同胞の生活と権利 Q&A(下)
在日本朝鮮人人権協会から近く出版される「同胞の生活と権利Q&A」からの抜粋・要約。
年金額(1)
「カラ期間」では少ないの/「終身」「割増」の点考慮を
Q 国民年金の「カラ期間」をかなり持っているが、何年か保険料を払っても年金額はかなり少ないと聞いた。
A 国民年金では普通、受給資格を得るには25年の加入期間が必要だが、特定の理由により加入できなかった期間は、「カラ期間」として資格期間に通算される。在日同胞の場合は、国籍条項により年金制度から排除されていた期間がこれに当てはまる。
だが、これは受給資格とだけ関わるのであり、額には反映されない。「カラ期間」を多く持っていると受給資格を容易に満たせるのは事実だが、年金額は極めて低くなる。
たとえば、「カラ期間」を除いた保険料納付期間が5年ほどの場合は、年金額は年額で10万円前後になる。ちなみに、加入期間40年の満額だと、年額80万円以上だ。
しかし年金は死ぬまでもらえるし、1941年4月1日以前に生まれた人の場合かなり割増になる。これら2点に注意してライフプランを立てるべきだろう。
年金額(2)
増やす方法はないの/「追納」で可能な場合も
Q 年金額が低くなる場合に、保険料をさかのぼって払うことで額を増やせないだろうか。
A 在日朝鮮人の場合は、年金の額と関係ない「カラ期間」が受給資格期間のうちのかなりの部分を占めるケースが多くなる。したがって年金額は低くなりがちだ。
しかし残念ながら、「カラ期間」についての保険料を後になって払うことはできない。
ただし、「カラ期間」とは違い、保険料免除期間については、保険料をさかのぼって払うことができる。これを保険料の追納という。
保険料免除期間は、生活が苦しい場合に保険料の納付を免除してもらうものだ。ただしこの期間の年金額は、保険料納付済期間にくらべ、3分の1になってしまう。
このことから、後になって資力を回復した場合には、過去の免除期間の全部または一部について、追納することを認め、より大きい額の年金を受けられるよう配慮されている。
相続手続き
戸籍謄本を求められたが/新たに作る必要なし
Q 日本の司法書士から「朝鮮人の相続には韓国の戸籍謄本が必要だ」と言われたが本当か。
A 必ずしも必要ではない。
基本的に1945年の解放前に生まれた在日同胞は植民地時代の戸籍にその記載がある。こういう人の場合、相続手続きの際に法務局や銀行で戸籍謄本を要求された時には、資料の1つとして提出することも考えられる。
しかし解放後に日本で生まれた「朝鮮」表示の在日同胞は、共和国が諸外国と同様に戸籍制度をとっていないので当然、戸籍謄本もない。相続手続きのために「韓国」の戸籍を新たに作る必要もない。
「朝鮮」表示の在日同胞の場合は、(1)被相続人の外国人登録閉鎖証明書に明らかにできるすべての法定相続人を記載(2)相続人の外国人登録済証明書に父母との関係を記載(3)法定相続人が自分たちしかいない旨の印鑑証明書付きの申述書を作成(4)総聯発行の相続証明書を添付――以上の手続きで足りる。
海外渡航
共和国旅券どこでもらうの/総聯支部で受け付け
Q 在日同胞に対する朝鮮民主主義人民共和国旅券(パスポート)の発給手続きはどうなっているか。
A 共和国のパスポートは、1988年4月から総聯が代理発給することになっている。
パスポートおよび査証(ビザ)発給申請は総聯支部で受け付ける。発給に要する日数は10日前後だ。
パスポート・ビザの申請には、次の書類と手数料が必要だ。
(1)外国人登録証明書
(2)日本国が発行した再入国許可書
(3)顔写真(4×5p)
(4)留学する場合は学校の証明書および留学承認書
(5)旅券および査証申請書(総聯支部に備置)
(6)共和国に行く場合は祖国訪問申請書(同)
パスポートは共和国公民の身分を保護するもので、満17歳以上の在日同胞に発給される。その子も同伴手続きを要する。
諸般の事情により、パスポートは1回(シングル)のみ使用となっており、使用後は10日以内に総聯支部に返却することとされている。