民族大団結で統一へ/90年代の歩み(12)
南北首脳特使交換提案(1993年5月25日)
再高位級会談開催が目的
1993年5月25日、北側の姜成山総理は南側の黄寅性「総理」に書簡を送り、累積する民族の重大事を包括的に解決し得る画期的な提案として、双方の最高当局者が任命する特使の交換を提議。特使は、統一問題解決のために双方のトップが会う問題と南北間の懸案問題を妥結するための、最高位級の重大な意思を伝達する任務を担当するだろうと指摘した。
これは、南北間の信頼醸成の過程を経て、民族の立場に立って平和と統一に向けて懸案問題を話し合おうというもので、特使交換の目的は書簡での指摘どおり、南北最高位級会談の開催だ。この提議に従い、8回にわたり次官級実務代表協議が行われたが、南側が反北対決姿勢を崩さず、実現目前で決裂した。
当時、朝鮮半島情勢は極度に緊張していた。南北合意書と非核化共同宣言が発効し、90年代統一に向けて着々と歩んでいた最中、93年1月に国際原子力機関(IAEA)理事会で北側の軍事基地「特別査察」が強行決議され、米・南は前年には中止した合同軍事演習チームスピリットを再開。北側は自衛的措置として準戦時体制突入と核拡散防止条約(NPT)脱退を宣言するに至った。
こうした中、金日成主席は4月6日に「祖国統一のための全民族大団結10大綱領」を発表し、続いて姜総理が最高位級会談実現のための特使交換を提案した。北側は最高位級会談を「最も重大な使命を担った最高の権威ある会談」と位置付けており、双方の最高位級が会えば、統一問題をはじめすべての懸案がクリアされることとなるのだ。
そのためには、実務協議で様々な問題点を煮詰め、特使交換を実現させる必要がある。北側は、特使交換が実現すれば朝鮮半島の非核化問題を最優先にできると述べるなど、「核問題」に固執する南側の主張に柔軟な対応を示し、実務協議を粘り強く求めた。
こうして10月5日、ようやく第1回実務協議開催に至ったが、協議は翌94年3月の第8回をもって決裂する。戦争演習の中止や「北の核問題」に対する米・日・南「国際共助体制」の放棄などを求めた北側に対し、南側が一旦は中止を決めたチームスピリット94の再開やパトリオットミサイルの米国からの搬入を決め、さらにはIAEAから「北の核問題」を付託された国連安全保障理事会による「議長声明」と絡めて、北側に対する「国際的制裁」まで唱えたからだ。実務協議北側代表団は同21日に声明を発表し、南側の行為は対北全面対決宣言だと非難した。