本の紹介/プレゼント


本の紹介
金史良作品集「光の中に」
芥川賞候補作をはじめ9篇収録

在日朝鮮人の歪みや悲劇の様相描く

 本書には、日本の戦争と侵略による過酷な時代に、在日朝鮮人作家の先駆けとなり、多くの傑作を残し、36歳の若さで世を去った金史良(キム・サリャン)の代表作9篇が収められている。

 このうち「光の中に」は、1940年度上半期の芥川賞候補作に選ばれたものだ。1939年の10月、「文芸首都」に発表された同作品は、日本帝国の「同化」政策という側面的な問題をめぐってひきおこされる日本における朝鮮人の、様々な歪みや悲劇の様相を描いている。

 作品は、朝鮮からの留学生と、日本人を父親に、朝鮮人を母親に持った少年・山田春雄との交流を通して民族の悲痛さを訴えている。

 ちなみに87年、共和国の文芸出版社から「金史良作品集」(313ページ)が刊行されている。

 ※   ※   ※

 金史良(1914〜50年)平壌生まれ、渡日して旧制佐賀高校、東京帝大に学び、同人誌に執筆。数々の小説とエッセイ、ルポなどを執筆。解放後に帰国した後、朝鮮戦争で朝鮮人民軍の従軍記者として加わり、戦死。


「日本の社会保障」/広井良典・著

 人間が人間である以上「悩みがない状態」などということは、おおよそありえないが、「社会保障」の場合にはそれに社会がついている。

 本書は「社会的な(あるいは、社会的な原因から発する)悩みがない状態」を実現するのが、社会保障の目的であるとしながら、「社会的な悩み」をできる限り生じないようにすること、そうしたシステムの現在、そして未来のありようを主題としている。

 本書では社会保障の全体を視野に入れ議論を進めていくうえでの留意点として (1)「原理に溯った考察」 (2)「社会保障と経済とのダイナミックな関係」 (3)「グローバルな視点」の3つを上げる。これらを踏まえ、議論を深め、選択肢を設定し、選び取っていく作業が必要だと強調している。

 また、本書は従来の考え方を変える一つの要素として、社会保障の大きな背景をなす「高齢化」という現象について指摘している。高齢化は21世紀には、先進国に限らず地球的規模で顕著になっていく。

 高齢化による人口問題は、国家像のあり方にも変容をもたらし、当然社会保障の問題も従来の想像を超えたものにならなくてはいけない。こうした時代の特徴を踏まえて、日本の社会保障制度に焦点をあて、その特徴、限界と課題を明らかにし、あわせて医療、年金、福祉といった個別分野について基本的な問題点を整理している。

 (ひろい・よしのり、東京都千代田区一ツ橋2・5・5岩波書店、660円+税)


本のプレゼント

「光の中に」金史良作品集

定価=1050円+税。講談社文芸文庫(問い合わせ=出版部TEL 03・5395・3513)

出版社の寄贈。抽選で、5人に本書をプレゼント。応募ハガキに、〒住所、氏名、年齢、職業、電話番号を記し、朝鮮新報社日本語版「文化」担当宛まで。2月2日必着。


当選者の発表

 抽選の結果、「新年本のプレゼント」の当選者は次のとおり(敬称略)。

 「同胞冠婚葬祭マニュアル」=福岡県北九州市の崔春子、兵庫県西宮市の高哲弘、大阪市の韓庚姫、愛知県豊明市の゙中鎬、埼玉県熊谷市の鄭順伊。

 「ウリマル図鑑」=兵庫県姫路市の李成姫、大阪市の高明純、東京都練馬区の姜昌賢、神奈川県川崎市の李永美、山形県酒田市の孔春華。

 「日本の朝鮮侵略思想」=福岡県北九州市の崔春子、京都市の金必善、三重県津市の゙勝、東京都足立区の金光成、東京都足立区の姜富三。

 「春香伝」=広島県福山市の朴鐘愛、大阪市の金静子、東京都葛飾区の金成天、東京都大田区の具福子、青森市の金正淑。

 「たのしくおいしい朝鮮料理」=大阪市の姜星姫、東京都練馬区の高英美、京都市の康奉順、山形県酒田市の梁君子、神奈川県横浜市の金春淑。

 「にんにく料理が食べたい!」=埼玉県川口市の金東亀、兵庫県神戸市の金英順、福岡市の文水晶、広島県福山市の朴明愛、千葉県習志野市の崔相浩。

 以下の本は無抽選でプレゼント。

 「朝鮮魅力の旅」=三重県津市の゙勝、岐阜県各務原市の韓政泰、東京都足立区の姜富三、埼玉県川越市の蔡錫江。

 「在日外国人の基本的人権と参政権」=岐阜市の金順姫、神奈川県川崎市の李賢仙。

 「朝米、朝・日国交樹立への道」=大阪市の申皓均、三重県津市の゙勝。