)と食味(5味)に分類する(詳しくは次回)。また薬食同源(医食同源)という考えから薬性、薬味ともいい、薬味とは食物の薬効の一つを示すものである。

 朝鮮料理の薬味は味を美味しくするのはもちろん、そのうえに体に良いという前提からなっている。朝鮮料理は根本的に薬膳料理だということの具現で、何と科学的なのだろうと思う(次回は五味五性)。