時事・解説/民主労総の反「政府」闘争
全国民主労働組合総連盟(民主労総)の反「政府」闘争が激しさを増している。19日のソウル地下鉄公社労組のゼネスト突入を皮切りに、傘下労組が次々と抗議集会やストを決行、その勢いは全域に広がっている。大財閥の相次ぐ追加リストラ策発表も闘争の拡大に拍車を掛けており、労働者の間では、労組側との協議なしに一方的に構造調整を進める当局と企業への不信感が募っている。(根)
募る解雇への不安
「『政府』は労組幹部の検挙という強硬策を企んでいるが、構造調整の撤回など建設的な代案を打ち出すのが先ではないのか。ストをやめさせる唯一の方法は、公権力の行使ではなく、協議の席に着くことだ」。現在も全線でストが続くソウルの地下鉄。石致淳・労組委員長は明洞聖堂での会見でこう声を荒げた。
民主労総は、ソウル地下鉄労組のゼネスト突入をもって「対『政府』4・5月総力闘争」に突入。傘下労組が続々とストに入った。その数は21日現在で計3万4000人以上に及ぶ。
この勢いに追い討ちを掛けたのが、大宇グループの追加リストラ策発表だ。
自動車、証券、造船の3大主力部門のうち、自動車部門に専念する方針を打ち出し、三星自動車の吸収合併も決まっている大宇は19日、造船部門の売却を決定。労組側は「大宇で売却価値がある部門は証券と造船だが、証券はグループの資金源だから売れない。消去法で造船に決まったのだろう。しかし、年間数千億ウォン(1ウォン=約0.1円)の黒字を計上する造船を売りに出すとは信じられない」(羅楊柱・大宇造船労組委員長)と反発し、慶尚南道・巨済島の大宇造船所でゼネストに突入した。
21日にはLGグループがLG半導体を現代グループに売却することで合意した。23日にも、現代が系列企業を現在の79から26に減らすと発表したことに、「整理解雇は避けられない」(LG半導体清州工場の職員)と、労働者の不安は募っている。
「苦痛分担」どこへ
統計によると、3月末現在の南の失業率は8.1%で、失業者数は170万4000人。4ヵ月連続の悪化から若干だが持ち直した。しかし、民主労総の調べでは、大卒未就職者や日雇労働者などを含めた実質的な失業者数は、400万人以上に達したという。
南では一昨年末の国際通貨基金(IMF)体制突入後、IMFから緊縮財政を強いられた。その主な方法が企業の構造調整だ。当局は労使政の「苦痛の分担」を訴え、3者の協議の場である労使政委員会を昨年1月に発足。労使政委での協議の末、昨年2月に整理解雇制を導入し、同12月には5大財閥と大規模な構造調整の決行で合意した。大宇や現代のリストラ策はこの合意に基づくものだ。
ここで問題なのは、労組を無視して構造調整が一方的に進んでいることだ。ソウル地下鉄や大宇の造船部門など、当局と企業の間で合意後、労組側に「電撃発表」されている。解雇という労働者の死活問題をはらむ構造調整が、労組の頭越しに決められているのだ。
労組側は、整理解雇そのものに反対しているわけではない。必要最低限の犠牲がやむを得ないのは納得ずくだし、だからこそ労使政委員会に参加し、整理解雇制ものんだ。ところがその後、労使政委での「整理解雇は労使政協議を踏まえて決定する」という取り決めは一向に守られず、労働者のみが整理解雇という苦痛を強いられているのだ。
これが「一方的で不当な決定」と労組が主張する理由だ。労組との争議を回避している当局が、ゼネストは「法的手続を踏んだ争議ではないので容認できない」(金大中)と言うのは筋違いなのである。
今回、反「政府」・反経営陣というカラーを明確に打ち出している民主労総は、メーデー当日に、労使政委脱退(2月24日)後初の大規模な「全国労働者大会」を開催。10万人規模の参加が見込まれる。