ここが知りたいQ&A/朝高生の「大検」受検が可能になるが


「ダブルスクール」不要に/根本的解決には距離

  朝高生の国立大受験へのハードルが低くなるというが。

  文部省は8日、大学入学資格検定(大検)の受検資格から「中卒以上」を外し、満16歳以上なら誰でも受検できるようにすると決めた(来年度から)。

 朝高生は現在、受験の認められていない国立大などを目指す場合、朝高入学と同時に、都道府県の裁量で入学を認められている通信制・定時制高校にも入学し(ダブルスクール)、その学籍による特例を使って大検を受けることで、受験資格を得ている。朝鮮学校が「各種学校」であるため中卒資格がなく、大検の受検資格もないからだが、夜や日曜が犠牲になるダブルスクールの負担は大きい。

 しかし、来年度からは、大検受検のためのダブルスクールは不要になる。つまり、「ダブルスクール→大検合格→大学受験」から「大検合格→大学受験」へと、負担が一つ減る。

  今回の決定をどう見ればいいのか。

  対象者は「外国人学校卒業者、在学者」などとされ、趣旨説明では「国際化などの進展によりこれらの者に対する大学などへの入学資格の付与について内外の要望が高まっている」と明らかにされた。決定が、在日同胞らの運動と内外世論の高まりを念頭に置いたものであるのは明白だ。朝高生の大学受験資格を正式には一切認めてこなかった文部省のこれまでの頑迷な態度からすれば一歩前進とも言えるが、抜本的な解決にはほど遠い。

 在日同胞は朝高生の大学受験と関連して、朝高卒の資格による直接の受験を認めるよう求めてきた。すでに過半数の公・私立大は、朝高生を「(日本の高校生と)同等以上の学力がある」と独自に判断して受験を認め、世論もそれを支持している。今回の決定は、完全な門戸開放を求める社会の流れに反している。

 大検を課すことについて有馬文相は「(外国人学校生に対し)統一的な資格試験を要件としている国が多く、適当な措置」と語ったが、そうした国のほとんどは自国の学校の卒業者にも同じ義務を負わせている。外国で12年の教育課程を修了した外国人留学生や帰国生徒には大学受験資格を認めていることに比しても、矛盾は従来どおりだ。

  本質的な問題点と課題は。

  文部省は今回の措置の対象者として、外国人学校生などと共に、「不登校などの理由で義務教育を終えていない者」をあげている。つまり、外国人学校は依然として「学校」として扱われていない。こう見ると、「1条校」並みの助成と大学受験資格を柱に、朝鮮学校の全般的な処遇改善、地位向上を求めてきた在日同胞の要求からは相当の距離があることが分かる。9日付各紙も、「外国人学校の卒業資格、私学助成などを手当てする立法措置の是非について検討する時期」(日本経済新聞)「解決には、外国人学校の地位を明確に法律で定める必要がある」(朝日)など、抜本的な改善策を求めている。

 在日同胞としてのアイデンティティを育む朝鮮学校の民族教育は、各種の国際条約も認める普遍的な権利だ。また在日同胞の歴史的特殊性からみても、日本政府には民族教育を認め、尊重する義務と責任がある。文部省が朝鮮学校に対する差別政策を改め抜本的な処遇改善を図るよう、今後も力強い運動が必要だ。