東京で共和国支援チャリティーコンサート
「人道支援チャリティーコンサート―北朝鮮の民衆のための食糧・医薬品支援の夕べ―」(「北朝鮮人道支援の会」主催)が27日、東京の日暮里サニーホールで催され、日本市民100余人が観覧した。「人道に国境はない。隣国に純人道的見地から援助の手を差し伸べよう」という趣旨から企画されたもので、収益金は共和国への義援金にあてられる。
コンサートは昨夏にも開催が予定されていたが、共和国の人工衛星打ち上げを機にした「ミサイル報道」の余波で、一部の心ない人たちの脅迫を受け、中止となった経緯がある。
「北朝鮮人道支援の会」は、人道主義に基づいて共和国に食糧や医薬品、義援金を提供し、日朝関係改善に努めることを目的に結成された団体。吉田康彦・埼玉大教授が代表を務める。コンサートに先立って行われた第1回総会では、9月20日から代表団が訪朝することが明らかにされた。
開演に先立ち、吉田教授が主催者を代表してあいさつ。三木睦子・元首相夫人と藤田幸久・民主党衆院議員も来賓としてあいさつした。また、明石康・元国連事務次長、土井たか子・社民党党首、村山富市元首相などからのメッセージも紹介された。
コンサートでは、人気バリトン歌手、久保和範氏が、ミュージカルやオペラのヒットナンバー20数曲を熱唱、観客を魅了した。
第1部では日本やイタリアなど各国の楽曲を披露。朝鮮の「トラジ」と「アリラン」も、1番を日本語、2番は「仮名を振って何度も練習した」(久保氏)朝鮮語で流暢に歌い上げた。
第2部では「ラ・マンチャの男」「サウンド・オブ・ミュージック」など、日本でもなじみの深いミュージカルやオペラの代表曲を歌い上げた。また、気さくでウイットに富んだトークも会場を沸かせた。
「『トラジ』も『アリラン』も良く知っている曲。朝鮮語で歌ったのには感激した」という東京都の会社代表、清水紘治さん(58)は「様々な報道が流れているが、共和国が困っているのは事実。人道支援と政治問題は別であり、日本も組織的で長期的な支援をしていくべきだ」と語った。
また、埼玉県のケアワーカー、下田幸恵さん(24)は「共和国の人たちも同じ人間なのに、日本の世論が支援のほうに向かないのが歯がゆい。自分に何ができるのか、これから考えていきたい」と話していた。
「困ってる人の力に」
オペラ歌手・久保和範氏の話
隣国である共和国とは国交がないため、援助もできないという話を聞き、常々、何かしたいと思っていたところ、コンサート出演の話をいただいた。人道支援という趣旨に賛同し、快諾した。
私の考えは「困っている人が隣にいるのに、どうして助けないのか」という単純なものだ。「ミサイルを持っている国になぜ」という報道もあるが、困った人の力になりたいだけであり、こういう場を持つことで、民間の力で援助ができるのは大変うれしいことだ。
西洋音楽をずっとやってきたので、アジア圏の音楽に触れる機会はなかなかなかった。今回、朝鮮の歌を歌ってみて、メロディーが心の中にすんなり入ってくる感じがしたし、日本の歌とも通じるものを感じた。
私にできるのは歌うこと。音楽に国境はない。これからは朝鮮の歌もどんどん歌いたいし、日朝の音楽交流も盛んにして、アジアという大きな枠の中で互いに伸びていければと思う。(談)