2000年問題−同胞の反応は?
朝銀オンライン異常なし
「気抜かず最低限チェックを」
18年前から対応策準備−中長期展望実結ぶ
コンピューターの誤作動によるトラブルが懸念された「西暦2000年問題」。生活に重大な影響を及ぼすような事例は現時点では発生しておらず、年末までの準備が一応は実を結んだ形となった。2000年問題というかつてない事態を、在日同胞はどうとらえたのだろうか。朝銀のオンラインシステムへの取り組み、そして一般同胞の年末年始の表情を追った。
機関紙通じ広報活動
ライフラインへの影響とともに心配されたのが、金融機関への影響である。オンラインシステムの誤作動によって、取り引きができなかったり各種利息計算に誤りが生じるなど、顧客に実害が及ぶことが想定されたからだ。日本の金融機関では目立ったトラブルはなかったようだが、同胞金融機関である朝銀ではどうであったか。
日本全国にある朝銀のオンライン業務の委託を受けている朝信共同計算センター(東京都世田谷区)では、オンライン化が実施された18年前から「2000年問題を念頭に置いて、中長期的な展望のもとに対応作業を行ってきた」(2000年問題担当責
任者の権五暎部長)という。
社内に設けられた安全対策委員会の主導のもと、作業は95年9月からスタート。監督官庁である金融再生委員会に逐一、状況を報告するとともに、機関紙などを通じて同胞組合員や取引先への広報活動を続けた。
2万にも及ぶプログラムの見直し作業は、外注ゼロ、すべて社員の手で行われた。内部システムに関しては昨年3月に終了し、ほかの金融機関との接続テストも終え、万全の準備を整えた。
その結果、朝銀のオンライン業務は、年明けの1月4日の営業日以降も大きな問題もなく正常に稼働しているという。
妻の出産に「あわや」
「これだけ宣伝されれば、さすがに不安にはなりました。電気のこととかね」。東京・台東商工会の全永洪商工部長(34)は、2000年を控え、水や卓上コンロ用のガスボンベを買い求めたという。2000年問題では医療機器のトラブルも懸念されたが、入院していた病院では「『誤作動の心配はありません』というステッカーがすべての医療機器に貼られ、患者に不安を与えないよう配慮がなされていた」。予定日より6日早く産まれ、29日には亀戸の自宅に帰れたが、「子供のミルクぐらいは作れるように」と万一の準備はしておいた。無事に年が明けて「ほっとした」のが率直な感想だ。
浅草に住む韓恵淑さん(36)も、水の備蓄のほか、朝銀の通帳に記入も済ませた。万一に備えて風呂に水も張っておいた。夫は仕事中で不在。新年は子供たちとともに自宅で迎えた。感想は「特別なこともなく、無事に過ぎ去った感じ」という。
話を聞いてみると、備蓄をした同胞は少ないようだ。もちろん「安全宣言もされたし、絶対に大丈夫」という気持ちもあったろうが、「何か起こったら起こったで、どうにかなる」「朝鮮民族はちょっとやそっとじゃ動じない」という、妙な「確信」が感じられた。「チェサ(祭祀)に使うロウソクがあるでしょう。電気が止まったらあれで十分」という声も聞かれたほどである。
うるう年には要注意
備蓄とは本来、突発的災害に備えて普段からしておくべきもの。2000年問題があったから関心が行ったが、年明け後に早くも備蓄した水を飲み始める人もいるなど、一般同胞の危機意識は決して高いとは言えない。
2000年問題も「年が明けたから終わり」ではない。1月1日という最大の難関は越えたものの、4年に1度のうるう年である2月29日をはじめ、月末や月初め、年度が替わる3月末日と4月1日など、懸念される日はある。気を抜くにはまだ早いのであ
る。
権部長も「こうした『特定注意日』には神経をとがらせており、万全の準備を整えている」としたうえで、「中小企業を営む同胞は、これらの日付であらかじめテストをしておいた方が良い。マスコミの宣伝に踊らされて過剰な設備投資をする必要はないが、最低限のチェックは必要」とアドバイスする。 (柳成根記者)