時事・解説/ペリー特使の訪朝
党、政府、軍の要人が会見/「最高のもてなし」訪朝を評価
共和国――制度と自主権の認定要求
米国 ――北の政策に深い理解
クリントン米大統領の特使であるペリー大統領特別顧問(前国防長官)一行が5月25〜28日、訪朝した。米閣僚経験者レベルが訪朝するのは94年6月のカーター元大統領以来で、大統領特使の訪朝は初めて。金正日総書記にクリントン大統領からの親書が寄せられた。同大統領は94年10月20日、軽水炉の完成と代用エネルギーの保証問題を履行することを確言した保証書簡を総書記に送っている。また26日には「国家の代表」である最高人民会議常任委員会の金永南委員長が特使一行と会見し、党と政府、軍の要人らが会った。26〜28日の3日間、外務省の姜錫柱第1副相と特使との会談が行われた。「米国歴代の最高の代表団に対して、北は温かく迎え、最高のもてなしをしてくれた」(朝日新聞5月30日付)とペリー特使自身、訪朝を評価した。(基)
懸案、安保問題を論議
26日の会見後に催された宴会には、崔泰福党書記、姜第1副相と金桂寛副相、李相禹少将(人民武力省対外事業局長)が同席。
一方、姜第1副相とペリー特使との会談には、共和国側から金桂寛副相と米国担当局長など当該の活動家、米国側から国務省大使と国家安全保障会議の上級局長、国防総省の将官、国務省の関係者ら特使一行が参加した。会談では(1)朝米懸案問題(2)アジア太平洋地域での平和と安全保障で提起される問題などが深く論議された。
「朝米懸案問題」としては、まず政治・経済関係の正常化のためのプロセスを明記した基本合意文(94年10月調印)の履行問題があるが、これには軽水炉建設支援、重油提供、対北経済制裁の全面解除なども含まれる。が、米国は基本合意文調印から5年が経とうとしているにもかかわらず、何一つまともに履行していない。
金倉里の地下施設問題は、ペリー訪朝に先立ち米実務代表団が訪問したが、国務省は「核疑惑はシロ」であると判断している。
ミサイルの開発、生産、配備の問題は、その国の自主権に属する問題で、これまで4回の協議があった。
米兵遺骨共同発掘作業は米国側の要望で96年から10回実施されている。
次に「アジア太平洋地域での安保問題」だが、共和国は4者会談などで駐南朝鮮米軍の撤退、朝米平和協定締結を米国に求めている。また朝米以外の問題も対象になったと思われる。
関係改善の方向へ
また会談で米国側は、米政府の対朝鮮政策検討と関連した問題を朝鮮側に通報した。いわゆる包括的アプローチで、その骨格は対話と「抑止」を基軸に「核・ミサイル」問題での前向きな対応を求める一方、米国が経済支援や関係正常化を進めることを柱に据えていると伝えられる。
一方、共和国側は朝米関係問題と関連した朝鮮労働党と共和国政府の一貫した原則的立場を全面的に明らかにしながら、朝米関係を改善させるには、米国が共和国側との既存の合意に沿って(1)共和国の制度と自主権を認め(2)共和国と平等に接し(3)対朝鮮敵視政策を根本から撤回しなければならないと強調した。
米国が共和国との関係改善を望むならば、まず米国が共和国の社会主義制度を認めることが求められるが、それは相互尊重、内政不干渉などをうたった93年6月の朝米共同声明で確認されている。その後朝米は基本合意文に調印し、合意事項を一つずつ履行していく「同時行動方式」によって敵対関係を解消、関係を正常化していくことを約束した。しかし「テロ国家」指定や経済制裁など米国が対北敵視政策を継続しているため、対立は続き緊張は高まっている。
米国側は会談を通じて、共和国の政策と一心団結した朝鮮人民の自負心と強い意思に対し深い理解を抱くようになったと述べた。これは現状を改めて認識したものだろう。
ペリー特使は訪朝結果を基に数週間以内にも、対朝鮮政策見直しのための報告書をまとめクリントン大統領に提出する。29日のソウルでの記者会見で訪朝の目的は達成できたとし、「米朝の関係拡大は(調整官になってからの)6ヵ月間、検討してきた」と述べ、報告書に関係改善への道筋を盛り込むことを明らかにした。報告を機に朝鮮半島情勢は「新たな局面に入る」だろう。また特使は小渕恵三首相と金大中「大統領」のメッセージを口頭で伝えた。日・南朝鮮との関係においても何らかの影響がありえよう。