時事・解説/停戦協定から46年――朝鮮問題の平和的解決のための課題


 7月27日は朝鮮停戦協定が調印(1953年)された日だ。それから46年が経ったこんにちも、朝米間は停戦状態=交戦状態にあり、関係改善もされず敵対関係にあり、緊張が高まり、いつ朝鮮半島で戦争が起こるかもしれない不安定な状態が続いている。朝鮮問題を平和的に解決するための課題は何か。いくつかの問題に分けて見た。(基)

 

緊張==⇒緩和

南の米軍撤収がカギ/10万兵力が北を威嚇

南朝鮮軍、自衛隊と一体化で

 米国や南朝鮮、日本では、共和国の「ミサイル」などを口実に「北の脅威」を煽っているが、東アジア・太平洋地域における真の脅威は米軍の存在である。

 現在、同地域には約10万人(南朝鮮に約3万7000人、日本には約4万6000人)の米軍が駐屯している。約10万人の米軍と、約63万の南朝鮮軍(予備兵力は450万人)、そして約24万人の日本自衛隊が一体化して、人口2千数百万人足らずの共和国に対し、軍事的威嚇と圧力をかけているのだ。

 とくに南に駐屯する米陸軍第8軍(2万7500人)は、核計画・作戦部隊を保有している。この事実は、朝鮮半島ではいつでも核戦争が起こりうる条件があることを示している。

 また横須賀を母港とする第7艦隊所属の巡洋艦モービル・ベイや駆逐艦カーリス・ウィルバーなどには、射程1300キロの巡航ミサイル、トマホークが搭載されており、共和国全土を射程圏内に入れている。交戦状態にある米国のミサイルが共和国を狙っているのに、自衛のために共和国がミサイルを開発して配備できない理由はない。

 さらに米軍は最近、第2の北侵戦争計画である「作戦計画5027」を「作戦計画5027―98」に改定した。この新計画は、共和国の軍事的動きに対する「兆候判断」を先制攻撃の重要な条件に上げ、そうした「兆候」があっただけで、即時先制攻撃を行うようになっている。

 有事に日本の港湾、空港、医療など民間施設を強制使用することなどを盛り込んだ新ガイドライン関連法案の成立は、新計画を後押しするものとなる。

 また昨年11月初から中旬にかけて、新計画に投入される沖縄・嘉手納基地のB1爆撃機、第7艦隊所属の空母キティーホークなどが参加して、米・南朝鮮合同軍事演習98フォール・イーグル、米・日合同統合訓練キーン・ソード99が朝鮮半島周辺海域で実施された。米、南朝鮮、日本による対共和国攻撃態勢は、まさに発動直前にある。このように朝鮮半島は、米軍が存在するがゆえに常に戦争の危険にさらされている。

 米軍は朝鮮解放直後の45年9月、仁川に上陸し、その後、東西冷戦を口実にいわゆる「ソ連の南下」、「北の南侵」をけん制するとの口実で南朝鮮駐屯が必要だとし、これまで半世紀以上も居座ってきた。しかし冷戦による東西対決の構造が崩れてすでに10年近くが経過しており、米軍が南にこれ以上残る名分も口実もなくなって久しい。

 停戦協定第4条60項には、停戦協定調印後3ヵ月以内にワンランク高い政治会議を招集し、朝鮮からすべての外国軍隊を撤収させる問題などを協議することになっている。そして53年10月からそのための予備会談が板門店で開かれたが、米国側が12月12日、一方的に会談打ち切りを通告してきたため、政治会談は実現しなかった。米軍撤退の根拠は停戦協定にも明記されているのだ。米軍が撤収してこそ朝鮮半島の緊張は緩和される。

 

不安定状態==⇒平和体制

朝米で平和協定締結を

停戦協定は形骸化/武力衝突も防止できず

 停戦状態が46年も続いているのはまさに異例である。そのうえ、停戦協定が履行されているわけではない。

 そのため朝鮮半島では一触即発という不安定状態が続き、様々な問題が生じている。6月15日に起こった西海海上での武力衝突事件もその一つだ。停戦協定には、西海での海上境界線は設定されていない。この事件は、南側が一方的に「北方限界線」を設けて、共和国艦船が南側の領海を侵入したとし、共和国艦船に「体当たり攻撃」を加えてきたことで発生した。

 そもそも停戦協定とは、朝鮮問題が平和的に解決されるまで、朝鮮半島での敵対行為と武力衝突の再発防止に必要な措置を規定した暫定的なものにすぎない。

 その停戦協定も現在、米国によってすでに条項の3分の2以上が破られ、第1条の軍事境界線と非武装地帯条項に含まれている9項目だけが順守されているにすぎない(96年3月8日付共和国備忘録)。つまり朝鮮半島の平和保障に何の役割も果たせず、形がい化、有名無実化しているのだ。

 停戦委員会も91年まで459回開かれたが、解決された問題は何1つない。そればかりか米国がその後、停戦協定の調印に反対し、停戦委に加わる法的資格も権限もない南朝鮮軍将官を「国連」側首席代表に任命して以来、共和国がその存在を認めていないため会議は1度も開かれていない。昨年、板門店で朝米将官級会談が開かれたが、朝鮮中央通信は「米軍将官が率いる国際連合軍」と行ったと伝え、停戦委の一方である国連軍とは区別している。停戦委本会談とは「別のチャンネル」と認識しているようだ。

 共和国が朝米協議にこだわるのは、米国が停戦協定調印の当事者であり、かつ南朝鮮に軍を駐屯させ政治・軍事・安保問題の実権を握っているからだ。

 朝鮮半島で強固な平和を保障するには、朝米間で平和協定が締結されなければならない。

 朝米が関係正常化のプロセスまでも明記した基本合意文を調印(94年10月)した条件のもとで、交戦関係を規定した停戦協定を平和協定へと転換させ、敵対関係を解消することは至極当然なことだろう。

 共和国はすでに、25年前の74年3月に停戦協定の平和協定への転換を米国に提案したのをはじめ、84年1月には朝米間での平和協定締結と南北間での不可侵宣言採択を内容とする3者会談を呼びかけた。さらに94年4月には、停戦協定の平和協定への転換を主内容とする新平和保障システムの樹立を提案した。それでも米国が応じないため、96年2月には平和協定が締結されるまでの暫定協定締結と、停戦委に代わる朝米共同軍事機構の発足を米国に呼びかけた。

 しかし米国は共和国との暫定協定締結を拒否して、4者会談を提案(96年4月)。だが4者会談では米・南が、米軍撤収、朝米平和協定締結という共和国のごく当然な提案を拒否しているため、マラソン交渉となっている。

 6月の西海武力衝突事件が全面戦争へと拡大しなかったのは、朝鮮人民軍の「忍耐力と自制力」の結果であり、米国が共和国と暫定協定でも締結していたならば、このような事件は起こっていなかっただろう。 朝米平和協定締結は、朝鮮半島の平和と安全を実質的に保障できる法的、制度的装置を構築しようとするものだ。

 

不信==⇒信頼

敵対関係解消、完全正常化

制裁解除など基本合意文履行を

 米軍が撤退して朝米間で平和協定が締結されれば、それは朝鮮半島の緊張を緩和し、アジア・太平洋地域の平和と安定を促進するとともに、敵対関係にある朝米関係を不信・対決から信頼に基づいた新たな関係へと発展させることになる。

 しかし米国は言葉では「自主権を尊重し内政に干渉しない」(朝米共同声明、93年6月11日発表)、「政治・経済関係を完全に正常化する」(朝米基本合意文)と主張しているが、その後大きな進展は見られず、共和国の不信感はかつてなく高まっている。

 それは、米国が共和国の体制を尊重することに基礎を置く関係正常化ではなく、共和国の政治体制を変化させる「関係正常化」を目的としているからだ。

 米国は共和国と共同声明を発表し、基本合意文にも調印はしたものの、米強硬保守勢力内ではソ連・東欧社会主義が崩壊したため、共和国も同じように「崩壊」するだろうという見解を抱いている。

 しかし、共和国は金日成主席逝去後も、金正日書記の総書記推戴(97年10月)、国家の最高職責である国防委員会委員長への推戴(98年9月)など、国家体制を整備・強化し、引き続き朝鮮式社会主義を発展させる確固たる展望を抱いている。

 関係正常化が進まない理由は、敵対関係が解消されていないからだ。基本合意文で約束している対北経済規制が全面緩和されていないのもその表れ。経済規制の発端は、朝鮮戦争が勃発した50年6月25日の国連安全保障理事会で採択された、共和国に対する援助供与を慎むという内容の決議82いわゆる経済封鎖だ。

 米国は、その3日後の6月28日に輸出管理法、同年12月17日には対敵性国交易法などを共和国に適用し、一切の経済交流を禁止してきた。が、基本合意文の公約を受けて95年1月、その一部を緩和。共和国は基本合意文に基づき、米国に対する一切の経済障壁を撤廃している。経済制裁が全面解除されるか否かは全面的に米国の姿勢如何にかかっているが、それをミサイル協議の進展など政治カードにしている以上、進展は見られない。

 一方、朝米間では現在、朝鮮戦争時に共和国側で死亡した米兵の遺骨共同発掘作業が行われている。約8200人とされている行方不明兵士の遺骨は、停戦協定第2条13項に基づき、54年に423柱が米軍側に返還された。

 現在行われている共同発掘作業は、米国側の強い要望による交渉を経て、朝米が合意したもの。96年に1回(1柱返還)、97年に3回(6柱返還)、98年に5回(22柱返還)、今年は2回実施(予定では6回行われる)。ベトナムと米国間では国交を樹立した現在も、行方不明米兵の合同発掘作業を行っている。こうして見ると朝米間の共同発掘作業は、交戦関係にあるものの、信頼醸成の場として貢献している面もあると言える。

 朝鮮戦争以来根付いた不信感を解消するための課題は、米国が「同時行動方式」に沿って基本合意文を誠実に履行し、これまで以上の信頼を醸成、敵対ではなく平和的な関係(大使級に昇格)を築くことにある。