4月施行の地方分権一括法
「住民自治」に向けた一歩
条例づくり活発化へ/外国人施策に影響も
日本の国から地方自治体に行政権限が大幅に移される地方分権一括法(分権法)が、今年4月から施行される。2001年1月にスタートする政府の1府12省庁体制とともに、肥大・硬直化した行政システム改革の柱になるものだ。生活問題など身近な政策づくりが住民の側に引き寄せられることになり、在日朝鮮人が抱える問題を解決していくうえでも無視できない。
「下請け」廃止
分権法の目玉は、機関委任事務の廃止だ。機関委任事務とは、法令に基づいて自治体が国の「下請け」として処理して来た事務のことだ。該当する事務は、都道府県と市町村を合わせると、500数10項目に上る。
内容を見ると、社会福祉施設の設置、生活保護の決定、飲食店営業の許可など身近なものも多い。いずれも手続き上は都道府県に許可を求めるが、本来の権限は国にあるということだ。
都道府県ではこうした仕事が事務全体の約8割、市町村でも4割を占める。
このように国の行政が自治体行政の中に入り込み、中央省庁の縦割り支配がはびこったことで、住民に対するサービスが柔軟性を欠くことになった。
分権法では、機関委任事務の大半が自治事務として自治体に権限が移される。これまでは中央省庁が「指導」「助言」などの形で自治体を縛って来た。しかし、今後は法律に基づかなくては関与できなくなり、通達も廃止された。
今回の分権法にも、「不十分」とする声はある。自治体が政策を立てても、それを実行する権限の多くが国に残り、税財源の手当てがなされていないからだ。
とりわけ財源の問題は大きい。
自治体の財源には、地方税、地方債、地方交付税、補助金がある。自主財源と言える地方税では、分権法で新税が設けやすくなったが、補助金などの国の「縛り」は残った。
同じ権利
課題は残しながらも、日本の地方自治は変革に踏み出した。
自治体は委譲された権限に基づいて、住民の声を反映した条例をつくり、サービスを実施する――理想は、このような「住民自治」だ。
在日朝鮮人も、地域においては日本人と同じ住民としての義務を負い、権利もある。総聯が権利問題などで、制度的な処遇改善を自治体に求めるのも、そうした前提に基づいている。
これまでの運動を振り返ると、とくに民族教育の権利拡充などに関する在日朝鮮人の主張が、地域ではかなりの程度、受け入れられている。
国立大学に先んじて多くの公立大が朝鮮学校卒業生に門戸を開き、日本政府がなんら補助を行わないなかで、少なくない自治体が独自の判断に基づいて、朝鮮学校を財政面から支援しているのが端的な例だ。
外国人住民の声を市政に反映しようと、川崎市が条例に基づいて設置した「外国人市民代表者会議」も、朝鮮学校の処遇改善を市に求めた。
こうした問題に、日本政府はなかなか耳を貸そうとしないが、これからは地域の運動の成果がより大きな意味を持つかもしれない。
程度の差はあれ、各自治体では独自の政策づくりが活発になるだろう。地域によって、在日外国人問題への対応にばらつきが出ることも予想され、動向を注視する必要がある。
在日朝鮮人が抱える問題を解決するために、地域の日本市民との交流・相互理解を深め、積極的に自治体に働き掛けていくことが今後いっそう求められる。
(金賢記者)