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リフレッシュした朝大/フレッシュな新入生


 朝鮮大学校は10日、「魅力ある大学」を目指して今年度からスタートさせた新たな学部・学科編成のもと、初めての新入生を迎えた。また今学年度から、スポーツ分野で優れた能力を持つ学生を対象とした推薦入学制度も導入され、男子10人、女子3人の計13人が同枠で入学した。同胞の間で関心の高い政治経済学部法律学科を中心に、各学部の新カリキュラムなどを紹介する。新設された学部・学科の新入生、初の推薦入学生の声も集めた。

 

新たな学部・学科編成スタート

弁護士、司法書士

 政治経済学部に法律学科を新設した目的は、同胞の生活と権利を法的に擁護する弁護士、司法書士などの法律専門家を養成することにある。

 一般教養科目は他の学科と同じだが、違うのは1年の時から法律専門科目と演習科目を履修する点だ。カリキュラム作成においては東大、早大、中央大などの法学部を参考にした。同時に司法試験、司法書士試験の試験科目を念頭に、該当する科目を4年間ですべて履修できるように配慮した。

 履修科目は専門基礎科目として法学概論、論理学、原書講読など。専門科目として憲法T(人権)、U(統治)、民法T(総則)、U(物権)、V(債権)、W(家族)、刑法T(総論)、U(各論)、商法T(総則、商行為法)、U(手形法)、V(会社法)、行政法、不動産登記法、商業登記法、民事訴訟法、刑事訴訟法、国際法、国際私法、法曹論、人権論、在日朝鮮人運動論など、日本の大学の法学部に比べても遜色ないばかりか、より資格取得にウェイトを置いた実践的なカリキュラムになっている。

 政治経済学部の他の学科では3年時に総聯支部などで実習を行うが、法律学科の学生は同胞弁護士、司法書士事務所で実習を行う。裁判所の傍聴なども随時行う予定だ。

 法律学科には初年度の今年、男子14、女子6の計20人が入学した。

 

情報処理、シスアド

 法律学科に限らず、4月から実施されている新カリキュラムの特徴は、同胞社会でニーズの大きい資格取得を念頭に置いていること。それは、新設された学部、学科でより顕著だ。

 理工学部に新設された情報処理科(男子20、女子10の計30人が入学)では、全員が情報処理技術者2種、システムアドミニストレータ初級、簿記2、3級などの資格取得を目指す。

 新設された体育学部(男子12、女子11の計23人が入学)でも、社会体育指導者(競技力向上指導者、地域スポーツ指導者、商業スポーツ施設における指導者の3種があり、それぞれ初、中、高級がある)や各種目の審判員の資格取得を積極的に後押しする。

 新名称となった教育学部保育科では、保育士資格を取得させる方向だ。

 他の学部、学科でも資格取得を奨励していく。

 

4週間の海外研修

 既存の学部・学科でも新たな科目が導入されるなど、選択の幅が広がった。

 政治経済学部の哲学科、政治経済学科では法学科目を増やし、法学T(法学概論)、法学U(民法、商法)を新たに履修するようにした。

 文学部朝鮮語学科では新たに朝・日比較言語学を学ぶようになった。

 経営学部では、新しい科目として経済統計学、高等簿記論、原価計算論U、財政学が登場している。

 外国語学部では第2外国語(選択)として新たに中国語が加わった。また3年前期に全員が4週間の海外研修に参加する。

 さらに情報化時代に対応し、経営学部、理学部、工学部の全学科、師範教育学部3年制師範科数学専攻のみ履修だった「情報処理」を政治経済学部、文学部、歴史地理学部、外国語学部の全学科、教育学部の4年制教育学科、3年制教育学科でも履修できるようにした。

 

新しくなった学部、学科

政治経済学部 政治経済学部に法律学科新設
理工学部 理学部と工学部を統合して理工学部とし、2年制の情報処理学科を新設
教育学部 師範教育学部を教育学部と改称し、男子3年制師範科を4年制教育学科に、女子2年制師範科を3年制教育学科にそれぞれ改称・拡充
体育学部 師範教育学部の2年制体育学科を独立させ4年制の体育学部を新設
研究院 研究院課程を従来の2年から前期2年(修士)後期3年(博士)に延長し、2年制音楽科、美術科卒業生を対象に2年制特設班新設

 

同胞に愛される弁護士に

政経学部法律学科/朴泰憲(東京朝高)

 大好きな同胞社会を守るためには、朝鮮学校の処遇改善をはじめ全般的な権利獲得、拡大が不可欠。そのためには法に精通した人材が必要だと思った。

 日本の大学に行こうと思っていたが、何か具体的な目標があったわけではない。だったら集団の中で自分を鍛えようと、最終的に朝大を選んだ。大学では、資格を取るためだけの勉強はしたくない。色々な人と会って、議論もし、同胞社会の現場も知り、その中で自分を鍛えたい。

 愛国的な「ウリエ(私たちの)弁護士」と言われる存在になるのが目標だ。口先ではなく、実際の行動と結果を通じて同胞社会に寄与したい。

 もし僕が朝大を出て弁護士になれたら、民族教育に対する同胞らの信頼も高まるだろう。「第1号」にこだわりはないが、1期生として後輩たちに道を開きたいとは思っている。

 

立派な朝鮮人育てたい

教育学部4年制教育学科/朴基柱(京都朝高)

 中級部の頃から教員になりたいと思っていたが、同胞社会で民族性の稀薄化が進む中で民族教育はより重要性を増している。朝鮮学校の教員になって、立派な朝鮮人を1人でも多く育てたい。

 子供の民族性を育むためには小さい頃からの教育が大切だと思うので、主に初級部教員を養成する教育学部を選んだ。また自分自身、初級部時代に多くのことを学んだという思いがある。

 4年間しっかり学び、充実した大学生活を送って、まず自分が立派な朝鮮人にならなくてはいけないと思う。また3年制師範科時代の先輩たちの伝統を受け継ぎながらも、4年制教育学科1期生として恥じないよう頑張りたい。

 

新たな歴史、伝統作る

体育学部/鄭童基(神奈川朝高)

 もともとは日本の体育大学を志望していた。2年間では学び切れないと思っていたからだ。しかし、朝大に4年制の体育学部が新設されると聞き、同胞の中で学ぶほうがいいと思い考えを変えた。

 専攻はバスケットボール。中、高級部とクラブで主将も務めた。高2の頃から、大学へ進んでバスケを中心にスポーツ理論をきちんと学びたいと考え始めた。将来は、同胞社会のバスケのレベルをもっと向上させるのに貢献したい。

 在学中は選手としても活躍し、朝大バスケ部が学生リーグに加盟できるように尽力したい。審判の資格を得るための勉強もする予定だ。こうした自分の目標を達成することが、学部新設の意味にも直接結びつくと考えている。新しい学部の1期生として新たな伝統、歴史を作っていきたい。

 

目標は4年間無敗

推薦入学(ボクシング)・経営学部/白永鉄(大阪朝高)

 昨年の全国選抜優勝(朝高生初の全国制覇)やアジア大会出場など、ボクシングでの実績が認められ、推薦入学生となった。

 日本の大学からの誘いもあったが、「立派な朝鮮人になってこい」という両親や監督らの勧めもあって朝大にした。自分としては、ボクシングさえできればどこでもよかった。経営学部にしたのは、将来、家業の産廃業を手伝いたいからだ。

 初めての推薦入学生なのでプレッシャーを感じているが、逆にそれをバネに変えて頑張りたい。

 朝大のボクシング部は現在、関東大学リーグの3部だが、自分の在学中に2部に上がれるように努力したい。個人としての目標は4年間無敗。関東大学リーグはもちろん、社会人大会にも出場して勝ち続けたい。また10月に共和国でシドニー五輪の選考会があるが、それに向けて頑張ろうと思う。

 

技術で組織の役に立てたら

理工学部情報処理学科/金聡美(東京朝高)

 朝大に行こうと思ったのは高3の時。とくに祖国を訪問してからは、卒業後も同胞の中で生活し、将来は同胞のために何かしたいと思うようになった。

 当初、他の学部も考えていたが、新たに情報処理学科ができると聞いて考え直した。卒業後は総聯組織で働きたいと希望しているが、コンピュータの技術は今後組織でもますます必要不可欠になるだろう。同じ組織の活動家になるならスキルを身に付けて力を発揮したいと思ったのだ。

 とくにコンピュータが好きというわけではないが、朝大での2年間、しっかり技術を身につけて、組織で役立つ人材になりたいと思っている。

 初めての寮生活で緊張しているが、早く馴れて、一つでも多くの資格を取れるように努力したい。

 

現実と密着した研究を

研究院社会科学研究科/李泰一(政治経済学部)

 政経学部哲学科を卒業し、この度研究院に進んだ。

 他の同級生たちは朝青支部をはじめ、総聯活動を支える全国各地の職場へと散っていった。僕は研究院に進むことになったが、その同級生たちと同じ気持ちで、学問に命を捧げるくらいの覚悟で頑張るつもりだ。

 専攻は憲法学だ。今年度から政治経済学部に法律学科も新設されたことだし、法学は今後ますます重要になるだろう。自分としては、学問のための学問ではなく、同胞生活に還元できる学問に励み、現実と密着し、在日朝鮮人運動に寄与できる研究者になりたいと思っている。

 研究院に籍を置きながら日本の大学院に通う予定なので、まずは受験に備えて猛勉強だ。