2000年-業界を展望
外食/進む市場の成熟化


優秀劣敗「持ち味」しだい

 薄日が差し始めた日本経済だが、情報通信関連などの成長分野がある一方、既存産業では今年も業界の構造変化が一段と進みそうだ。在日朝鮮人商工連合会商工部の「新春経済講演資料」をもとに、同胞商工人が携わる主な業種の現状と展望を見る。


規模はマイナス

 98年度の外食産業の市場規模は28兆8585億円。対前年比で0.9%減少し、4年振りのマイナス成長となった。

 一方、「レジャー白書」(余暇開発センター)を見ると、80兆1070億円の余暇市場に占める外食部門の割合は、25.2%。前年に比べて0.7%増えている。売上が減少しながらも、人々の外食との関わりは幅を広げている。

 最近の外食産業の動向を見ると、(1)業態のボーダレス化 (2)出店増加と店舗当たり売上・客単価の下落 (3)健康・安全志向 (4)情報化――といった特徴がある。

 「ボーダレス化」は、ファミリーレストランが持ち帰りメニューを強化したり、ファーストフードが宅配業務を拡大し、店の外での利用を重視していることなどに端的に表れている。

 ボーダレス化や、「惣菜」販売などの中食市場と外食とが競合している様は、消費者の選択肢が多様化し、マーケットが成熟化していることを伺わせる。


余暇拡大に期待

 現在、全就業者数の約4割を女性が占め、主婦の5割強が職を持っている。こうした女性の社会進出と社会の高齢化が進めば、手軽に食事をとれる外食への需要は高まると予想される。

 また、週40時間労働、完全週休2日制に本格的に移行することになれば、余暇時間が増え、外食の利用拡大が見込まれる。

 しかし外食市場では、売上上位100社が全体の約15%のシェアを占めている(98年度)。こうした事実が示すように、業界内での優勝劣敗の構図はいっそう鮮明になっている。


異業種も参入

 同胞が多い朝鮮料理(焼肉)業界にも、同様の傾向がはっきり見てとれる。

 「高級感」「低価格」「本場」を強くアピールしている店が、既存店から顧客を奪っている。

 また、「焼肉屋さかい」をはじめ、大手チェーンがローコストオペレーションで積極的な店舗展開を行っているだけでなく、「牛角」(=不動産管理業・レインズインターナショナル)、「カルビ大将」(=回転寿司アトム)、「焼肉じゃんじゃん亭」(=しゃぶしゃぶ木曽路)など、異業種からの参入も目立つ。

 今後はますます、自店がターゲットとする客層を明確化したうえで、はっきりしたコンセプトに基づいた店づくりを進め、「この店ならでは」という持ち味を前面に押し出す必要性が強まると言える。