そこが知りたいQ&A/今年の元旦共同社説の内容は?
実利徹底、軽工業専門化、質向上−経済で飛躍めざす
党創建55周年、思想・軍・科学技術が3大柱
Q 朝鮮で元旦恒例の共同社説が発表されましたが。
A 共同社説とは、金日成主席逝去翌年の1995年から毎年元旦に労働新聞(朝鮮労働党中央委員会機関紙)、朝鮮人民軍(軍機関紙)、青年前衛(金日成社会主義青年同盟機関紙)の3紙が共同で発表しているもので、金日成主席の新年の辞に代わるものと位置づけられています。そのため、前年を振り返り、その年の課題を示すのが恒例です。今年もこの2つが主な内容を構成しています。
Q 昨年までをどう振り返っていますか。
A 「ここ数年間、朝鮮人民は類いまれなる試練の丘を超えてきた」と、最も厳しかったと言われる90年代を率直に振り返っています。そのうえで、「苦難の行軍」、「強行軍」が終わったことを示唆しています。「苦難の行軍」とは96年から2年間続いたもので、朝鮮ではこれによって「困難な峠を成果裏に克服した」(98年共同社説)と総括しています。これは社会主義建設を引き続き進められる保証ができたことを示すものです。「苦難の行軍」終了後の98年から昨年まで行われたのが「強行軍」です。その目的は、経済問題の決定的解決に基づく人民生活の向上。この2つの「行軍」を成果裏に終えたことで、朝鮮は「強盛大国建設の土台を構築した」(今年の共同社説)と言えます。強盛大国とは朝鮮が目標とする国家の姿で、政治、経済、軍事、文化などすべての面で世界的水準に達した国を言います。
Q 昨年と比較して目につくものはありますか。
A まず、総書記の指導を「先軍政治」と明確に位置づけたことでしょう。また、思想重視、軍事重視、科学技術重視を強盛大国建設の3大柱としたのも新しい表現です。
最も目を引くのは、朝鮮民族第一主義を掲げた点です。「帝国主義者の『世界化』策動を粉砕し、朝鮮式の政治体制、朝鮮式の経済構造、朝鮮式の生活様式を守る」としたことは、今後も朝鮮がチュチェ思想に基づく朝鮮式社会主義を建設していくことを改めて示したものと言えます。
Q では今年の課題は。
A 今年、朝鮮労働党は創建55周年を迎えます。「朝鮮民主主義人民共和国は朝鮮労働党の指導のもとにすべての活動を行う」と社会主義憲法(第11条)にもあるように、朝鮮労働党は朝鮮の最高指導機関です。それだけに、党創建55周年は大きな意味を持ちます。だから共同社説は、「党創建55周年を迎える今年を千里馬大高揚の炎のもと、誇らしい勝利の年に輝かせよう」とのタイトルで、党創建55周年を盛大に記念するために強盛大国建設で飛躍をもたらすことを大きな課題として掲げています。
Q 具体的にはどうなっているのですか。
A 経済建設に大きな力を注ぐことを強調しています。共同社説は「われわれの経済状況は依然として苦しい。今年のわれわれのたたかいは駆け足行軍の継続であり、経済強国建設で飛躍をもたらすためのたたかい」だと指摘しています。しかし、「経済の全部門で生産を正常化し、経済全般を軌道に乗せ、人民生活を安定向上させる」とした昨年とは段階が異なります。経済建設に多少なりとも展望が開けてきたことの表われでしょう。
実際、洪成南総理をはじめとする幹部らの昨年の発言を総合すると、穀物増産で展望が開かれたと言えます。また、昨年の共同社説では食糧問題の解決を一番にすえましたが、今年は電力、石炭、金属、鉄道、軽工業の後に農業がきていることからも、食糧問題がひと息ついたことを示しています。そのため、経済全般でも展望が開けてきたと言えるのではないでしょうか。
Q 経済建設を進めるための政策はどうなっているのですか。
A 柱となるのが、金正日総書記の革命的経済政策です。共同社説では今年初めて出てきた言葉です。正確な定義は明らかではありませんが、昨年の労働新聞の記事や今年の共同社説を総合すると、◇全部門における実利の徹底的保障 ◇軽工業の専門化 ◇経済的打算を優先させて節約を進め生産物と建設物の質向上――などです。
Q 経済部門で最も力を入れようとしているのは何でしょう。
A エネルギー問題です。「電力工業と石炭工業は社会主義建設の前哨線」と共同社説は指摘していますが、この2つはエネルギー問題に直結します。機械や工場を正常に稼働させ生産を正常化させるためにはエネルギー問題が解決されなければならないということです。
Q 統一問題についてはどう言及されていますか。
A 昨年と同様、南朝鮮社会の自主化をうたっています。また、「全民族の大団結は統一実現の根本」とした昨年より踏み込んで、「全民族の大団結は祖国統一の前提」としています。まず、民族の大団結が実現されなければならないということです。さらに、主席が示した祖国統一3大原則、全民族大団結10大綱領、高麗民主連邦共和国創立方案の「祖国統一3大憲章」を民族共同の統一綱領と位置づけました。一昨年まではこの3つが一貫して示されていましたが、昨年は言及されませんでした。今年、改めて強調されていることが注目されます。昨年同様、米国と日本に対する直接の言及はありません。