時事・解説/南で高まる「国家保安法」撤廃の世論
金大中「大統領」は先月5日、訪米先で「『国家保安法』違反で逮捕された人たちを8・15特赦で釈放する考え」を明らかにした。現「政権」は特赦のたびにこうした発言を行っているが、実際に行われた3回の特赦では、保安法違反による良心囚は「順法誓約書へのサインを拒否した」などの理由で対象から外されている。こうした中、8・15特赦を前に、南の市民・宗教・人権団体が相次いで連帯組織を結成し、保安法撤廃を訴えている。彼らを動かすのは「保安法撤廃を良心囚の全員釈放につなげたい」との思いだ。 (根)
各界の組織が続々発足/100万署名、全土巡礼、宗教界2000人宣言
前「政権」凌ぐ適用率
民主化実践家族運動協議会(民家協)が先月16日に集計した最新の統計によると、収監中の良心囚は278人で、内訳は△学生158人△労働者68人△長期囚4人△在野人士・その他35人――などとなっている。
このうち、保安法を適用されたのは177人(63.6%)に及ぶ。そのほとんどは「韓国大学総学生会連合」からの脱退を拒んだため「利敵団体加入罪」を適用された大学生だ。
保安法の適用率は前「政権」よりはるかに高い。前「政権」5年間に保安法違反で逮捕された良心囚は53人(民家協調べ)。現「政権」下では約1年5ヵ月で177人である。この間、3回も特赦が行われたにもかかわらず、前「政権」の3倍以上のペースで保安法が適用されている。「保安法の濫用はしない」と断言していた現「政権」の逆行ぶりを示すものと言える。
また、2月25日の特赦では、非転向長期囚17人を含む計1508人が釈放されたが、そのうち良心囚はわずか19人。残りの260余人は対象から外された。南のすべての法の順守を約束させる順法誓約書は「思想転向制度と本質的に変わりがない」として、サインを拒否したためだ。
カトリック教も動く
こうした中、保安法撤廃運動を組織的に展開するための連帯組織が相次いで結成されている。
天主教正義具現全国司祭団など32団体は12日、「国家保安法廃止天主教連帯」(天主教連帯)を結成した。キム・ヨンジン常任代表は、今後の活動として、(1)署名運動を行い、9月の定期国会で撤廃を請願する(2)8月15日に保安法撤廃巡礼団を組み、南の全域で巡回祈祷会を開く(3)8月中にソウルや光州などで「保安法撤廃宗教界指導者2000人宣言」を発表する――と明らかにした。
民主主義民族統一全国連合(全国連合)など30の在野・市民団体も、9日に「国家保安法撤廃汎国民行動連帯」(行動連帯)を結成し、100万人署名運動と全国連合国土巡礼団による宣伝活動を展開中だ。行動連帯も天主教連帯と同じく、国会で請願するとしている。
このほか、民家協や人権運動サランバンなど6つの人権団体による「国家保安法撤廃国際キャンペーンチーム」では、8月末からタブロイド版の広報紙を隔週で発行。「民衆の基本権保障と良心囚釈放のための共同対策委員会」も10日、保安法撤廃を促す公開書簡を青瓦台に送っている。
対話と交流の障害
保安法は、同族である北を敵視し、北を利する言動を「利敵行為」、北の主張に賛同する団体を「利敵団体」と見なしている。
訪北人士や民主人士を弾圧する保安法がある限り、幅広い対話と交流を実現させるのは難しい。
だからこそ、北は2月の政府・政党・団体連合会議で南北高位級政治会談の開催を提案した際、そのために南が履行すべき先行実践事項の一つとして、保安法撤廃を挙げたのである。
南当局はこの問題について「撤廃は検討していない」(金鍾泌)としている。
しかし、南のみならず、アムネスティ・インターナショナルや国連人権委員会をはじめとする、国際機構も撤廃を強く促しており、撤廃を求める世論は高まっている。