本の紹介/
「在日朝鮮人と日本社会」
在日朝鮮人・人権セミナー・編
本書は、これまで在日朝鮮人の人権擁護活動に取り組んできた「在日朝鮮人・人権セミナー」(呼び掛け人代表=鈴木二郎・東京都立大学名誉教授)の活動をもとに、同セミナーがこれまで扱ってきた在日朝鮮人の人権問題に対する解説などをまとめたものだ。
人権セミナーの活動は、在日朝鮮人の人権を語る時、(1)日本と朝鮮半島の歴史、すなわち日本の朝鮮植民地支配がいまだ清算されていないという現状を把握し、(2)在日朝鮮人は日本が朝鮮半島を植民地にした結果、日本に定住しているという事実から、日本社会がそこに暮らす少数者の人権をどのように保障できるか、という日本人自身の課題である、という立場にたって行われてきた。
本書では、90年代に入って起きた「核疑惑」、「テポドン騒ぎ」などによるチマ・チョゴリ事件、国立大学の受験資格の問題、京都府警による朝鮮総聯京都府本部への不当捜査、「慰安婦」問題における日本社会と国連の動きなどを解説し、日本社会のありようを浮き彫りにしている。
それを通じて21世紀を前に、世界人権宣言、自由権規約、社会権規約、子どもの権利条約、人種差別撤廃条約などとの絡みで、在日朝鮮人の人権をあらゆる側面から検証していくことの必要性を説いている。
(東京都文京区湯島2・14・11 明石書店、2200円+税)