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福岡と広島で「生活と権利シンポ」


 昨年11月から東京、京都で相次いで開催されてきた「在日同胞の生活と権利シンポジウム・民族性、結婚、就職、福祉―その現況と課題」が、九州と中四国地方でそれぞれ行われた。九州実行委員会(委員長=鄭泰文・総聯福岡県本部委員長)が主催したシンポは、6月26日に福岡市民会館で行われ、250人の同胞が参加。中四国実行委員会(委員長=金鎮湖・総聯広島県本部委員長)が主催したピーアーク広島(広島市、25日)でのシンポには、約200人が参加した。シンポでは、パネラーが専門的な見地から現状と対策について話し合う一方、参加者からは同胞人口の少なさなど地域の特性も踏まえた切実な声が上がった。同胞の生活問題の解決には地域ごと、ケースごとのきめ細かな対応が求められている実態が明らかになった。なお7月3日には、東海・北信地方の同胞らを対象にしたシンポジウムが名古屋市内で開かれる。

 

求められる細やかな対応

 福岡でのシンポでは、パネラーとして総聯中央の柳光守同胞生活局長、同胞結婚相談九州センターの鄭龍澤所長、九州朝鮮高級学校の金光正校長、厳在用司法書士、花園大学の愼英弘助教授が出演した。

 結婚問題に関しては、同胞結婚相談事業の開始以来、この5年間に1164組をゴールインさせているが、同胞人口が少ない地方では、今もって難しい状況が残ることが報告された。鄭所長は、九州朝高の同窓会や朝青の交流会など、出会いの場をより多く作るべきだと訴えた。

 就職問題について発言した金校長は、進路に対する生徒らの要望は多様性を増しているとして、それを満たして行くには組織的な対策が必要であり、同胞企業の求人情報が学校により多く集まらねばならないと指摘した。また、九州朝高では昨年4月に就職担当課を設置したことに言及。今後は県内の日本企業にも朝鮮学校の生徒らの存在をアピールし、就職先を開拓して行きたいと語った。

 また厳司法書士は、日本企業や国際的な場で活躍する同胞が多いが、そうした人たちの活躍を生徒らに広く知らせてこそ学ぶ意欲や目標も生まれてくるはずだと語った。

 柳局長は、秋に設立予定の就職情報センター(仮名)について説明し、今後は同胞企業の説明会を開いたり、求人求職情報紙を発刊するなどの活動を行っていくと話した。

 福祉問題について語った愼助教授は、同胞高齢者が行政の福祉サービスを十分に受けていない点を指摘。原因として、日本語を読めないためにサービスの情報が掲載された公報を読めないこと、行政がサービスの内容を積極的に知らせていないことなどを挙げた。

 広島でのシンポでは、柳局長と同胞結婚相談中央センターの魏正所長、大阪の老人保健施設「ハーモニー共和」の相談指導員、崔雅絹さんがパネラーを務めた。

 結婚問題に関しては、九州と同様に同胞数が少ない地方での難しさが吐露された一方で、過去4年間の組織を挙げての取り組みで32組をゴールインさせた愛媛での例などが紹介された。魏所長は、今年、結婚相談センターにコンピューターオンラインシステムとテレビ電話システムが整備されたことについて言及し、これを積極的に活用していく必要性を述べた。

 崔さんは、老人保健施設で垣間見える同胞高齢者の生活実態について語り、大多数が無年金状態にあることや、趣味も持てないことから生きがいを失っている人が多いと話した。

 参加者からは、「地元にも同じような老人保健施設ができれば、同胞青年が働く場ができ若者と高齢者との交流も進むはず」「朝鮮学校に障害児を受け入れる態勢を整えるべき」「結婚相談所や就職情報センターなどの専門機関と支部との関係の在り方についての議論が必要」などの声が上がった。