本社記者記者ルポ/平壌で北南労働者サッカー

統一のボールが分断の壁崩す


 【平壌発=本社記者文光善、崔憲治】「まるで統一が実現したような気分だ」――。平壌で12〜13日に開かれた、分断史上初の「統一念願 北南労働者サッカー大会」と連帯連合サッカー競技。朝鮮職業総同盟(職総)チームと熱戦を繰り広げた全国民主労働組合総連盟(民主労総)チームの選手は、10万人の大観衆の「祖国統一!」の掛け声のもと、北の労働者とボールを蹴り合った心境を表現した。12日に職総と民主労総、13日には南北混成の「連帯チーム」と「連合チーム」が戦ったが、2試合とも激しい点の取り合いになり、熱いプレーに観客から大きな拍手と声援が送られた。南北の労働者がサッカーを通じて親善を深めた今大会は、「対立と緊張を和解と協力に、分裂と分断を大団結と統一に変える第一歩」(李甲用・民主労総委員長)となった。

 

北南労働者サッカー

熱いプレーに10万人興奮/「勝敗でなく好ゲームを」

 初日の職総代表―民主労総代表戦の舞台は、羊角島サッカー競技場。選手入場の前から、スタンドの熱気は最高潮に達した。

 試合前、民主労総のチョン・ガプトゥク団長(現代自動車労組委員長)は「勝ち負けではなく、観客に力を与える良いプレーを見せることが統一への力となる。観客が楽しみ、会場が一つになるような芸術的なプレーを心掛けたい」と抱負を語った。「スポーツで統一に貢献したい」(職総のチェ・ウォンチョル団長)との思いから、選手たちは試合に臨んだ。

 試合は45分ハーフで、午後4時35分にキックオフ。開始直後から豪雨に見舞われたが、選手たちは正々堂々と全力でプレーした。激しいスライディングタックルを掛けながらも、倒れた相手を起こす光景も見られ、観客の感動を誘った。

 前半は職総が完全に主導権を握った。5、13、17、30分と職総が連続ゴールを決め、怒とうの攻撃に民主労総は守るのが精一杯。37分には決定的な5点目を入れられ、勝敗は決したかに見えた。

 だが、苦戦する南の同胞に、スタンドから「民主労総」コールが沸き上がる。声援に力づけられた民主労総の選手たちは、雨が止んだ後半に猛反撃を開始し、6分に初ゴールを決めると、7、9分と立て続けにゴール、ロスタイムには1点差に詰め寄った。観客の興奮も頂点に達したが、ここでタイムアップとなり、5−4で職総が勝った。

 ユニホームを交換し、互いの健闘を称え合う選手たち。両キャプテンも「50余年目にして南北が出会え、感無量だ」(職総のチョン・ミョンイン選手)、「雨もこの出会いを祝福しているようだ。来年は私たちが彼らを招き、そして今後は互いに行き来できるようになりたい」(民主労総のチョン・ウィシク選手)と感動の様子だった。

 観戦した平壌市のチョン・ウォンソクさんは「統一が近付いたかのようだ。統一は必ず実現するという確信を与えた試合だった」と語り、民主労総のキム・ヨンイルさん(釜山地域本部)も「本当に多くの市民が集まった。統一への熱望が、これだけ多くの人を集めた。今日のこの出会いがどれだけ統一に結び付くかが大切だ」と、統一への思いを膨らませていた。

 

連帯,連合統一サッカー

「労働者も祖国も1つ」/南北混成でチーム構成

 2日目は会場を金日成競技場に移し、南北混成で構成される「連帯チーム」―「連合チーム」戦が行われた。この日は「民族の自主と大団結のための99統一大祭典・第10回汎民族大会」(汎民族統一大祭典)の開幕式があり、試合はそれに続いて行われた。

 試合前にあいさつした李甲用委員長は、汎民族統一大祭典に参加せずに南に帰るのは残念だが、北の熱気を南の人々にいち早く伝えるために帰るのだと述べ、「遠からず分断の壁は崩れ去る。労働者も祖国も一つ。南北の兄弟は団結しよう」と呼びかけた。

 試合は30分ハーフで開始。選手たちは初めてチームを組んだとは思えないほど、息の合ったパス回しや連係プレーを随所で披露し、観客を喜ばせた。

 試合は一進一退の攻防となった。前半5分、「連合」がゴール前の混戦からボールを押し込み先制するが、「連帯」は14、23、25分と3連続ゴールで大逆転。29分に「連合」が1点を返し、3−2と「連帯」の1点リードで前半を折り返した。

 後半は互いに決定打を欠き、こう着状態が続いたが、18分に「連合」が追い付き、25分には逆転に成功した。だが、「連帯」もロスタイムに同点とし、4−4で引き分けた。

 試合後、民主労総のパク・イルギュ選手(現代自動車清州工場)は「まるで統一が実現したかのような気分。この場でサッカーをできたことに喜びを感じる。今度は本当に統一してからこの舞台でサッカーをしたい」と感想を述べた。また、ソン・ヨンミン選手(同)は「この気持ちは言葉では言い表せない。これからは制限された出会いではなく、自由往来が実現されなければと切に思う」と語った。

 

また会いましょう /民主労総、板門店経由で帰還

 「ありがとう、また会いましょう」。再会を約束し、民主労総の代表らは14日、板門店を通って南側に帰った。

 滞在期間はわずか5日間にすぎなかったが、代表らは行く先々で、7000万民族の統一への熱意がどれほどのものかを示した。

 世話になった人たちに別れのあいさつをし、記念写真に収まる代表ら。午後2時、多くの人たちに見送られて、平壌の宿舎を後にした。沿道には市民がどっと押し寄せ、一行を盛大に見送った。

 午後5時10分、バスは板門閣前に到着した。

 職総の李進守副委員長が、祖国分断から半世紀が過ぎたが、血を分けた民族の情を引き裂くことはできず、統一への道で再び出会うことができると語ると、李甲用委員長も「私たちはまた帰ってくる。必ず統一を実現するという北の人々の熱い思いを、南の人々にぜひ伝えたい。統一のサッカーボールが分断の壁を崩すことを信じる」と言葉を結んだ。

 5時20分、一行は「労働者が先頭に立って民族大団結を実現しよう」と書かれた横断幕を先頭に軍事境界線を越えた。北側の方を向いて南側の建物の前に並んだ彼らは、しばらく手を懸命に振って別れのあいさつに応えていた。

 代表らは訪北期間、行く先々で市民の手厚い歓迎を受けた。沿道は子供たちや青年学生、労働者ら多くの市民で埋め尽くされた。

 途中、平壌学生少年宮殿の前を通り掛かった際、代表らが車を降りて労働者や子供と抱き合う光景も見られた。

 

南北は血を分けた兄弟

李甲用・民主労総委員長

 54年目にして南北の労働者が出会えた。すべてが感激の瞬間だった。サッカーを通じた出会いではあったが、南北の労働者の団結をより強めるきっかけになった。

 今回、37人の代表全員が板門店を通って帰ることは大きな成果であり、南の労働者にとって大きな励みになる。今後は労働者だけでなく農民層にまで統一運動を拡大していきたい。

 こうして出会えば、私たちが血を分けた兄弟であることを実感できる。海外の同胞たちも統一を待っている。異国の地で苦心しながらも、民族心と自尊心を守ってきたのは素晴らしいことだ。

 統一のその日に、南北、海外の同胞が出会えるよう体に気をつけて頑張ってほしい。(談)

 

統一大討論会開催へ

民主労総と職総が合意

 民主労総と職総は14日、「統一念願 北南労働者サッカー大会」が成功裏に開催されたことと関連し、李奎宰・民主労総副委員長と李進守・職総副委員長の名で合意書を発表した。その内容は次の通り。

 民主労総と職総は北南労働者サッカー大会が成功裏に開催されたのを機に、祖国統一3大原則に基づく南北労働者の団結と自主的な交流、協力、祖国統一のため、次のように合意する。

 1、民主労総と職総の共催で、適切な時期に民族の自主と大団結、平和実現、自主交流方案など統一に関するテーマで、産業別、職業別の組織が参加する統一大討論会を開く。

 2、北南労働者サッカー大会に続いて「2000統一念願 南北労働者サッカー大会」を成功させるため、共同で努力する。

 3、上記の2事項を履行するため、両団体が協議を推進し、その他の南と北の労働者の共同関心事も共に論議する。(朝鮮通信)

 【注】職総と民主労総は5月2日の実務協議で、北南労働者サッカー大会に続いて、来年8月にソウルで南北労働者サッカー大会を開くことで合意している。