2000年、同胞の期待に応え信頼勝ち取りたい
在日本朝鮮人人権協会−柳光守会長に聞く
身近な相談相手に/茶の間の論議でなく実践を
今年結成6年目となる、在日本朝鮮人人権協会の柳光守会長に、在日同胞の権利と生活面における具体的な活動内容と方向性、人権協会がめざす2000年からの役割などについて語ってもらった。
――人権協会が活動するうえで今年、キーワードにしていることは。
まず、同胞の期待に応えること。そして信頼をかちとることだ。
同胞が今組織に何を期待しているのか。青年商工会が昨年、全国規模で行ったアンケートの結果に現れていると思う。全体の4割が身近な相談者になってほしいと回答を出した。これは何を意味するのか。
2つある。1つは、朝鮮総聯が努力はしたが、身近な相談相手に充分なり得ていないこと、もう1つは同胞の切実で直接的な期待がストレートにぶつけられたということだ。
実際、昨今の政治・経済面でのきびしい状況と、世代交替や民族性の稀薄化がどんどん進む中で、同胞が日常生活でおぼえる不安や不安定さは想像以上のものがある。2000年を迎え、その度合いは増しているといってよいだろう。
これは民団、または組織に属さない人などすべての同胞に共通している。だからこそ、組織挙げて取り組むべき作業であり、この期待に応えていきたいと思っている。
具体的には例えば、上野に一昨年から開設した、同胞法律・生活センターには、この2年間に1800件近い相談が持ち込まれている(税金問題を省く)。この1つをとってみても、われわれが、同胞の身近な相談相手にならなければならない理由がある。
――そのために今後、どのような対策をとっていこうとしているのか。
総聯支部と協力して、同胞奉仕の体制を作りたいと思っている。
相談の中で1番多かったのは、国籍と相続の問題だった。世代交替、日本人との結婚など要因もあってそれらの問題を解決するにしても南北の法律はもちろん、日本の法律がらみの中で、1つ1つひもといて行かなければならない。こうした複雑な問題は、支部がすぐに対応できるものでもない。当然、専門家との連携プレーが必要になってくる。支部(本部)と、専門家集団としての人権協会とが協力しあってこそ、真に身近な同胞の相談相手になれると思う。
既設の関東(上野)、東海(名古屋)に加えて、今後は大阪府本部、福岡県本部とも協力して、近畿エリア、九州エリアをカバーする相談センターも開設したいと思っている。
――同胞全体の人権状況の改善、向上に対する対策についてはどう考えているか。
人権協会がやるべきことは、専門的な知識、技術を生かし、生活相談の相手をする、奉仕するだけではない。在日同胞の人権状況を絶えずつかみ、それを状況の変化と同胞のニーズにあわせ、改善、向上させる先駆的な役割を果たすことがより重要だと考えている。
在日同胞を取り巻く人権状況は依然、厳しいものがある。国籍をはじめ、民族教育、外国人登録の常時携帯、老齢、障害年金の適用問題など、また、様々な民族差別や人権侵害が容認される状況がいまも続いているなかで、解決するのは容易ではないが、人権協会として、積極的に対応していきたい。子どもの権利条約や人種差別撤廃条約の履行を求める運動とも連動させてゆきたい。
朝・日会談で在日朝鮮人の法的地位の問題が当然論議されるであろうが、必要とあれば積極的に関わって行きたい。
――2000年を迎え、同胞社会の今後の展望についてどう思うか。
同胞から、また日本人サイドからもいろんな同胞社会の展望が論じられている。 だが、今求められているのは、同胞社会の未来、展望する論議だけでなく、1人でも多くの同胞が自国籍をまもり、民族性を大事にしていくための行動であり、実践である。茶の間論議で終わらせては決してならないのである。
人権協会はとくに、(1)各地の法律センターでの独自の相談事業を強化し、総聯支部が同胞生活相談センターとして役割を果たせるよう専門家集団としてきっちりサポートし (2)今年の夏までに、焦眉の問題として提起されている国籍と民族(性)の問題を中心に、在日同胞社会のビジョンを結びつけて論議する場を持ちたいと思っている。 (金美嶺記者)