2000 WOMAN-女の仕事
いつも胃が痛くなる程考え抜いて、決めたらトコトン行動します


京都・山科商工会副理事長−尹民子
3人の男の子の母、47歳

男の子を優しく育てれば、世の中変わるかも

 振り返れば瞬く間に過ぎ去った25年だった。

 3人の男の子を育てながら夢中で走り続けた歳月。

 「子供が幼い頃はどんなに忙しくても、本を読んで聞かせました。人を愛し、平和を愛する心を育てようとする気持ちからでした。まだまだ男性中心の社会。男の子が優しければ、世の中が変わるんじゃないかと思って…」

 仕事に追われ、育ち盛りの子供のケガにハラハラしながらも、息子たちには、人間としての基本をしっかり伝えようと努めてきた。その長男と次男も、今では、商工会の活動家としてはつらつと働いている。

 根っからの仕事人間。同胞商工人の声に耳を傾け、税務処理や融資斡旋などの手助けをする商工会の活動は、仕事の結果が明確で性に合っていた。

 公的融資の手続きをして、良い結果が得られた時や、経営改善の的確なアドバイスをした時、同胞の顔に浮かぶ笑顔や感謝の言葉で、苦労も吹き飛ぶと言う。

 今から5年前。息子2人が朝鮮大学校に進んだ機会をとらえ、夫の協力のもと、立命館大学の2部に入学し、経営学を学んだ。

 20年間、実践を通じて培ったものの総括と、新たな指針を求めての決意だった。

 当時中学生だった3男の徹成君を連れての受講の日々。所用でやむをえず休むこともあったが、クラスメートの学生らがしっかりとフォローしてくれた。

 仕事に勉強に全力投球するオモニの姿に誰よりも触発されたのが、徹成君だった。オモニの奮闘ぶりを、学校の作文で「オモニは大学生」と題して生き生きと綴っている。

 キャンパスで知り合った助教授に地元商工会の経営セミナーを依頼して好評を博したことも。「思い切って踏み出した1歩」から新しい輪が生まれ、色々な広がりを見せている。

 「最近、1番嬉しかったのは、昨年の朝鮮総聯分会代表者大会で山科商工会が『愛国愛族商工会』の栄誉に輝いたこと。府下の12商工会の中から選ばれるなんてとても光栄。金栄来会長らと喜びを分かちあいました」とほほえんだ。

 不況下での会館建設、セミナー開講などで地域を活性化したことが高く評価されたようだ。

 「能力があり、仕事のできる女性は、家庭に収まるのではなく、社会的に大いに活躍してほしい。ウリ副理事長はたいしたものです」と金会長も手放しで褒める。

 2000年を迎え、新しい時代の商工会を創り出すために構想を練っている。商工会が経営分析能力を高めること。そして、4月にはパソコン教室もスタートさせる予定だ。

 「いつも胃が痛くなるほど考えぬいて、決めたらトコトン行動に移すんです」

 何事にもしなやかに粘り強く対処し、きっちり結果を出す。周囲の信頼を背に、新たな風を起こそうとしている。(才)