視点
「ユーゴスラビアに対するNATOの空爆は国連によって授権されたものではない。そういう授権の要請すらなかった。したがってこの空爆は主権国家に対する攻撃、国連の機能に対する攻撃だ」
カールソン元スウェーデン首相とラムファル元英連邦事務局長は連名でインターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙一日付に論文を寄稿しこう指摘した。
米国率いるNATOによる今回の空爆は国連決議も経ずに行われた。これは紛争を平和的に解決するよう義務づけている国連憲章に完全に違反する。ロシアや中国など各国から強い非難が出ているのも当然だ。ローマやベルリンなどでは反対デモが相次いでいる。共和国も外務省代弁人談話などで、「国連憲章と国際法への蹂躙」などと主張している。
爆撃は軍事施設から市民の生活基盤や経済施設にまで拡大されている。難民はすでに40万人を超した。
こうした悲劇を招いているのも、米国が話し合いを一切無視し力による解決方法を選択したからだ。そのことに、米国内からでさえベトナム戦争の誤りを繰り返すべきでない、軍事力による解決方法は事態を泥沼化させるだけ、との指摘が出ている。
出撃基地となっているイタリアは早期の交渉再開を訴え、独与党内からも反対論が出るなど、NATO内部でも亀裂が広がっている。
「力だけが正義で法は銃身から生まれる」との考えでは何も解決されない。(聖)