知っていますか/朝鮮半島なんでも初めて
高句麗時代に7絃琴を改良/「無音の音」を聴く弦楽器
西洋の弦楽器、バイオリンやチェロは楽器から響き出される音が生命である。
ところが東洋の弦楽器は、音そのものよりも音と音の空間の無音の音を聴く。コムンゴ(玄琴)、そしてそれから発展したカヤグム(伽※(※=人偏に耶)琴)は朝鮮半島を代表する物だ。
「大地」を書いた米国の女流作家パール・バックは、初めてコムンゴの独奏を聞いた時、「隣の部屋でむせび泣く声のようだ」と語った。まさに、「無音の音」を聴いたのだ。
コムンゴは高句麗、長寿王(413〜91年)の時代に中国・晋から伝えられた7弦琴を改良、材質から弦の数まで(6弦)独自に作り出されたものである。
琴の胴体の上部には梧桐(あおぎり=アオギリ科の落葉高木)が用いられる。岩と岩、石と石との間に生えた強靭なものしか適さず、それも木理が真っ直ぐの地上から約2,4〜2,7メートルの部位しか使われない。
また、高麗の忠宣王(在位1308〜13年)時代の侍中だった李混が海辺の地方に流された時、海辺を漂う木片で琴を作ったところ、その音が絶妙をきわめたので以来、海水に数年間、漬けておく慣習が生まれたという。
琴の底は栗の木、絃を支える※(※=木偏に果)は各絃ごとに檜、シュロ、烏梅、山ユズなどそれぞれ違う木質で作られた。絃ごとの音色に繊細な配慮をしているのである。
近年、絃はほとんどがナイロン製だが、昔は蚕(かいこ)が吹き出す糸を12の工程を経て作られた。
文献によると、コムンゴの原型ともいえる中国の7絃琴が作られたのは、風俗の乱れを禁じるためだったという。だから琴(クム)は元来、禁(クム)だった。
琴の長さが3尺6寸(約1,1メートル)なのは、陰暦の1年360日を示し、7絃の最低音の大絃は王を、最高音の小絃は臣下、その間の5本は民を治める5官を表した。つまり7絃の和音は天下の和合を表すものだった。