広がったネットワーク/青商会・ウリ民族フォーラム99in兵庫
今回の参加者中、青商会の会員は700人。これまでで最大規模だ。
フォーラム初参加というある地方青商会の若手会員は、会場を見渡し、「皆エネルギッシュだ。社会的、経済的に実力が裏打ちされた人が集まっているだけに、何かができる、という可能性を感じさせてくれる」と話した。
ただ、朝青の非専従支部委員長も兼ねているというこの会員は、「青商会自体については、まだ飲み込めていない」とも言う。
「朝青では、自分がどんな役割を担っているのかはっきり分かっている。例えばサマースクールを主催するなど、やるべき仕事も決まっている。青商会はメンバーの実力から言って朝青より大きなことをすべきなのだろうが、それが何なのかが見えない」
こうした意見は、一部若手に限られたものではない。兵庫県青商会はフォーラム開催にあたり、一部地方の会員らを対象にアンケートを行った(別項参照)。
「青商会の課題は」との問いに対し、「やるべきことを明確にすべき」とする回答が全体の3割を占めた。
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もちろん、青商会はこれまでにも、朝鮮学校支援や地域同胞の交流行事、各種セミナーの開催など様々な活動を行ってきた。
問題になっているのは、在日朝鮮人運動で青商会が果たすべき固有の役割、具体的な進路。その方向性自体は示されている。
青商会中央の゙吉守会長はフォーラムで、「総聯を、真に同胞のための組織として築いていくこと。それ以外にない」と言い切った。第1部の全体フォーラム「ウリ時代21世紀・われわれの役割」でパネラーを務めた近畿地方の青商会会長らも、同じことを訴えた。兵庫県青商会の崔英俊会長は、(1)同胞参加による政策立案の仕組みづくり(2)同胞を対象としたマーケティングの強化(3)情報の共有化――と具体的提言も行った。
こうした問題意識は、多様な意見を取りまとめながら、中央や地方の青商会立ち上げに関わったリーダーたちの間に強い。しかし、そうした空気はまた、はっきりした形でメンバーに共有されるには至ってはいないようだ。
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青商会は1995年9月の中央組織結成以来、組織づくりに邁進し、4年間で31の地方組織、73の地域組織を結成、会員数は3000人を超えた。毎年1回ずつ開かれてきたフォーラムは、青商会の成長ぶりを内外に示してきた。
静岡県青商会の趙顕達会長は、「青商会は大きくなった。しかし、もっと大きくなれるし、なるべきだ。具体的な進路を明らかにするにも、組織の幅を広げる中できっかけを探るべきではないか」と話す。
総聯組織全体が青商会に期待するものは、運動の幅を広げ、新しい時代に合わせてそのあり方を転換していく推進力だ。青商会が大きくなるほどに、その幅広さ、感覚の新しさを在日朝鮮人運動に反映していくことへの要請は高まる。
リーダーたちが示した理念が青商会の隅々までしっかりとした根を張り、明確な輪郭を持って運動転換の推進力となっていくことに期待したい。(賢)
各地の会員、事前アンケート
同胞社会の将来、楽観
兵庫県青商会はフォーラム開催にあたり、東京、大阪、京都、愛知、福岡、北海道の各青商会の協力のもとにアンケートを行った。
無記名、単一回答方式で行われ、設問は青商会活動や民族教育、同胞社会の今後に対する意見を中心に、全部で25問だ。
有効回答者数は280人で、86%が青商会会員。民族教育を受けたことがある人が、88%を占めた。
「青商会会員になってよかったと思うことは」との問いには、64%が「人脈が増えた」と答えた。ほかには、「同胞社会に寄与できた」が13%、「生活の刺激になった」が11%、「自分自身レベルアップできた」が6%で、「商売のプラスになった」が2%だった。青商会活動が、自己実現や社会貢献意欲を充足させる場となっていると言える。
青商会の今後の課題としては、「やるべきことを明確にする」が30%で最も多く、「政治色をもっとなくすべき」「若い世代の意見を反映すべき」がそれぞれ17%で続いた。
同胞社会の未来については、8割近くが楽観視している。また総聯をはじめとする組織(民族団体)への見方は、「必要不可欠」が過半数を占めた。「組織に何を期待するか」との問いには40%が「身近な相談者」と答え、次が「ユダヤ、華僑のようなネットワーク」の24%だった。
全体的には、同胞社会は今後も、民族団体を介してつながる広範で実体のあるネットワークとして存続していくとイメージされているようだ。
21世紀・豊かな同胞社会のための99兵庫アピール(要旨)
ウリ時代21世紀
私たちは、21世紀が、在日同胞の民族的アイデンティティと自主権が堂々と保障される時代、在日朝鮮人としての存在がハンディではなく価値となる時代になると展望してい
る。
21世紀は民族性の尊重に基づいた真の国際化の世紀であり、朝鮮民族が20世紀の亡国と分断の歴史に終止符を打ち自主的で統一的な発展へと向かう、民族統一の時代、民族自主の時代である。21世紀の早い時期には、植民地支配の清算と祖国の統一が実現され、在日朝鮮人の法的地位の根本的変化、日本当局の敵視政策の是正と民族権利の保障、日本人の対朝鮮観の改善、統一祖国との自由な往来交流と国際社会への進出が、現実のものとなるだろう。
私たちは、青商会世代こそが、1世が築き上げて来た輝かしい伝統を継承し、21世紀の新しい同胞社会を創造することができる世代だと自負しながら、「ウリ時代21世紀」の可能性と希望に挑戦する。
豊かな同胞社会
「ウリ時代21世紀」へのビジョンは、豊かな同胞社会の創造である。
豊かな同胞社会とは、民族性をベースに幅広いネットワークが形成され、在日朝鮮人としての真の豊かさが保障される同胞生活コミュニティーだ。精神的には、民族教育と文化の振興、異文化間交流によって、在日同胞の民族性と国際性が発揚され、経済的には、同胞企業間の提携協力と地域同胞の相互扶助によって、在日同胞の経済的基盤が構築され、社会的には、民族自主権の確立にもとづいて、在日同胞の社会活動が日本のみならず統一祖国の北と南、世界に向けて開かれる社会が、私たちが描く同胞社会の未来像だ。
民族教育は、豊かな同胞社会の礎である。1世が築いたウリハッキョを守り、時代と同胞のニーズにマッチした魅力ある民族教育を創造していこう。
ネットワークは、豊かな同胞社会のための絆である。1世が築いた地域の同胞社会を私たちの力で活性化させるとともに、新しい同胞ネットワークを積極的に構築していこう。
1世から受け継いだ祖国愛、民族愛、同胞愛を胸に、「ウリ時代21世紀」のために、子供たちの輝かしい未来のために、より大胆に、より斬新に、そしてより貪欲に、豊かな同胞社会の創造に挑戦しよう。