外国人学校生に受験資格を/国立大内での運動活発化
外国人学校卒業生にいまだ門戸を閉ざす国立の大学と大学院。昨年、京大大学院と九州大大学院の一部研究科が朝鮮大学校卒業生を受け入れる措置を初めて取ったものの、文部省はこれを認めておらず、学部レベルでは門前払いが続いている。名古屋大学では4月26日、教職員、学生らによる「外国人学校卒業者の名古屋大学への受験資格を求める会」が発足したが、現状を憂慮する国立大学教職員、学生らによる運動は各地で活発化している。
2000人超す署名提出
この問題に最も早く取り組んだのは京都大学の学生たちだ。
94年12月、朝・日学生らによる「民族学校出身者の京大への受験資格を求める連絡協議会」(民受連)が結成された。民受連は結成以来、講演会や集会、署名運動、大学の各関係者との交渉、他の国立大生への呼びかけなど、活発な活動を行い、世論の高まりに寄与した。
95年には国連人権委員会に代表を派遣し、日本政府の差別の不当性について訴えた。また京大の教職員、学生らから2000人を超える署名を集め、二度にわたり要望書とともに総長に提出している。
また97年10月には教職員ら40余人による「外国人学校卒業生の国立大学入学資格を考える京都大学教職員の会」も結成され、総長に要望書を提出した。
国立大大学院として初の門戸開放は、こうした運動が実ったものと言える。
29日にシンポジウム
一橋大学では97年10月、同大に出願した朝高生を大学当局が門前払いにしたことに反発した学生らが「外国人学校出身者の国立大学入学資格を求める一橋大学学生の会」を結成した。
講演会や署名運動など幅広い活動を行ってきた同会では昨年5月、学内の教職員、学生を中心に集めた1000人を超える賛同人の署名を学長に提出している。今月29日にも専門家や関係者、当事者らを招き、「民族学校出身者の大学受験資格問題―その『障壁』の所在」と題したシンポジウムを開く予定だ。時間は2時から、会場は東京・国立市の一橋大東キャンパス東1号館1301教室。
また同大では昨年も、大学院の言語社会、社会学の両研究科に朝大出身者からの出願があったが、大学側は十分な議論もなしに門前払いにした。昨秋、この事実を知った教員らから異議を唱える声があがり始めた。
そして昨年末、社会学研究科は研究科として国立大学協会に対し、適切な解決策を取るよう求めて要請書を提出した。今年2月には研究科内に大学院受験資格に関する作業部会を設け、外国人学校卒業生の受験資格問題について検討している。
全国的な教員の会も
大阪大学では97年12月、学生らと教員らによる「民族学校出身者の受験資格を求める阪大連絡協議会」が結成されている。現在まで賛同する教員は40人を超えた。
同協議会も講演会を開くなど活発に活動しており、国連人権委員会にも代表を派遣した。昨年5〜10月には教授、助教授、講師ら1100人を対象に、この問題に関する意識調査を行っている。
東京大学では大学院総合文化研究科の教員らが運動を始めた。
昨秋、同研究科教授会では朝大卒業生の受験に際してこれを受理しない措置を取ったとの報告があった。これに疑問を感じた同研究科の瀬地山角助教授が研究科内の教員らに呼びかけ、教授、助教授ら40余人の賛同人を集めて同研究科長に、朝大生の出願があった場合に門前払いをすることのないよう求める要望書を提出した。瀬地山助教授らは今後、こうした動きを他の学部・研究科にも広げ、全学的な運動にしていきたいとしている。
一方、各大学で運動が広がるうえで重要な役割を果たしてきたのが、97年5月に結成された「外国人学校卒業者の国立大学入学資格を考える国立大学教員の会」(代表=田中宏・一橋大教授、水野直樹・京大助教授)だ。
同会は、97年10月に国立大学協会に申し入れ書を提出したのをはじめ、国立大に入学を希望する朝高生や大検合格を経て受験、入学した朝高卒業生らに対する実態調査や各国立大への働きかけなど、幅広い活動を行ってきた。