ハッキョで開かれた「20歳祝う集い」/埼玉
手作り アットホーム/地域同胞社会が祝福
日本の「成人式」に対応する形で、同胞社会でも自然発生的に始まった「20歳を祝う集い」。かつては20歳を迎えた同胞青年たち自身が自主的に開いていたものだが、今や、各地の朝青都道府県本部が中心となって総聯組織が全面的にバックアップし、父母や地域同胞らが共に祝うイベントとして定着した。ホテルなどで豪華に行われるのが「定番」だが、今年、埼玉同胞の20歳を祝う集いは、対象者の大半の母校である埼玉朝鮮初中級学校(大宮市)で開かれた。
ホテルじゃないの?
前評判はあまり芳しくなかった。「ちょっとがっかり。去年まではホテルだったのに、なぜ私たちだけ学校?」という反応が大半。父母からは、「お金がないのなら自分たちが出すからホテルでやって」という意見さえ出たという。
なぜ学校なのか。
朝青埼玉県本部の金淳花宣伝部長は、「不況の時代、財政の問題がないと言ったら嘘になる。でも、豪華にやればそれでいいのか。当事者も、父母も、地域のみんなが気軽に参加でき、楽しい時間を一緒に過ごせるようにしようとみんなで考えた末、手作りでやってみようと決めた」と話す。
がんばったじゃん
「母校に来たのは高3以来。(会場が学校ということで)最初はちょっと驚いたけど、悪くないかも」(趙淑暎さん、朝鮮大学校教育学部2年)。
校舎をバックにグラウンドで記念撮影を行った後、拍手の中、父母らが待つ講堂に入場。場内は、布や生花でカラフルに装飾されていた。テーブルには、地域のオモニや若者たちが作った心尽くしのご馳走。「頑張ったじゃん。いつも見ていた講堂と全然違う」(朴哲秀さん、建築関係の専門学校生)。
儀礼的なものは総聯本部委員長のあいさつや各機関からの祝電紹介にとどめ、会食・談笑の合間にステージで新成人の紹介やゲームが行われた。参加者は自由に席を離れて記念写真を撮るなど楽しく過ごした。
休憩を挟み第2部は、地域同胞青年の新年を祝う集いを兼ねて行われた。父母同席の第1部とはうって変わって、バンド演奏あり豪華賞品の当たる抽選会ありの賑やかな構成だった。
「ホテルじゃなくてちょっと寂しかったけど、手作りで一生懸命にやってくれてうれしかった」(孫志玉さん、朝鮮大学校外国語学部2年)、「市が主催する成人式にも行ったけど、今日みたいな感じもアットホームでいい」(朴明徳さん、日本学校出身、専門学校生)
会えてよかった
「中3の途中で日本学校へ転校したので、みんなに会うのはそれ以来。女の子たちが綺麗になっていて驚いた」(金順暎さん、東京大学理学部2年)
感想に共通していたのは、「久し振りにみんなに会えてよかった」。「20歳を祝う集い」は、彼らが「横のつながり」を確認する場をもたらした。実際、「こんな機会でもなければ会うことはなかった子に会えた」という声は多かった。
「学校は懐かしかった。久し振りに会ったみんなは、それぞれ頑張っていてうれしかった。ホテルでも学校でも、どこでやっても結局やることは同じでしょ。今日はとても楽しかった」(文英智さん、スポーツトレーナー養成の専門学校生)
一方、父母をはじめ地域同胞社会がみんなで祝うコミュニティーの行事としての意味も大切だ。日本の成人式と大きく違うのがこの「縦のつながり」の部分だろう。その意味で、地域の拠点でもある朝鮮学校で開いた朝青埼玉は、まさに「直球勝負」に出たと言える。
祝福には、「期待」の意味も込められている。その意味を新成人たちが少しでもかみ締める場にするために、今後も各地で様々な工夫が凝らされるだろう。
(韓東賢記者)