取材ノート


2000年の始まりに思う

 この年末年始、福祉問題を取り扱う機会に多く恵まれた。介護保険制度が今春からスタートすることもあって、同胞も日本人も限らず、福祉への関心は相当なものがあるようだ。

 年末に都内で催された、同胞障害者家族のネットワーク「ムジゲ(虹)会」主催の講演会で、講師を務めた福祉教育アドバイザーの妹尾信孝さんに話を伺った。自らも四股と言語に障害を持つ妹尾さんは、以前にも本紙で紹介したことがあるが、話を聞くうち、あふれんばかりのバイタリティーにただただ感服せざるを得なかった。

 「障害は不幸ではない、不便なだけ」と言い切り、全国を講演活動で飛び回る。新聞や雑誌への投書を積極的に行い、障害者への幅広い理解を訴える。とにかく、じっとしているよりはまずは行動ということらしい。全身全霊を込めて思いのたけを語る姿は、ムジゲ会のオモニ(母親)や福祉に携わる同胞青年たちに深い感動を与えた。

 妹尾さんに何とも言えない親近感を覚えたのには訳がある。ハルモニ(祖母)がやはり障害者だからだ。

 自分が10歳くらいの頃だったか、ハルモニは目が見えなくなった。ところが、そんなことを微塵も感じさせず、ハルモニはとにかくよく動く。1人で電車を乗り継ぎ、料理も健常者以上にてきぱきとこなす。みじん切りなど、どうすればこんなに細く切れるのか不思議なくらい。そんな姿が妹尾さんにだぶって見えたのだ。

 障害を障害と思わず、かっ達に生きる人たちが、たくさんいることを知った。こんなすごい人たちに比べ、ささいなことで悩み、夢を諦めかけていた自分の器のいかにちっぽけなことか。

 2000年という大きな節目に、ふとこんなことを考え、今年こそはと気を引き締め直した。                                                                                           (柳成根記者)