99上半期の共和国(4)南北関係

対話再開に意欲示した北/副相級会談、南の肥料支援合意違反で決裂


 今年上半期、南北対話では2つの重要な出来事があった。南北高位級政治会談の開催提案と、1年2ヵ月ぶりとなる南北副相級会談の再開である。

 

外勢との「共助」破棄を

 南北高位級政治会談は、2月3日の共和国政府・政党・団体連合会議で北が提案したものだ。

 反北外勢との「共助」破棄と合同軍事演習の中止、「国家保安法」撤廃、統一愛国団体と人士の統一運動の自由保障――という先行実践事項を、南が上半期中に解決したうえで、下半期に開催しようというものだ。会談では、南北合意書の履行対策を基本議題にし、協力・交流問題、離散した家族や親戚の苦痛を癒す問題も協議できるとしている。

 南は当初、提案を「肯定的に評価」していたが、先行実践事項に関しては「無条件対話」を唱え、背を向ける態度を見せた。

 その後、北は労働新聞3月11日付論評で「南当局者が先行実践事項を速やかに履行すれば、上半期中にも対話を行う立場だ」とするなど、対話再開へ強い意欲を示した。

 しかし、南の反応は変わらず、履行期限の上半期が過ぎた今も、先行実践事項は履行されていない。とくに、6月1日に中国・龍井で行われた「文益煥牧師追悼の集い」に参加した南の代表らを保安法違反容疑で逮捕したり、6月26日に平壌で行われた「白凡・金九先生回顧の集い」への南人士の参加を不許可にするなど、統一運動団体・人士への弾圧を続けた。

 これに対し、祖国平和統一委員会書記局は6月29日、履行期限の上半期が終わる今も先行実践事項が実践されていないことと関連して公開質問状を発表し、(1)外勢との反北「共助」を続けるのか(2)あくまで連北を遮断するのか(3)統一運動団体・人士を弾圧する南当局者に統一への念願はあるのか(4)対決か対話か、戦争か平和か――と改めて問い質した。

 

西海事件で緊張激化

 一方、4月23日から6月3日まで北京で行われた双方非公式接触での合意に基づいて実現したのが、南北副相級会談だ。

 双方は、(1)南が7月までに肥料20万トンを北に提供し、そのうち10万トンは6月20日までに伝達する(2)離散家族問題をはじめ双方の関心事を議題とする副相級会談を6月21日から開く――という合意に従い、6月22日に第1回、26日に第2回、7月1日に第3回会談、3日には個別接触を行った。

 しかし、開催1週間前の6月15日、南の海軍艦船が朝鮮西海上の北側領海に侵犯して朝鮮人民軍海軍艦艇に体当たりし、銃砲射撃を加えて艦艇1隻を沈没、3隻を破損させる事件が発生。このため北は会談で、南北対決が厳しくなる中で協議のテーブルに着いても結実は望めないとして、まず南に謝罪を求めた。第3回会談では、肥料輸送船の出航日に第4回会談を開き、基本問題の討議に入るという転換的提案も示した。

 ここで南は、一方が他方の制約を受けるといった直接的な関連がない肥料支援問題と離散家族問題を結び付けて、「離散家族問題の進展がない限り、肥料支援はできない」と、合意済みの肥料提供に条件を付け、昨年4月の南北副部長級会談同様、事実上「相互主義」に転じた。そして、南が一方的に撤収したため、決裂してしまった。

 

労働者サッカー実現へ

 民間レベルでの交流や統一運動はどうだったか。

 ビッグニュースは「統一念願 北南(南北)労働者サッカー大会」の開催決定だ。4月27日に全国民主労働組合総連盟の代表2人が訪北し、5月2日の朝鮮職業総同盟代表との会談で合意。今年8月10日に平壌、来年8月にソウルで開かれることとなった。

 さらに、8月15日を前後して開かれる「民族の自主と大団結のための99統一大祭典・第10回汎民族大会」も、7月5日の共同準備委発足で準備作業が本格的に始動した。

 その一方で、昨年11月に始まった金剛山観光事業はこれまで順調に進み、8万余人が参加したが、6月20日の「閔泳美事件」によって、事業の進展を阻む南当局の意図が露呈した。

 この事件は、観光に参加していた閔泳美が、北の人に「亡命」を示唆したとして、北の当該機関の取り調べを受けたというもの。彼女が非を認めて謝罪したため、観光を望む南の同胞の心情や現代グループとの関係を考慮し、南に送り返された。その後、南当局が「誘導尋問」説や「謝罪文強制」説を持ち出し、また「観光客の安全保障が必要」などと言い出したため、中断状態にある。

 これについて北は、安全保障措置は観光が始まる前から講じており、それは八万余人という観光客が安全に観光を楽しみ、全員無事に帰っている事実からも明らかだとし、さらに現代グループと「金剛山観光事業調整委員会」のような協議機関を設ける構想もあったとしている(12日発朝鮮中央通信)。また、今後も純粋な観光目的で訪れる同胞については、あらゆる安全措置を講じ、同胞愛的心情で歓迎すると強調している。(根)=おわり

 

主な動き 

2月 3日 平壌で共和国政府・政党・団体連合会議。南北高位級政治会談の開催を南に提案
4月 23日 北京で南北非公式代表接触始まる
27日 民主労総の李奎宰副委員長兼統一委員長ら2人が訪北
5月 2日 職総と民主労総、「統一念願 北南(南北)労働者サッカー大会」を8月10日に平壌、来年8月にソウルで開くことで合意
6月 1日 中国・龍井で「文益煥牧師追悼の集い」。南からの参加者、南に帰った直後に逮捕
3日 北京で4回目の南北非公式代表接触。南北副部長級会談の再開で合意
15日 朝鮮西海上で南海軍艦船による朝鮮人民軍海軍艦艇への軍事挑発事件発生
20日 金剛山観光に参加した閔泳美が、北の人に亡命を唆した「閔泳美事件」発生
22日 北京で1年2ヵ月ぶりの南北副相級会談
26日 第2回南北副相級会談
平壌で「金九先生回顧の集い」。南の統一団体・人士は南当局の妨害で参加できず
7月 1日 第3回南北副相級会談。肥料輸送船の出航日に第4回会談を開き、離散家族問題の討議に入るという北の転換的提案を南が拒否
3日 南北副相級会談双方代表の個別接触。北側団長が会見し、直接関連のない離散家族問題を絡めて肥料提供を拒否し、一方的に会場から撤収した南を非難。会談は中断
5日 汎民族統一大祭典共同準備委員会が発足