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時事・解説/南北高位級政治会談実現へ


 17日に開かれた金正日総書記の1998年4月18日付書簡「全民族が大団結して祖国の自主的平和統一を成し遂げよう」発表1周年記念平壌市報告会で、金容淳書記は、北側が示した先行実践事項を南側が履行すれば、今年下半期ではなく上半期にも南北高位級政治会談を開催できると強調した。2月3日の政府・政党・団体連合会議での開催提案から、まもなく3ヵ月。上半期開催という北側の主張は、当局間の対話再開に向けた意欲の表れと言える。(根)

 

北京会談最後に中断

 北側が南側に履行を求めている先行実践事項とは、反北外勢との「共助」の破棄と合同軍事演習の中止、「国家保安法」撤廃、統一愛国団体と人士の統一運動の自由保障だ。

 連合会議で北側は、1日も早く当局会談を含む南北間の幅広い対話を行うための対策を提起し、先行実践事項が上半期に解決されたうえで、下半期に南北高位級政治会談を開催することを提案。会談では「南北間の和解と不可侵及び協力、交流に関する合意書」(南北合意書、91年12月13日採択)の履行対策が基本議題になるべきで、共和国が久しい前から提起してきた、協力・交流問題、離散した家族や親戚の苦痛を癒す問題も協議できると指摘した。

 当局間対話は、昨年4月に北京で開かれた、肥料提供問題などを話し合う南北副部長級会談を最後に、中断されたままだ。同会談は金大中「政権」発足後初の会談だったが、南側が人道問題に政治問題を絡め、これを前提条件に掲げて「相互主義」を主張したため、8日目に決裂している。

 

北の一貫した主張

 連合会議の提案を踏まえ、北側は先行実践事項履行を一貫して主張してきた。

 2月8日、祖国平和統一委員会スポークスマンは談話で「先行実践事項が履行されれば、南北間には対話がいつ開かれても構わない」とし、下半期より早く会談を開催できることを示唆。3月11日には労働新聞が論評で「先行実践事項は南北対話の前提条件ではなく、その新たな出発のためのもの」で、「南当局者が先行実践事項を速やかに履行すれば、上半期中にも対話を行う立場だ」と指摘、開催時期を下半期から上半期に早めた。

 今回の平壌市報告会でも、北側は当局間対話の門を常に開いていると指摘された。これらの主張は、当局間対話をできる限り早く再開させたいという北側の意欲を示すものと言える。

 

外勢ではなく同族と団結

 それでは、これらの先行実践事項の履行が対話再開になぜ必要なのか。

 統一実現のためには何よりも、外勢に頼らない自主性が求められる。祖国の統一は民族自身の問題であり、外勢が関与する余地はないからだ。反北外勢との「共助」は同族との対立追求以外の何物でもない。また、米国との合同軍事演習は北侵を想定した同族敵視の戦争演習であり、同族への最大の挑戦となる。

 さらに、保安法は同族である北を「主敵」、北側を利する言動を「利敵行為」と規定しており、同法が存在する限り、幅広い対話と交流は難しい。

 南当局は、北側の提案を「肯定的に評価する」としながらも「無条件対話」を唱え、先行実践事項履行に背を向けている。金容淳書記は「南朝鮮で先行実践事項が履行されれば、今年の下半期ではなく、上半期の南北高位級政治会談開催も可能であり、われわれにはその準備ができている」と述べた。対話のボールは南側にあるのだ。

 

会談での基本議題「南北合意書」とは/和解、不可侵、協力・交流へ

 北側は、南北高位級政治会談の基本議題になるべき問題として、南北合意書の履行対策を挙げた。

 南北合意書は、91年12月の南北高位級会談第5回本会談で採択され、翌92年2月の第6回本会談で発効した。前文と「南北和解」「南北不可侵」「南北協力・交流」「修正および発効」の4章、全25条からなる。

 前文では、72年の7・4共同声明で明示された自主・平和統一・民族大団結の祖国統一3大原則を再確認し、双方の関係が国と国との関係ではなく、統一を志向する過程で暫定的に形成された特殊関係であると認めたうえで、(1)政治軍事的対決状態を解消して民族の和解を実現(2)武力侵略・衝突を防いで緊張緩和と平和を保障(3)多面的な協力と交流を実現して民族共同の利益と反映に寄与――することなどを誓い合った。

 南北合意書の発効後、合意書履行における具体的な打開策として、和解、不可侵、協力・交流の3分野の付属合意書が作成、採択された。軍事、協力・交流、和解の3分野の共同委員会も構成された。しかし、南側がチームスピリットの再開を決定したことで、付属合意書の履行も共同委員会の稼働もされることなく、高位級会談は92年9月の第8回本会談を最後に決裂した。