99上半期の共和国(3)対中・対米関係
伝統的友好関係を強化、発展
金永南委員長が訪中/7年ぶりの首脳級接触
朝中関係でとくに目立った出来事は、最高人民会議常任委員会の金永南委員長を団長とする共和国代表団の中国公式友好訪問(6月3日〜7日)を通じて、「伝統的な友好関係」を強化・発展させたことだ。訪中団は、昨年9月の最高人民会議第10期第1回会議で金正日総書記が「国家の最高職責」である国防委員会委員長に推戴された後、総書記自らが派遣した国家代表団。共和国首脳級の訪中は1991年10月の金日成主席の訪中以来、首脳級の接触は92年4月の楊尚昆主席の訪朝以来のことである。
総書記自らが派遣
中国全国人民代表大会(全人代)常務委員会と国務院の招待による今回の代表団の特徴は、「朝中友好関係を現情勢の要求に即してさらに発展させるために、金正日総書記自らが共和国における新国家指導機関選挙以降初めて派遣した国家代表団」(金永南委員長)であることだ。また国防委副委員長の金鎰武l民武力相、党書記の崔泰福・最高人民会議議長、白南淳外相ら党と政府、軍の指導幹部からなる大型代表団で構成されたことだ。
滞在中、中国共産党中央委総書記の江沢民国家主席が代表団と接見し、全人代常務委の李鵬委員長との会談、朱鎔基総理との会見と同時に党と政府、軍のハイレベルでの顔合わせがそろって行われた。
また金永南・李鵬両委員長の会談では、(1)両国の友好協力関係のさらなる強化・発展(2)共通の関心事となる国際・地域問題――について突っ込んだ意見が交わされ、幅広い見解の一致を見た。
関係強化について李委員長は、中朝外交関係樹立50周年(10月6日)にあたる今年、伝統的な中朝友好協力関係の新たな進展を後押しする用意がある(朝鮮中央通信)と応えており、それを前後に訪朝する方針を固めている(日本経済新聞6月30日付)。
また中国は共和国に食糧15万トンとコークス炭40万トンを無償で援助することを朱鎔基総理が伝えたが、これも「伝統的な朝中友好関係の明白な表れ」(朝鮮中央通信)だ。
今回の訪中は、「血で結ばれた伝統的な朝中友好を内外に誇示する出来事」となり、また「朝鮮半島を含む東北アジア、世界情勢の全般的な発展に意義深い影響を与えた」(労働新聞6月20日付社説)。
主な動き
1月 | ・第3回地下施設協議(ジュネーブ、16〜17、23〜25日) |
・第4回4者会談(ジュネーブ、19〜22日) | |
2月 | ・第4回地下施設協議(27日〜3月16日、ニューヨーク) |
3月 | ・米政府が共和国への20万トンの食糧支援決定(22日) |
・第4回ミサイル協議(平壌、29〜30日) | |
・地下施設訪問に関する実務級専門家協議(平壌、31日〜4月3日) | |
4月 | ・第5回4者会談(ジュネーブ、24〜27日) |
・米兵遺骨共同発掘作業(20日〜5月13日、14日に6柱返還) | |
5月 | ・カートマン朝鮮半島和平担当大使が訪朝(14〜15日) |
・米政府が共和国への40万トンの食糧支援決定(17日) | |
・米実務代表団が訪朝(18日)。20〜22日に金倉里のトンネル訪問 | |
・ペリー米大統領特使が訪朝(25〜28日) | |
6月 | ・共和国代表団が訪中(3〜7日) |
・板門店軍部将官級会談(15日、22日) | |
・朝米高官会談(北京、23、24日) | |
7月 | ・板門店将官級会談(2日) |
北の政策に深い理解/ペリー大統領特使の訪朝
金倉里を非核施設と確認/ミサイル協議米兵遺骨返還も
朝米関係は、ペリー米大統領特使一行の訪朝(5月)を機に、新たな局面を迎えたと言える。また基本合意文(1994年10月調印)の履行問題などが話し合われた高官会談、金倉里地下施設協議・訪問、ミサイル協議、米兵遺骨共同発掘作業、板門店将官級会談、4者会談など幅広いチャンネルを通じて対話が行われた。
ア太地域の安保も論議
ペリー特使の滞在中、最高人民会議常任委員会の金永南委員長をはじめ党と政府、軍の要人が特使一行と会見し、姜錫柱外務省第1副部長との会談も行われた。会談では(1)朝米懸案問題(2)アジア太平洋地域での平和と安全保障で提起される問題などが深く論議された。
詳細は明らかにされていないが、米国側は共和国の政策と一心団結した朝鮮人民の自負心と強い意思に対し深い理解を抱くようになった。これは朝鮮戦争以来続く、米国の対北敵視政策の現状を改めて認識したものだろう。「対話」と「抑止」を機軸にした対北政策見直し報告が遅れているのもそのためだろう。
また6月23、24日には、北京で金桂寛外務省副相とカートマン朝鮮半島和平問題担当大使間による高官会談が行われ、基本合意文の履行や双方懸案問題、ペリー特使が要請した姜錫柱第1副相のワシントン訪問問題など、互いの関心事について協議した。
基本合意文については、共和国は誠実に履行してきたが、米国はまともに履行していない。2003年までに提供すると約束した軽水炉1基は2007年に完成する予定と言われ、毎年50万トンの重油納入も停滞気味だ。対北経済制裁は公約から4年が経った今も全面解除には至っていない。
西海境界線認定提案
懸案問題としては、米国が昨年8月に疑惑を提起して始まった金倉里地下施設問題は、第3回(1月)、第4回(2月〜3月)協議を経て、米実務代表団が金倉里施設を訪問(5月)。「広大な空洞のトンネルであることが判明」(訪問結果の最終報告)され、非核施設と確認された。金倉里訪問が実現したことで、次に求められるのは第4回協議の合意どおり、米国が共和国との政治、経済関係の改善措置を講じることだ。
米国の要請で始まったミサイル協議は、4回目の協議(3月)が平壌で行われた。双方は共和国が示したミサイル輸出中止に関する現金補償案を論議し、引き続き協議することにした。
今年6回行われる予定の米兵遺骨共同発掘作業は、1回目の作業が終了、5月14日に6柱を米軍側に返還。2回目の返還は6月17日に予定されていたが延期された。西海での南朝鮮海軍による武力衝突事件と関連すると思われる。
板門店軍部将官級会談は、西海衝突事件と関連して3回(6月15日、22日、7月2日)行われた。共和国は停戦協定に基づき事件発生水域が共和国領海になることを説明し、西海海上境界線を同協定と国際法の要求に即して再度認定するよう提案した。
4者会談は第4回(1月)、第5回(4月)会談が行われ、前者では「朝鮮半島の平和体制構築」、「緊張緩和」の2つの分科委の運営方針などを決定、後者で論議に入ったが、米国と南朝鮮が共和国の「駐南米軍撤退」、「朝米平和協定締結」という提案を拒否したため空転した。第6回会談は8月に開催予定。