あの日から5年
阪神・淡路大震災−同胞たちの近況 (2)


赤字続き、どこよりも厳しい/35%も減った単価
家屋解体・土木業−康昭満  54歳  (上)

 神戸の街は現在、「復旧・復興」が進み、外見上は落ち着いたかのように見えるでしょう。しかし実際は多くの問題を積み残しているんです。例えば、震災復興土地区画整理事業がその1つです。

 私の自宅兼事務所は現在、JR六甲道駅近くにあります。震災前は自宅と事務所は別々の建物だったんですが、今は兼用です。震災後、事務所跡地にプレハブを建てたんですが、区画整理に引っ掛かり、今の建物が建っている所に換地をもらいました。そして市当局から立ち退き料をもらい昨年9月、5階建てのビルが完成したんです。

 その間、事務所は5回、移転しました。その都度、市役所に住所変更届けを出し、お得意様、関係業者にその旨を伝えたりしなければなりませんでした。

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 区画整理事業が進められている神戸市内の主な地域は、長田、灘区などである。関係者によると、この事業は、今後4〜5年はかかるという。

 康昭満さんによると、立ち退き料に納得がいかず、未解決のケースも多いと言う。兵庫同胞生活相談センター(神戸市中央区)を通じて交渉を行った康さんの場合は、納得のいく補償額にもなり、スピーディーに問題が解決した。

 だが、区画整理事業には、問題点も多い。換地は、私道分として元の土地より数%カットされる。そのうえ家を建てる際には、家と家の間にすき間を開けなければならない。つまり、場合によっては、新しく建てる家は元の家より3〜4割小さくなる。その分、3階までしか建ててはならなかった地域では、4階までの建設が許可される。康さんの自宅兼用のビルも細長い。

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 景気が良くならないとどうしようもないね。バブル後の不況に加えて神戸は震災のダブルパンチでしょ。どこよりも厳しい。震災後は赤字続きです。

 解体作業の単価は震災前より35%ほど下がりました。だからと言って「できない」と言えば、仕事はよそへ回ってしまう。いくら安くても引き受けざるを得ない。儲けがトントンでも仕方がない。従業員を休ませるわけにはいかないから。

 しかも大阪などの大手ゼネコンが介入してくるんです。地元の業者に仕事が回るよう、ちゃんとした景気対策をとらんかったら、みんなつぶれてしまうかも。それが現状なんです。

 私の仕事、やりがいのある仕事です。ある時、高さ18メートルの機械の上から落ちたことがあるんですが、運よく途中にあった鉄に足が引っ掛かり、九死に一生を得たことがある。それでも止めようと思ったことは一度もありません。

 21歳の時、裸一貫で始めて、今日まで続けてきた仕事です。これからは、2人の息子が土木業にも力を入れて、神戸の復興・繁栄に尽力していくと思います。

(羅基哲記者)