時事・解説/板門店朝米軍部将官級会談
実務接触開催を/必要ならば南軍参加も
北――西海境界線の設定提案
米――「北方限界線」は一方的と認める
朝鮮人民軍側の提案により板門店で21日、西海海上事件と関連した朝米軍部将官級会談が行われた。
人民軍側首席代表の李賛福中将は会談で、西海海上で重大な衝突事件の再発を防止するには、前回の会談でわれわれが示した5項目の方案を米軍側が受け入れるべきであると強調し、双方が当面、合意すべき問題は西海海上境界線を至急設定することだと指摘した。
そして、西海海上境界線を設定するうえでの基本原則は、徹底して停戦協定と国際法に基づき解決することであるとし、それに立脚して設定した西海海上境界線(別項参照)について米軍側に通告した。
李首席代表はまた、米軍側が主張する南北合意書には停戦協定を順守することが記載されているが、海上境界線問題を南北で討議しなければならないとの記述はどこにもなく、しかも南北対話が決裂し、南北軍事共同委員会が稼働していない現時点において、西海海上境界線問題を南北で討議すべきだというのは、停戦協定に対する責任を回避するものであると言明した。
さらに総合的観点から、西海海上境界線問題は停戦協定を履行し、朝鮮半島の平和と安全を守る責任ある当事者間で解決されなければならないと強調。そして6月に北京で行われた朝米高位級会談で米国側のカートマン代表、北京南北副相級会談で南側の統一部次官が、板門店将官級会談で討議すべきだと主張した事実を想起させた。
米軍側はこれについて回答できなかった。
また、李首席代表は人民軍側が示した西海海上境界線が法的にも、道理的にも最も合理的で正当な線であると指摘した。その理由として、(1)北側が設定した海上境界線は順守すべき法である停戦協定に基づいている(2)国際法の要求を十分にくんでいる(3)相手側の事情も十分考慮している――との3点をあげた。
そして、米軍側が主張する「北方限界線」は、停戦協定と国際法を無視した非合法的で妥当性のない線であり、相手側との協議なしに一方的に定めた線だと指摘すると、米軍側は「北方限界線」が双方の合意なしに一方的に引いた線であることを認めた。
しかし米軍側は、新たな海上境界線が確定するまでは、現在の「北方限界線」を順守しようとの主張を繰り返した。
李首席代表は、米軍側が問題の「北方限界線」の不当性を認め、新たな海上境界線を設定することに同意したので、その問題を討議するための実務接触の開催を提案した。さらに実務接触には西海海上境界線設定問題に直接責任ある朝鮮人民軍と米軍だけでなく、必要ならば南朝鮮軍関係者も参加できると指摘した。
また、実務接触は南北軍事共同委員会の枠内で開催すべきだとの米軍側の主張に対して、李首席代表は、米軍側が朝鮮半島の緊張緩和と武力衝突を防ぐための実務接触を拒否するならば、われわれはこれ以上米軍側とテーブルを一つにして空理空論に時を費やす考えはなく、将官級会談は永遠に幕を下ろすことになると警告した。(朝鮮通信)
共和国が示した西海海上境界線
停戦協定に基づき引かれた線である黄海道と京畿道の道境界線A−B点を延長したA点と、北側の康○半島(○は令に羽)先端の登山岬、米軍側管理下の島である掘業島との間の等距離点(北緯37度18.5分、東経125度31分)、北側の島であるオン島と米軍側管理下の島である西格列飛島、ソヒョプ島間の等距離点(北緯37度1.2分、東経124度55分)、わが国と中国の中間線との交差点(北緯36度50.75分、東経124度32.5分)を結ぶ線。
「忍耐力」示し衝突再発防止に務める共和国
【解説】西海海上事件と関連して板門店で朝米軍部将官級会談が行われたのは、事件が発生した6月15日、22日、7月2日に続く4度目。
事件は、漁業を行っていた共和国の漁船が南側が一方的に設定した「北方限界線」を越え、南側の領海を侵入したとし、南朝鮮海軍が漁船を擁護していた共和国艦船に「体当たり攻撃」を加えてきたことで発生した。そして6月15日、南朝鮮海軍の銃砲射撃によって、共和国の船1隻が沈没し、3隻が破損した。
事件が全面戦争に拡大しなかったのは朝鮮人民軍の「忍耐力と自制力」の結果である。その後、共和国は板門店将官級会談などを通じて、西海海上境界線の設定など事件の再発防止を訴えてきた。
これまでの会談で米軍側は、「北方限界線」の存在を主張し、事件の責任を共和国側に押しつけてきたが、今回の会談で「北方限界線」は双方の合意なしに一方的に設定されたことを認めた。そして米軍側が新しい海上境界線を設定することに同意したため、共和国側はその討議のための実務接触を開こうと提案。さらに実務接触には海上境界線設定問題に直接責任ある朝鮮人民軍と米軍だけでなく、必要ならば南朝鮮軍関係者も参加できることを明らかにした。
共和国側は、停戦協定と国際法に基づき海上境界線を設定する基本原則について米軍側に通報しているが、米軍側が実務接触に応じるか、また共和国側の海上境界線設定案を受け入れるかは定かではない。しかし米軍側が朝鮮半島の緊張緩和と武力衝突を防ぐための実務接触を拒否するならば、今後、将官級会談も開く意味はないと共和国は主張している。