障害者施設で体験学習/群馬初中で初の取り組み
「体験学習に参加する生徒たちの姿勢が、日本の学生と違うと感心しました…」
4月に入ったある日、伊勢崎市にある群馬県立身体障害者リハビリテーションセンター職員で、自らも四肢と言語に障害を持つ福祉教育アドバイザー、妹尾信孝さん(48)から、群馬朝鮮初中級学校(前橋市)に手紙が送られてきた。
同校では3月10日、初めての試みとして、同センターでの体験学習を行った。卒業式を数日後に控えた中級部3年生全員がセンターを訪問。職員らの説明を聞きながら、四肢が不自由な人が口に絵筆をくわえ絵を描く様子やリハビリの様子などを見学し、車椅子を押したり実際に乗ったり、指のリハビリとして行われている広告紙を使ってのカゴ作りに挑戦した。
この体験学習は、妹尾さんが昨年10月、同校で障害者問題について講演を行ったのがきっかけ。生徒たちからの要望と、群馬県青商会からも、子供の頃から障害者への理解を深めるべきだという働きかけがあった。学校としても、広く外に出て様々な人と接することを通じて、生徒たちが豊かな人間性を育むのにも役立つと実施を決めた。
講演も体験学習も生徒はもちろん、父母らにも「学ぶことが多い」と大好評で、同校では今後もこうした取り組みを続けていく予定。また今回の体験学習のお礼として、リハビリセンターで舞踊部の公演を行うことも考えているという。
妹尾さんは体験学習の4日後に行われた同校の卒業式に招待され、家族と共に参加するなど、同校の教職員、生徒、父母らと交流を続けている。
妹尾さんの手紙の内容と、体験学習の際の生徒たちの感想を紹介する。
福祉教育アドバイザー 妹尾信孝さんの手紙
先日、伊勢崎市身体障害者リハビリテーションセンターで中学3年の生徒の方々が体験学習されるということで、私たちも同席いたしましたが、体験学習に参加する生徒たちの姿勢が、日本の学生と違うと感心しました。
リハビリセンターでは、とくに夏休みなどを利用した学生のボランティアや施設実習などを多く受け入れていますが、人の話を聞かず、私語が多いうえ、職員が注意してもいうことを聞かない人たちが増えてきたと嘆く声をよく耳にします。受け入れる側の施設職員にしてみれば、外から来る方たちに色々なことを学んで欲しいと思って忙しい時間を割いているのですから、足を運ぶ側もそれなりのきちんとした姿勢でいて欲しいものだとつくづく思います。
しかし本当に、朝鮮学校の皆様は私語もなく一生懸命話を聞いて下さるし、車椅子の体験学習や広告用紙を活用したカゴ作りなどにも一生懸命取り組んでいました。中学卒業のいい思い出になったかと思います。
これからも朝鮮学校の生徒さんたちとの交流を続けたいと思います。校長先生には、色々とご迷惑をおかけいたしますが、今後ともよろしくお願い申し上げます。
生徒たちの感想から
ハンデ乗り越える姿に感動/車琴伊
こうした施設を見学したのは生まれて初めてなので少し緊張した。私たちの行動や表情が、知らず知らずのうちに施設の人たちに失礼なものになっていないか、など気を使ってしまったからだ。……でも、不自由な手でも工夫しながらカゴを作ったり、手が不自由なため筆を口にくわえて絵を描く人たちなど、ハンデを乗り越える姿を見て、とても感動した。
見て見ぬふりせず助けたい/尹相一
生まれて初めて車椅子に乗ってみたが、動かすのがとても難しかった。
私たちにとっては何でもない簡単なことが障害を持つ人にとっては難しいことになる、ということを知った。
僕は今まで障害者の人を見かけても見て見ぬふりをしていたけど、これからは助けようと思う。
障害あっても「同じ人間」/゙喜珍
本当のことを言うと、それまでは障害者のことをいやだなあと思う気持ちがあった。でも、実際に色々体験し、話を聞きながら、だんだんそうした気持ちがなくなっていった。
それは、生活での不便や不安を抱えながら生きている障害者の人たちの立場になって考えて見たらすぐに分かることだった。手に障害を持ちながらも自分の力で、自分にできる方法で絵を描く人の姿はかっこよかった。
そして自分の教訓は、心身に障害を持つ人を決して馬鹿にしたりしてはいけないし、何かあったら見て見ぬふりをせずに助けてあげなくてはいけないということ。それは、同じ人間だからだ。