第19回全国中学生人権作文コンテスト横浜市大会 最優秀賞
第19回全国中学生人権作文コンテスト(主催=法務省)の横浜市大会で昨年12月4日、最優秀賞に選ばれた神奈川朝鮮初中高級学校の徐順愛さん(中2)の作品「2つの制服」(要旨)を紹介する。
「2つの制服」
神奈川朝鮮・中級部2年生 徐順愛さん
広辞苑によると、「制服」とは「ある集団に属する人が着るように定められた服装」だそうです。つまり制服を見ればその人の所属、職業などが一目瞭然なのです。
私たち朝鮮学校に通う女子学生がチョゴリを着るのも、それと同じことです。「私たちは朝鮮学校へ通っている」という意味を表します。
そう考えると今、私たちがチョゴリのかわりに、登下校の間「第2制服」を着ていることがとても変に思えてきます。「第2制服」とは、日本学校の制服となんらかわりないブラウスにスカートといった服装です。なぜそれを着ているのかというと、このところチマチョゴリの女子学生ばかりが暴言をはかれ、暴行を受けることが多発しています。そこでやむを得ず「第2制服」を着て身を守っているのです。ですから、校舎の中だけチマチョゴリを着るのです。
この夏、「第2制服」を着るようになってからは、そういう事件も起こらなくなりました。
ところが、私と同じ駅から通う上級生はチマチョゴリで通っています。「先輩も『第2制服』を着ればいいのに。怖くないのかな」と思い、毎朝、彼女を見つめていました。しかし、私はあることに気づきました。彼女のまわりにはチマチョゴリに対する好奇心の目がありました。
あっちの学生、向こうのサラリーマン、うとうとしている中年女性……、ちらちらとまたは凝視するように彼女を見ています。私ははっとしました。同じ朝鮮学校へ通う2人がチョゴリと「第2制服」では、周囲の目がちがうということです。つまり、「第2制服」では、差別、偏見をなくしたのではなく、私が朝鮮人であることを「隠し」ているので、みんなは私が朝鮮人だと分からないのです。
私は「第2制服」を着ていれば安心という安易な考えを反省すべく、チマチョゴリで通う先輩の気持ちを考えてみました。危険をかえりみずチマチョゴリを着るというのは、「チマチョゴリを絶対に守る!」ということではないでしょうか。
では私たちにとってチマチョゴリとは何でしょうか。ただの「制服」とはわけがちがうのです。それは、日本に生まれ育っても自分は朝鮮人なんだと感じるためです。
私たちは母の代から「チマチョゴリ」を受けつぎ、「チマチョゴリ」を通して「民族」も受けついでいるのです。その私たちがチマチョゴリを着なくなれば、後輩たちに何を残すことができるのでしょうか。
私は今、この2つある制服が1つになって、また、チョゴリでの生活が今までどおりできるような社会にしていきたいと思っています。