時事・解説/南の大学教授が時局宣言
南朝鮮当局と財閥企業による一方的な構造調整強行に抗議し、南の大学教授536人が「現時局を憂慮する全国教授時局宣言」を発表した。宣言文では、「改革」と称して整理解雇を主とした構造調整を推し進め、庶民のみに苦痛を強いている当局の姿勢を強く非難するとともに、構造調整の即時中止と労働者の雇用保障を訴えた。労働者のたたかいに限られていた反「政府」闘争が、それ以外の層まで広がったことで、一方的な構造調整の撤回を求める動きは今後、より拡大しそうだ。
雇用保障へ政策転換を/「不正腐敗の構造清算が先決」
宣言文に署名したのは、41大学の教授ら。金晋均・ソウル大教授、柳初夏・忠北大教授ら6人が14日、賛同者を代表してソウル市内で記者会見し、宣言文を発表した。
金教授らは、当局が進めている構造調整について、「政経癒着や官僚偏重など、南の社会全体にはびこる不正腐敗の構造を断つことが、構造調整の核心となるべきはずなのに、現『政権』はむしろ清算されるべき財閥の側に立って、財閥の利益と支配構造強化のみを追求する方向に向かっている」と非難した。
そして、構造調整に伴い断行される整理解雇が、労働者を苦しめ、庶民の生活を締め付けていると指摘。「庶民が『構造調整』の名目でこれ以上、一方的な犠牲を強いられてはならない」と強調した。
会見では、当局は構造調整を即時中止し、労働者の雇用を保障する方向に政策を転換すべきだと主張し、不正腐敗の清算をはじめ社会全般の改革を取り急ぎ行うよう求めた。また、(1)労働者の争議権の保障(2)本格的な財閥改革の実施(3)失業者労組設立の認可(4)公共部門で構造調整を行う際の十分な労使間事前協議――などの履行を求めた。
解説
「全国民的規模」へ広がり/就職難に歯止め掛ける意図も
これまで、構造調整強行に抗議するデモや集会を行ったり、非難声明を出すのは、当事者の労働者や、彼らのたたかいを支持する一部の在野団体などに限られてきた。
今回のように、500人以上もの大学教授が時局宣言という形で当局の雇用政策を真っ向から批判したのは、昨年12月に国際通貨基金(IMF)の支援体制下に入って以降、初めてのことだ。大学教授までもが当局に反旗を翻したことで、不当な構造調整の撤回を求める反「政府」闘争は労働者のゼネストやデモのレベルにとどまらず、ホワイトカラーや一般市民まで巻き込んだ「全国民的規模」の運動に広がるきっかけをつかんだと言える。
南朝鮮では、今年1〜3月期の国内総生産(GDP)がIMF体制突入前以来のプラス成長を記録するなど、一時期の深刻な通貨・金融危機から脱しつつある半面、企業の合併・買収やそれに伴う整理解雇が、労使間交渉を省いた形で、労働者側に電撃的に通達されるケースが激増するなどの不当行為も目立つ。
労働者の大量解雇は、大学生の就職問題にも大きく影響する。財閥系列をはじめ大手企業が軒並み、新規採用人数を抑えているからだ。大学教授が立ち上がったのは、労働者の行く末を憂えたというだけでなく、就職状況悪化の原因を当局の政策の誤りと捉え、雇用安定化で就職難に歯止めを掛けたい思惑もある。
ハンギョレ新聞が12日に実施した世論調査では、構造調整政策自体については54.6%が理解を示しながらも、その過程での整理解雇には77.5%が「方法に問題あり」と答えた。これは「反対しているのは構造調整そのものではなく、一方的な構造調整強行と不当な整理解雇」とする労組の主張にも合致する。こうした市民の反応と、今回の時局宣言が、労働運動の追い風になることは間違いない。(根)