共和国への人道支援――日本のNGOの取り組み


 「政府と世論の関心を途絶えさせてはいけない。継続して活動していくことが大事だ」と、日本の各NGOが共和国への人道支援に取り組んで4年になる。「北朝鮮人道支援NGO連絡会」も発足し、今年から月に1度のペースで会合を開いている。日朝関係が政治的に停滞している中で、共和国の人に物だけでなく市民の思いを届けたいというのが、支援に取り組むNGO関係者の一致した思いだ。その取り組みを追う。(嶺)

 

日本政府や政党にも働きかけ/連絡会発足

 「北朝鮮人道支援NGO連絡会」は、各NGOがそれぞれの情報を交換し、自由に意見交換できる場をつくろうと発足させたものだ。

 参加しているのは、一昨年から始まった「北朝鮮子ども救援キャンペーン」の6団体、グローバル市民基金「地球の木」、日本国際ボランティアセンター(JVC)、仏教国際協力ネットワーク(アーユス)、ピースボート、日本青年団協議会、ラブ・アンド・ピースの他、カリタスジャパン、ピースウィンズジャパン、朝鮮の子どもにタマゴとバナナをおくる会などだ。

 日朝間には国交がなく、日本には共和国に対するきちんとした情報が入りにくい。そんな中で、連絡会を開き、横のつながりを持つことによって、人道支援への一つの流れをつくり、日本政府に対する積極的なアプローチをしていこうというものだ。

 NGOの活動が活発になればなるほど、多くの一般市民に支援を訴えていけるし、また民間の思いを共和国側に伝えることができると関係者は語る。

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 日本政府や外務省は「国交がない」、「世論が厳しい」などを理由に共和国への人道支援はできないという姿勢だ。

 96年7月に共和国への水害支援を目的に結成されたAFM(アフム)の石井薫事務局長は、「共和国との間には、過去の問題がある。政府ができなければNGOが取り組むべきだが、政府としてもこのままではなく、何ができるか政策的なものを示してほしい」という。

 これまで8回訪朝し、今年1月に続いて今月16日から23日まで9回目の訪朝をするカリタスジャパンの野坂秀男事務局長は「共和国には100人を越す世界食糧計画(WFP)の職員が常駐し、モニタリングを含め国際的な活動を行っている。米国からの要請で動くのではなく、こうした支援に政府が独自の判断で参加すべきだ。もしくは日本のNGOに協力する形だってとれる」と話す。

 4年間の活動を通して、日本のNGOが各国のNGOの状況と比べ、不足していると感じるのは政府の協力だ。

 7月に入って連絡会メンバーは、共和国への人道支援をしているNGO活動へのサポートを求めて政府関係者や政党に働きかける活動を始めた。

 「何回か訪ねるうちに、段々と耳を傾けるようになってきた。さらに実績の伴う意見を出すことによって、議員らに支援の在り方などを気付かせることも大事では」と、「地球の木」の横川芳江代表はいう。

 海外ではNGOが政府の政策に提言をすることもあるほどだ。

 「日朝が動かない状況で、NGOの役割として国を動かす力の一つにして行くべきだ」という意見に発展している。

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 支援に参加する人たちの動機は様々だ。阪神大震災の時、在日朝鮮人から受けた支援への恩返しだという人や、日本が苦しめた過去への償いをしたいという人もいる。

 こうした人たちの思いとともに4年間の交流で、共和国との間にもわずかながら信頼関係が育ちつつあることを実感しているという。

 アユースの黒川京子代表は昨年12月と今年4月に訪朝した。「2回の訪朝を通して、子どもたちの表情が和らいできているのが分かる。一方的な支援ではなく、相手側のニーズに応える具体的な支援が必要だ。それには現地の人と触れ合いながら次につなげていくべきでは」と黒川代表は語る。

 95年から人道支援を続けてきた、実働型NGOを目指すJVCの熊岡路矢代表は、「人道支援とは本来、物だけでなく、こちら側の市民のメッセージを直接伝えることでもある。こうした関係を築いてきづいていくことが、新ガイドラインやミサイル、核など緊張関係をつくらない信頼構築につながる」という。

 今後はホームページを作ったり、国際会議に関わっていくなど、活動の幅を広げていくとの案も出ている中で、熊岡代表の信頼構築に対する意見は、共和国への人道支援に携わるNGOの共通の認識となっている。