sinboj_hedline.gif (1986 バイト)

本の紹介/ひとすじの道 金裕


 雑誌の編集部長を長い間務め、晩年はコリアブックセンター所長だった金裕氏の1周忌に際して出版された遺族、親友らによる追悼集である。「同志や友人に会いに行くことがなによりも大好きだったアボジの遺志のすべてを知りたい」という遺族の思いが込められている。

 祖国と民族のために生涯を捧げた故人は同胞、日本人を含めて多くの人々と同志的関係を結んだ。飾らない人柄、面倒見の良さから、彼の周りには常に多くの人々が集まった。本書にはそうした彼の人柄がそのまま滲み出ている。

 前半は妻、3人の娘に送った手紙、末娘との交換日記など故人の遺稿、故人の生涯がまとめられている。後半は祖国に帰国した弟、平壌に在住する人々も含めた友人らの追悼文、娘が父に送った手紙が掲載されている。

 故人が最期の日々に娘に宛てて書いた手紙は感動的だ。娘たちの就職、結婚などを見られないまま逝く父の悔しさ。だが父は「アボジは香美(長女)たちとすごした幸せな日々を胸に抱いていく」(長女への手紙)として、「日本で生きていても朝鮮人として堂々と生きて下さい」(次女への手紙)と願う。

 父の遺言を胸に娘たちは力を合わせて母を助け「金裕の娘」として恥じぬ生き方をすることを誓っている。 定価=1200円+税、発行=白峰社、TEL 03−3983−2312